美人でちょっとエッチな保健の先生「推定PV数50/日の作品とPV数10000/日の作品のタイトルが同じでいいはずがないだろう。先生が教えてあげるからちょっとこっちに来なさい」
エッセイでいいの?→エッセイじゃダメというご意見があり。
これもまたピンとこないんですが、純文学に一応、セットしなおしてみます。
「先生。先生っ。大変なんです。先生っ」
おやおやどうしたことでしょう。
放課後の時間に、廊下を走る中学生の男の子。
名前を小雪歌名路くんといいます。
もちろん校則には廊下を走ってはいけませんという一文はありました。
けれど、そんな校則を振り切ってしまうくらい、彼は焦っているようでした。
行き交う人々が眉をひそめますが、そんなのお構いなしのようです。
「おや。どうしたんだい。なろくん」
彼が目的地である保健室のドアを開けると、そこにいたのは、むっちむちでばいんばいんの保健室の先生でした。目元になきぼくろのある、中学生にとってはどこからどう見ても目に毒なところだらけの先生です。
名前を、園夢叶宇先生といいます。
気軽にかなう先生と呼んであげましょう。
「かなう先生、聞いてくださいよ。僕の作品が全然読まれないんです」
「ふむん。もしかして、例のあのサイトのことかな」
「そうなんです。『小説家になろっ!』ですよ」
『小説家になろっ!』は、その名のとおり、小説家になることを目的としたサイトです。
なろ君は、小説家に『なる』ではなく『なろっ』っていうところがいいよなぁと思っています。
だって、そこには、そうしようかなという意思が確かにあるんだけれども、断定してしまうことの怖さを避けているように思うんです。
『なろっ』という軽やかさがあるからこそ、みんな気軽に投稿できるんだと思います。
書籍化なんて、自分にはおこがましい。
もちろん、恋焦がれるようなそんな気持ちもあるんですけど、まだまだ恋するには早いなんて思っちゃう、敏感な年頃なんです。なろ君はまだ中学生ですから。
「しかし、読まれないというのは、どういうことかな? もしかするとPV数がゼロだったのかな」
「ゼロじゃないです。でも一日にたった20PVなんですよ」
「一日に20PVが多いか少ないかという論争は置いておこう。ともかくなろ君は現時点のPV数を少ないと思ったわけだ。では君の作品を検索しようじゃないか。どんなタイトルにしたんだい?」
かなう先生が聞きます。
そしてクルっと回転椅子をまわして、パソコンの検索エンジンを立ち上げました。
もちろん、アクセスするのは『小説家になろっ』です。
そのサイトでは、20万以上の作品が投稿されています。
なろ君はゆえあって、先生と小説という趣味を語り合う仲になってはいましたが、なろ君のペンネームも書いた作品のタイトルも、まだ先生に教えてませんでした。
それは恥ずかしかったというのもあるんですが、もしかしたら、予想のほかヒットしてしまうというのを思い描いていたからかもしれません。
もしも大ヒットしたら、先生にそのとき教えたいなと考えていたのです。
「あの……『勇者なろの冒険』です」
「ん? よく聞こえなかったのだが」
「だから……、小説のタイトルです」
「小説のタイトルが『勇者なろの冒険』か……。なるほど」
それ以上、かなう先生は何もいわず、パソコンにカタカタと打ち込みました。
『小説家になろっ』では作品にアクセスする方法がいくつかあります。
ランキング。レビュー。新着作品。タグ。
そして、検索です。
検索については作者の名前を打ちこむこともできますし、作品の名前がわかっていれば、それもまた検索できます。かなう先生が今やっているのは、もちろん検索です。
そして、すぐに『勇者なろの冒険』も見つかりました。
なろ君は、先生がすぐに内容を読んでくれるものだと思いましたが、先生が、いの一番に見たのは『アクセス解析』です。そこでは、どの時間にどれくらいアクセスがあったのかを知る手がかりが記されています。
なろ君が書いた作品は、投稿直後に20程度のアクセスがあったようですが、そこからは一桁、ひどいときにはゼロアクセスの時間帯もあるようです。
