戦争の幕開け
1
この世界は昔、人間とモンスターが共存していた。人間とモンスターは手を取り合って生きていた。
そんな時代は長く続かず、ある日戦争が起きた。
書物によると、どうやら土地の理由で戦争が起きたと言う説が大きい。
そこで、魔法使いの人間とモンスターが手を組み、土地を二倍にする魔法で世界を二倍にし、そこに国境線を作り、結界で通れないように厳重にして、その戦争は幕をとじた。
「………ねぇスケル?聞いてる?」
「……はぁ、もう食べられないぜ…」
その後、鈍い音が部屋に響きわたる。
「ふぬげっ!?」
目の前にはスケルの親友である、ミミック系モンスター、タカラーがいた。とてつもない頭突きをした後の目だ。
「スケルがひまっていうから昔話を読んであげたのに………」
「だってそんな話面白くねえんだよ……ストレス発散に剣の練習でもしてこようかね……」
「……………おい、話聞いてんのか?タカラー?」
「ん?あ、ごめんごめん。あともうひとつネットでポチったものがあったから…」
「ふーん、とりあえず持ってきてくれ。」
スケルたちはレーカ学校の夏休み満喫中の予定だが、普通に学校がなくて暇すぎるから毎日暇を潰す日々になっている。スケルは戦闘が得意なモンスターが入る戦闘部、タカラーはミミック限定のお宝部の部員だが、両方とも強く、部活の成績で大学にいけるくらいだから、夏休みも他の部員と汗を流すことはほとんどない。
「テッテレー!予測玉ー!」
「なんだそりゃ?予測?おいしいの?」
「説明しよう!今知りたいことを教えてくれるナイスやマシンなのだ!なんか聞きたいことある?」
「えっ?それゴーグル先生とおなじじゃね?」
めちゃくちゃどや顔でいうタカラーに対し、冷静なツッコミをスケルが入れる。
「っちっちっちっちー。これはね、なんと!なんと!未来のことも予測できるんだ!」
「まじか!?早速試してみよう!」
「うーん。じゃあ、適当に。十分後のオイラ達がどうなっているか知りたい!」
「ぴぴぴぴ…十分後のタカラーさんは、大砲によって、殺されています。」
2
「………は?」
「………え?」
殺される?大砲?どういうことだ?全く理解できない。そうスケルは驚愕していた。
「そ、それまでの経緯を教えてくれないか!?」
「ぴぴぴぴ………これから数分後、人間の王国から奇襲の大砲が来ます。その大砲でこのレーカ村は穴と化してしまいます。」
「………なるほど、にしても、なんで人間の襲撃が来るんだろう?僕たちは何もしてないのに………」
「いや、そんなこと考えてる暇があったら、逃げることを考えよう。みんなに知らせながらどこかに避難するんだ!」
冷静な判断をできるのも強さだ。スケルはそれを持っている。
「でも、どこに逃げたらいいの!?」
「そりゃやっぱ魔王城だろ!」
「え!?魔王城はバスで1時間もかかる場所なんだよ!?歩いていけると思う!?」
だがスケルはあほである。
「くそ!ここは避難訓練を思い出して、洞窟に逃げるぞ!」
数分後に、爆発音が聞こえた。爆発音はここより北、つまりご察しのようにレーカ村から聞こえた。
「さて……これからどうする?」
スケルが超絶冷静にいう。さっきのアホぶりはなんだったのか。
「いや真面目か!いやね?なんかさ?ほら!悲しいーとかないの?」
「今は生き延びることが優先だ」
「う、うん…あ!あそこに誰かいるよ?」
タカラーが指差した(正確には宝箱の上のパカパカするやつで指した)ところには、身長は140cmくらいの、年は16くらいの全身紫色のゴースト系のモンスターがいた。
「ん?君たちも逃げてきたの?」
そのゴーストはそう言った。
「ああ、未来を予測するマシーンでな」
「奇遇だな、僕もだよ。」
「僕もって…………お前、レーカ村出身か?」
「え?違うけど………あれ、もしかして…」
俺とゴーストが目を合わせる。
「え?二人とも何言って……あ。」
「「「大砲で破滅された町や村は、一つじゃない…?」」」
三匹の声がシンクロする。
「人間が戦争を仕掛けてきているな………」
冷静にスケルが判断する。
「そういえば、君の名は?」
「いや映画かよ。」
「僕はゴッスー。この洞窟の西にあるテレン村から来たんだ。その村はなくなったけど、今生きている僕らで立ち向かうべきだと思う。」
「俺はスケルだ。こっちは相棒のピカラー。」
「ピカラー♪ってピーケモンか!オイラはタカラーだよ!」
そんな雑談をしていると、目の前の出入口が落石に塞がれた。
ドーーーン!!
