大ピンチに陥りました!
『ぎゅるるるる…』
虫の音も色も聞こえないこの平地に、一際大きな虫の音が鳴り響いた。
そう、全員の腹の虫が鳴いたのだ。
「そういえば…昨日から何も食べてないね…」
昨日は一日考えっぱなしで緊張していたから忘れていたけど、まる2日何も食べてないのだ。そりゃあ腹も減る。
「そうですね…僕もさすがにお腹がすきました…」
華も少し赤い顔になりながらはにかんでいた。
「実はわしもです…」
それに続いてゴンゾもはっはっはと力なく笑った。
華とゴンゾに続いてみんなも「腹減ったぁ!」「私も少し…」「あー、もうダメ、お腹すきすぎて飛べなくなったわ」と各々愚痴りだした。
しかし、問題はすぐに解決できそうもなかった。
「ねぇ、誰か食べ物持ってないのー?」
サシャがみんなに尋ねるが、みんな首を横に振るか目をそらすだけだった。
「華、まだ野菜とかは出来てないよね?」
「今日植えたばかりですから、流石にまだ芽すら出ていません…」
圧倒的な食糧不足である。誰も食べ物を何も持っていない。ましてや備蓄などもないからいよいよ詰んだ。
あたりを見渡すが、魚の居そうな川も、果物やきのこといった自然の恵みが取れそうな場所もない。
「主、玉になにか食べ物を召喚出来そうなものはないか?」
「食べ物か…。ちょっと待って」
期待を込めて玉を確認してみるが、やはり食料の欄はどこを覗いてもなかった。
「飼育場ならあるけど…」
「お、豚とか牛とかか?ならそいつをとっとと作って牛とか殺して食おうぜ!」
「…いいけどさ、誰か牛を殺して捌ける人いる?」
「「「「「……………」」」」」
やっぱり誰もいないよね。まぁ普通に考えてちょっと前まで普通の暮らしをしていた俺たちには荷が重い事なのだ。
俺の村でも肉は食べられていたけど、ちゃんと肉屋が捌いていたし、なにより自分で生物を殺して食べるなんてことはしてこなかった。
生き物の命をもらっている。そんなことわかってはいるが、実際奪う側に立ちたいやつなんかいない。
「他にも魚の欄はあるけど、これはどうも卵から育てるみたいなんだ。それに源泉から水路もひかなきゃいけないからポイントがかかる」
「うーん、困ったね。流石にこのままだとみんな動けなくなってしまう」
「……よし、街に行くか」