「先生、どうですか」
「君はどう思ってるんだい」
かなう先生は、再びくるりと椅子をまわし、なろ君のほうを向きます。
足を組んで、モデルのような足を見せつけられ、なろ君は目を伏せました。
恥ずかしかったのです。
もちろん、先生のタイツを履いたおみ足が恥ずかしいというのもありましたが、自分の作品のアクセスがおそらくこのサイトでも一番少ない部類に入るという事実がたとえようもなく恥ずかしかったのです。
なろ君には自負がありました。
少なくとも、自分の作品は人より優れているはずだろうという、根拠のない自信があったのです。
「正直なところ、読まれてないなと思いました」
「どうして、読まれなかったと思う?」
「わかりません。内容はそんなに悪くないと思うんですけど」
「他の作者さんも同じような悩みを抱えてたりしなかったかな」
「それは、わからないです」
「ほう……どうしてわからないのかな?」
「執筆中は、影響を受けないように、他の人の作品を読まないようにしているんです」
「なるほど。では、君はリサーチはしなかったのかな?」
「リサーチってなんです?」
「君の商品を最も売れるようにするためのリサーチだよ」
「売るって……、そんな。不純です」
「不純? 君は自分の作品を営業するのが不純だというのかな」
「そうですよ。だって、小説って芸術でしょ。芸術はみんなに評価されるからこそ価値があるはずなんです」
「なろ君。君が高尚な考えを持っているのはよくわかったよ。でも考えてみたまえ、かの有名なバッハは実は生前は無名な作曲家だったんだ。死後にスコップされて、初めて有名になったんだよ」
「スコップ?」
「発掘だ」
「そうなんですね。でも売れなくても……」
「読まれたいと思ってるんだろう」
「そうですけど」
「読まれたいなら、それなりの努力をすべきだと思わないかな」
「でも、それって作品の価値とは関係ないじゃないですか」
「関係あるよ。コンテンツはそれがどんなに質が高くても、消費されなければ意味がないんだ。なかにはまったく消費を意図していないアート。アウトサイダーアートというものもあるのだけれども、そのことは置いておこう。なろ君。きみは読まれたいと思って小説を投稿したわけだろう」
「それは、そうですけれども」
「まあ、なろ君の言うこともわかるよ。コンテンツと営業というのは別個の問題だけれども、しかし、営業というのは見えないものだからね。コンテンツがユーザーに届いているということは、もう営業は終わっているんだよ。だから、ユーザーはどんなふうに営業の努力がされたのかは見えないものなんだ」
「でも、先生、僕は営業がしたいんじゃないんです。ただ、いい作品を書きたいんです」
「それで、そのいい作品を読んでほしいんだろう」
「そうですけど」
「なら、それなりの努力をしたほうがいいと、わたしは思うのだがね」
先生が足を組みなおします。
再び、なろ君は赤面しました。
もちろん、先生の足が組みなおされるときに、その艶美な様子が恥ずかしかったというのもありますが、それ以上に、自分がやるべき努力を怠っていると、かなう先生に言われたように思ったからです。
先生は言います。
「"いい作品を書く"、"営業をする"。"両方"やらなくっちゃあならないってのが"作家"のつらいところだな」
「わかりましたよ先生。じゃあどうすればよかったんです」
「そうだね。君は営業という意識に欠けていたんだ。自分の作品が娘だとすれば、着飾ることを忘れていたというべきかな。化粧をして、綺麗な洋服を着せて、目立つ場所に立たせる。そういう行為が必要なのだろう。わたしだって、手を出したら犯罪になってしまう坊やが相手でも、きちんと化粧はしているだろう」
「そ、そうですけど」
「作品の顔はタイトルだよ。まず、多くの人間が見るのは顔だ」
「タイトルが悪かったっていうんですか?」
「そうだね。よく考えてみたまえ、『勇者なろの冒険』だと、いったいどんな作品なのかわからないだろう」