「あ。」
素晴らしくスケル達は閉じ込められた。
3
「にしても、この岩どうすっかな。俺、剣士だから力は強くないんだよな…今MPないから技も打てないし。
というか怪我したくない」
「くう、オイラの頭突きでッッッ!…ダメだ、これLv300くらいの武道家じゃないと壊せないって!」
タカラーも体当たりするが、全くひびすら入らない。
「グオオオオオオ………」
突然の音にスケル達はとまどう。そして後ろを振り返ってみると……
「こりゃおわったな。」
スケルが死んだ目でいう。後ろには炎の犬、ファイヤードッグが行く手をせばんでいたからだ。
「我はファイヤードッグ…我を起こしたのは誰だ…」
「へ?っていうか名前そんままやん!」
「スケル今そのツッコミする場面やない。」
「我を起こしたのは誰だァァァァ!!!」
「ヒィイィィエェェェ!!!!このなんちゃって宝箱が起こしましたぁぁぁぁ!!」
「まってゴッスー君。君あとでぼこぼこな?」
そんな事を最後に言い、タカラーはファイヤードッグの炎で死んだ……わけじゃないけど使い物にならなくなった。
「どどどうする…?ティーパーティーでもする?」
「いやゴッスー、落ち着けよ。」
「するわけないだろっっっ!!!」
「突っ込み入れるのか。てかやるとしてもだな…あ。ファイヤードッグさん、何言ってんの?」
「へ?」
スケルが謎の言葉を発するもので、ファイヤードッグは頭おかしいと思った。そしてこいつはここで倒した方がいいとおもった。なんかえらそうにきいてくるからだ。
「お前は湯沸かし用の火担当だよ?」
その言葉を発した途端、スケルはものすごい音で地面を蹴った。
ドスッと剣が突き刺さる。ファイヤードッグは強烈に痛そうにしている。そして息の根を止めた。
「……っうぇぇぇえ?」
ゴッスーが驚く。ファイヤードッグといえば、モンスターの中でも上級モンスターの称号をもっており、その強さから経験値と金の量もとてもあり、無知な冒険者が倒そうとして、逆鱗にふれることもよくある。そんなファイヤードッグのLvは118だ。超命中しても、一発で倒すことはできないはずだ。
「俺のLvは…百九十…だからな」
かすかにゴッスーはスケルの言葉を聞いた。Lv百九十。それはとてもたどり着くのが難しいところである。
なんたって、年をとる度にLvは勝手に上がっていく。しかもそれは20才までの話。本を読んだりして魔力が上がったり、何時間も走って素早さがあがることはある。しかしLvが上がるのはモンスター、人間を倒した…いや、殺した時、上がる。
正確には、経験値がたまってLvが上がるのだが、経験値は相手と戦って倒したり、見て学ぶ時にももらえたりする。正に経験の値だ。しかし、そんなことを何百回やってやっとLvは1上がるのだ。
実際戦っても最低100回、見るだけなら10000回は必要だろう。そうなるとスケルは一万九千回戦っていることになる。となるとやはり…
「こいつ、ダンジョンに潜ってもいる…?」
ダンジョンには知識の無いモンスターがいる。法律上そいつらは殺してもいいのだという。スケルの見た目は一般的な茶色の布の服、黒いズボン、革のブーツと、そんな金っ気がある見た目でもない。となると百九十ときこえたのは空耳かも知れない。第一、ファイヤードッグが体力満タンだったとも限らない。普通にLv50くらいだろうとゴッスーは予想した。なんたって、最高の勇者のLvでさえ450、魔王様でさえLv500なんだから。しかもそれは勇者や魔王に限ること。スケルは多分剣士だろう。剣士だと、過去最高はLv120に到達した者がいると本に書いてあったことを思い出す。
「おい、なにボーーーーーーッとしてんの?早く行くぞ。」
こいつは念のため怒らさないでおこうと決意したゴッスーだった。
「あ、その前にティーパーティするか?」
「いや、別にいいから、あれは敵をなごます作戦だから。」
とっさに出た言葉がとても変すぎて恥ずかしい気持ちを胸にしたゴッスーであった――
4
「………こりゃひでえゃ」
ファイヤードックが丁度タカラーを上に吹き飛ばしてくれたせいで見事に洞窟から脱出することはできた。そして一同はレーカ村に来たのだが、そのレーカ村は生きてる者は全くいない。というより全体に穴が空いていた。
「か、軽く100メートルくらいない?この穴。」
「そうだね……オイラが確かめてみるよ。」
「は?」
そうタカラーが言った矢先、タカラーは穴に飛び降りた。
「えええぇぇぇぇ!!??なにしてんの!?」
「よっと。おーい!聞こえるー!?あ!この穴は122Mだったよ!」
「まって?無傷!?おかしくない!?」
ゴッスーが驚いた声でいう。
「ああ、それな、アイツのスキルなんだよ。」
「スキルって…あの生まれたときからある?」
「ん?えーっと、あぁ、そのスキルがアイツはヤバイんだ。」
スキル:無傷の宝箱
このスキルは任意の10分間、傷を負うことはない。しかし、再び使うのには1日かかる。