「たしかにそうですね。でも、僕だって何も考えていないわけじゃなかったんですよ。最近のラノベって、やたら長いタイトルが多いじゃないですか。○○が神様転生したら、まったりスローライフで婚約破棄チートとか」
「いくつか混ぜちゃいけないタイトルが混じってると思うな」
「でも、そうじゃないですか。最近のラノベはそんなのばっかりですよ」
「流行り廃りはあるけどね。確かに最近の商業ラノベはそういうタイトルも多いかもしれないね。でも、君はこのサイトの累計上位作品のタイトルを見てるかな」
「えっと、無職とか……謙虚とか」
「どうかな。これらのタイトルを見て、やたら長いとか感じるかな」
「案外そうじゃないかもと思います。でもそれってタイトルじゃなくて、やっぱり中身が面白かったってことなんじゃないですか。先生の持論の"営業力"じゃなくて"コンテンツの質"がやっぱり問題だったってことなんじゃ」
「そうだね。そういう面もあるだろう。コンテンツ力が営業力を凌駕して、いつのまにやら有名になっていたということもあるかもしれない」
「じゃあ、僕はそういう道を辿りたいです。営業なんかしなくても、いい作品を書いて、それでいつのまにやら有名になりたいです」
「早計だね。それは彼らがどのような努力をしたかわからないからだよ。ユーザーは営業について見えない。わからない。だから、いざ彼らと同じ立場になったときに、その努力がわからないってだけだ」
「僕にはよくわかりません。上位の人たちが営業努力をしてたとか言われてもいまいちピンとこないんです」
「では、まあそれも置いておこう。君はコンテンツの質をあげていっていつかは読まれるのを望むというが、しかし、世の中の商品は売れるために宣伝や広告といった活動をしているね? なぜ小説だけ、そういう活動をしちゃいけないと思うんだい?」
先生が意味もなく白衣の上着を脱いだので、ふくよかでたわわな胸が強調される形になり、なろ君は再び目を伏せてしまいました。
もちろん、先生の痴態が恥ずかしかったというのもあるのですが、それ以上に、そういったことを考えない自分がまるで子どもめいていると思われているようで恥ずかしかったのです。
べつにいいのですよ。なろ君はまだ中学生ですからね。
「先生、広告や宣伝が悪いわけじゃないんですけど、それって、先生がいうコンテンツに自信がないって言ってるみたいじゃないですか。自分はそんなことをしなくても、読まれるって思いたいんです」
「じゃあ、君はこのままどんどん自分の作品の質を高めていって、それで読まれていくと思っているわけだね。わたしに相談するまでもない。既に答えは出ているじゃないか」
「で、でも……。先生。僕の作品とそんなに中身の質は変わらないって僕基準が思うのも、僕の何倍も何十倍も読まれているんですよ。不公平じゃないですかっ!」
「わがままでかわいいな君は。先生と生徒の立場じゃなかったら、抱きしめているところだよ」
「先生。セクハラはダメです」
「冗談だよ。まあ、コンテンツの質というのは、定性的評価だから、君がそう思っていることが客観的にそうであるとは限らないわけだけど、確かに同じ質であっても、広告や宣伝の力で、消費のされ方は異なるだろうね。広告や宣伝というものが存在するということが、その証明だよ」
「わかってるんです……。営業によって底上げする力があるってことは……でも、それって自分の娘を売りに出すみたいで、なにか嫌なんです」
「中学生で人の親とか、罪深いね君は。14歳のお父さんとか、ちょっと興奮するタイトルだが」
「あううう」
なろ君は耳まで真っ赤になってしまいました。
先生は耳元でささやくように言うのだから、いたしかたないことだったのです。
「なろ君。どうする? 先生としてはふたつの道を示してあげられるかな。なろ君がこのまま自分のコンテンツ力だけあげていき、いつかは読まれるようになるのを待つか。それとも営業力という方面でその作品が読まれる努力をするか。どうする?」
腕を組んだときの様子から、左のおっぱいを揉むか、右のおっぱいを揉むかを問われたようで、なろ君は悩みに悩みました。
もちろん、悩んだのはそんなことではなく、自分の作品は読まれたい。でも、そこに自分が不純と感じるコンテンツ以外の要素をいれるべきなのかという問題です。
けれど、なろ君は決めました。
なろ君は最初に言ったとおり「読まれたかった」のです。
「先生。作品の営業ってどうすればいいんでしょうか?」
「まずはタイトルだろうね。何度も言うけれど。タイトルは顔。これは他の作者さんも死ぬほど書いてることだと思うよ。ほら、検索してごらんなさい」
かなう先生に椅子に座らされ、検索を促され、それから肩のあたりになんだか柔らかな感触が置かれることになって、なろ君はどぎまぎしながら、検索しました。
確かにエッセイ集には、たくさんの作者さんが投稿してあって、PV数を上げる方法とか読まれるためにはというようなタイトルで書かれてあるのは『タイトル』で目立たせるということでした。
タイトルで目立つというのが、作品が読まれるためのコツだと書かれてあったのです。
「まあ、そういうことだよ。読まれるためにはタイトルで目立つのが大事。だって、君。このサイトにはいくつの小説が、どんなスピードで投稿されていると思う」
「20万の小説が……、ものすごいスピードで投稿されてます」
「そうだね。そして人間というものは、選択肢がたくさんありすぎると逆に選択できなくなるものなんだ。つまり、無意識に選択をはじく。選択を絞る。そんなことをしているんだよ。たとえば、君が何かジュースを飲みたいなと思って、公園で屋台タイプのジュース屋を見つけたとする。そこで100種類のジュースがありますといわれたら困るだろう。そして次に考えるのは、慣れ親しんだ。君の最も好きなジュースを頼むことになるはずだ」
なろ君はなるほどと思いました。
選択肢が多くなりすぎると逆に選択肢を無意識に狭めてしまうのです。
だから、きっと多くの人は、安心安全なランキング上位の作品をたくさん読むのだろうと思います。
「ウェブというものの特性だろうな。情報は一極化し、摩天楼のようにそびえたつ。この時代ではね。情報の裾野にあたるような作品はどんどんなくなっていってるんだよ。ニッチを狙う人もなかにはいるんだろうが、そういったものが読まれにくいというのが、ウェブの特性なんだ。そう考えると、たまには現実の書店にいってみるのもいいかもしれないねぇ」
薄手のブラウスに包まれた先生の乳首は、まるでそびえたつ摩天楼のようでした。
乳首当てゲームをしたら百パーセント勝てる自信が、なろ君にはありました。
でも、そんなことよりも、なろ君の心にあるのは『読まれたい』の一念です。
「僕は『小説家になろっ』に投稿しているんだから、そのサイトで読まれるようになりたいです」
「男の子だなぁ。そういう欲望に素直なところ、先生は嫌いじゃないぞ」
「あうう」
「まあそうだね。タイトルについては、このサイトに特化したものにする必要があるだろう」
「やっぱり、このサイトにとっての流行りで、目立てるのは長いタイトルなんでしょうか」
「そうとも限らないんだけどね。さっきもいったとおり、累計上位はあまり長くなかっただろう」
「そうですね。じゃあ、短めでもいいんでしょうか」
「単に長い短いの問題じゃないんだよ。営業というのは生ものでね。たとえば案件があったとしても、それをずっと放置していたら腐ってしまうだろう」
「それはなんとなくわかります」
なろ君が思い描いたのは小学生のときの友達のことです。
なろ君には小学生のときの親友といえるような友達がいたのですが、友達は私立の学校に行ってしまい、それから疎遠になってしまったのです。
ずっとなにもしなかったら、たとえ熱い友情でも冷め切ってしまう。
ましてや、ウェブで読んでくれるのは赤の他人です。
ブラウザをバックされれば、一瞬で関係は断たれてしまいます。
「営業が生ものということは、時流があるんだ。それと、自分の立ち位置だね。無名の人がどこかの公園でギターを弾き語りしているとする。それとは別に有名なアーティストが同じく弾き語りをする。どっちが人が集まると思う」
「もちろん、有名なほうに人が集まると思います」
「そうだね。つまり、わたしは常々思うんだが、PV数50/日の作品とPV数10000/日の作品のタイトルが同じでいいはずがないんだよ」