「よっと。ねぇスケル、今スキルの事言わなかった?」
「え?言っちゃだめ?」
「いや、いいんだけどさ、オイラが言いたかったな~って。」
「なーんだそんなことかぁすいませんでしたなのでその頭突きの姿勢を崩してください。」
その行動にゴッスーはニヤニヤと笑っている。
そんな時、後ろから、“今ここにいるわけない存在”が迫る。
5
後ろからの足音の正体にスケルは絶句する。
そこにいたのは、人間だった。
スケルはその人間に殴りかかる。その人間は慌てた様子で避ける。
「人間が……俺たちに何のようだ?」
スケルは、その人間を睨み付ける。その人間は、「あ、そうか!」と手をポンと叩くと、必死に弁明する。
「なんていうか、その……人間じゃないんだよな…」
スケルは睨みの目を強める。しかし、その人間の目を見て嘘ではないと悟った。さすがにこんな所で嘘をつくようじゃここにはたどり着けてないだろうと思ったからだ。
なぜかというと国境は通り抜けることはできるが、もちろん相手の種族に殺される事を分かったわけで通るのを許される。しかし、相手側の門番に殺される事も多々ある。
「じゃあなんなんだよ!」
「俺、魔王。」
「「「……はい?」」」
同時に三人はあっけらかんとする。
「だから、魔王なんだよ!」
「いやそんなわけないでしょ。お前が魔王様な訳…」
「魔王の本名!ボークオウマ・ゼタッイマウオ・オカシタベタイ!」
「魔王様ァァァァ!!」
「魔王様…だ!」
「いやこれ魔王様じゃん!」
魔王の本名をさも当然のように言ったこの人間は、どうやら魔王のようだ。そして魔王の名前が適当なのは親のネーミングセンスがヤバすぎたからである。
「いや、にしてもなんでま王様がここに?」
スケルの素朴な疑問に、タカラーとゴッスーもコクコクと頷く。
「それについてはな………宿屋で話そう。」
「「「やっぱこの人魔王様だぁぁぁ!!!」」」
魔王はどうやら根っからの落ち着いた場所好きらしく、立ち話は最高5分ときめているらしい。
「じゃあ俺のワープでいくか。」
「え、魔王様ワープ使えたんですか?」
「人間とモンスターじゃずいぶん技の覚えが違うようでな。どうやら覚える魔法もずいぶん異なるらしい。これはLV150で覚えたぞ。」
LV150という言葉にゴッスーは、「人間が攻めてきたのはここ最近なのに、もうそこまで上がったんですね。」と苦笑いする。「まぁ戦闘のカンは変わらんからな。」とニヤっとしながら言った。
「それじゃ、隣の町にでも行くか?」
歩きながらスケルは言うが、返事がないので後ろを向く。
「え………?」
そこには、緑色の大きな野獣、オークが立っていた―――
6
「よっと」
「ていやっ」
「ウ、ウガァァァァ!!」
「……え?」
ほんの数秒の出来事だった。
魔王とスケルは、剣をオークへと振り下ろして、オークの体を八裂きにした。そうゴッスーには見えた。
「うーん……二人合わせて80回、40、1………いつもより調子が悪いね、スケル」
「あぁ、そうだな………このモンスターは防御力どれくらいなんだろうな?まぁ防御力関係ないけど」
「え、まって?このモンスターって大型モンスターだよね?なに普通に斬ってんの?防御力関係ないってなに?ぇ?」
ゴッスーが頭をごしごししながらスケルに訪ねる。
「え?俺は魔王様とほぼ同じレベルだよ???」
「っふぁ?」
「だから、俺のレベル。よっと」
スケルがステータスウィンドウを開くと、そこには驚きの結果が待っていた。
名前:スケル
役割:剣士
Lv:490
「え?この前っていうかさっき『俺のレベルはLv190…キラッ』とかいってたじゃん!」
「まってキラッとかいってないそれ誤解」
「言ってた」
「言ってない」
「言ってない」
「言ってた」
「ンアァァァァァァ!!!」
「スケルって………Lv490の癖に頭悪いよね。」
「うるせぇ!俺剣士だから賢さとか上がんなくてもいいし!その為に結構魔法使えるタカラーといっしょにいるんだろ?」
「いやまぁそうなんだけどさ…」
「ねえ一つ質問いい?」
「だめ」
「は?殴るよ?」
「質問どうぞ!!!」
「よし、んじゃあ、Lv490ってなに?スケルって今何歳なの?てかどうやったらそこまで辿り着けるの?」
「いや質問が多いな」
スケルが焦った顔で言う。
「えっと………490は気づいたらなってただけだぞ?んで、俺の年は18だけど。」
「ええええ!?スケル絶対嘘ついてる!おかしいでしょ!一年に27もレベルアップしてるんだよ!」
「いやうるせえわぁぁあぁぁ!!俺がこのレベルなんだから文句ねえだろおおおお!」
「「(あれ、もしかしてオイラ・俺達空気?)」」
「おい。」
「なんすか魔王様!」
「とっくに五分過ぎてんだけど」
「さーて隣町にいくか~。」
「(切り替えが早いッッッ!)」
「ていうか、俺フード被ってるだけだけど、人間ってバレずにすむかな…」