「えっと……どういうことですか」
「まあ、ウェブである以上、みんなスタートラインはいっしょなんだろうが、例えば、既に書籍化されている作家と、君のような無名の書き始めたばかりの素人が同じタイトルでいいはずがないんだ」
「書いた人によって、タイトルを変えるべきなんですか?」
「そうだよ。わたしはそう思う。つまりね。累計上位作家のような人たちにとっては、君がさっき言ったような『○○が神様転生したら、まったりスローライフで婚約破棄チート』というような長ったらしいタイトルにする必要はないんだよ。そんなことをしなくても彼らの営業は既に成功している。だから、どんなタイトルであれ、読まれるだろう。とすれば、極太のもっと口あたりのよいタイトルのほうがふさわしい』
「極太・・・?」
「そう、極太」
なろ君はぷしゅうっと蒸気が吹き出そうでした。
それは美人で妖艶な先生が、極太というパワーワードを口にしているということもありましたが、自分がいかに考えの足りない少年かがわかってきたからです。
「例えば、有名な企業の商品だったら、誰もがすぐに"つぶやける"ようなそんな短めで落ち着いた作品のほうが逆にいいんだよ。君がさっき述べた無職にしたって、謙虚にしたって、わずか二文字でその作品のことだとわかるぐらい印象深いわけだろう」
「そうですね。でも僕は無名だから……ともかくタイトルで目立たなければならない」
「そう。そういうことになる」
「でも先生」
「なんだい。なろ君。そういううるんだ目で見つめてくるということは、そこのベッドで何かをしたいということなのかな。先生は犯罪に対しては否定的だが、愛に対しては比較的肯定的だよ」
「そうじゃなくてですね。その、累計上位の作品もやっぱり最初は無名だったわけですよね。先生が言うような極太で口触りのよい作品でも、営業に成功しているわけじゃないですか。べつに目立つことを第一に考えなくてもいいってことじゃ……」
「うん。それは、そのとおりだよ。だけど、さっきも言ったろう。営業は生ものだって。時代は移り変わるものなんだよ。たとえば累計一位の作品を見てみると、連載が始まったのは2012年、いまから実に五年も前だ。そのときの作品数がどれだけだったかわからないけれど、今よりずっと投稿数は少なかったと思うけどね。つまり、そのときのやり方を踏襲しているだけじゃ、うまくいかないということも考えられる。それと、彼らはいわゆるパイオニアだったわけで、君は唯一の君の作品を作ろうとしているわけだけども、『小説家になろっ』という巨大コンテンツの中では、フォロワーだ」
先生の言葉に、なろ君は脳みそを揺さぶられるような衝撃を受けました。
フォロワーという言葉には、なんだか自分が唯一のものを作っているという、そんな神聖な気分すらも侵されるような気がしたのです。
「でも僕は……」
「わかるよ。君は君の作品を作ろうとしている。でも、君がもしも書籍化されることになっても、世間からすれば『小説家になろっ作家』であることは紛れもない事実だ」
「そうですね。でも、僕は今このときでも、極太で口触りのいい作品タイトルがいいです。自分がそう考えたタイトルにしたいです」
「本当にそう思うのかい? 『勇者なろはチート能力で婚約破棄をするけれど、ハーレム状態なので、問題ありません』とかのほうが、今の百倍は読まれると思うけど、それでいいのかな君は」
「はい。でも、『勇者なろの冒険」というタイトルも、目立つ目立たない以前に、口触りがあまりよくないと思いますし、もう少し目立たないといけないと思いますし、もっと考えたほうがいいのかなと思いました」
「そうか。なろ君が自分で決めたのなら、先生は応援するよ」
「ありがとうございます。先生。先生に相談してよかった」
「いつでも待ってるよ。先生は君の味方なのだからね」
そうして、なろ君がうれしそうに去ったあと。
かなう先生はようやく『勇者なろの冒険』を読み始めることにしたのです。
深夜のテンションが悪いんです……。
追記。もうちょい読まれたいです。