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経験値がほしかったのに玉を渡された  作者: てんこ
7日目
124/126

次世代の者たち

くくる達が飲食店で話しているころ、森を抜けた先にある丘で1人の男がくくる達の方向を眺めていた。


その眼には敵意が見えず、まるで小さな子供を見守る親のようだった。


「やっほー(笑)元気だった?(笑)」


「ん?あぁおめぇか。また変なタイミングで呼び出したみたいだな」


月明かりに照らされた初老の男は顎髭を触りながら長身の暗い男に返事を返す。


「……ほんとね。懐かしい話だわ」


また1人現れると初老の男と同じようにくくる達のいる方角を生気のない目で見つめた。


「いまだに解決していないことが悔やまれるけどな」


そういい強面の男も同じように並んで立った。


「まついにこの時が来ちゃったーwwwと思って呼んだんだよねwww見極めねば(キリっ)と思ってさ(笑)」


「………」


男がふざけた口調で話をし続けるがそれに反応することなく同じ方向を見続ける3人。


そんな3人を見つめながら暗い男も遠くをを見続ける。


「あぁあ、バカ息子め。もうちょっとうまくごまかせよ」


そういい黒髪の青年へと姿を変える男。


「うちの弟子もずばずばきりこんでいくねぇ(笑)」


「……ほんとあんたたちの悪いところによく似ているわね」


「あぁ、昔旅した時のこと思い出すよ」


「ふざけんな、俺はもうちょっと知的だったぞ」


「僕ももうちょっと上手に切り込んだね」


各々が感想を言い合いながら話の行方を見守る。そんな中、暗い顔をした男が話を切り出した。


「例の件なんだけどさ、見ている限り徐々に浸食が進んでいるみたいだよ」


「……そうか」


「一度飲まれかけたけど、なんとか周りのおかげで元に戻ったみたいだ」


「はぁ、どうするかな」


青年は頭をぼりぼりとかくと天を見上げた。


「で、前回は話をしてもらう前にスキルが切れちゃったんだけどさ、なんであぁなったの?」


「……なんて言ったらいいんだろうなぁ。この世界に来てスローライフってやつを楽しんでたんだけどさ。どうにも魔族との生活を離れたくなったんだよ。だから人間だけ集めて暮らしてたんだ。そしたらある日変な文字が出てきてよ、千晴に聞いても知らないとか言いやがるからなんかのエラーかと思ったんだ。でも気にせずYESを選択したんだ」


「変な文字?」


「あぁ、移住を希望しますってよ。そもそもあっちの玉は俺の方の玉を元にして千晴に頼んで作ったからもんだ。だからどんな機能があるかは俺も把握してるんだよ。なのに知らねぇものが出てくれば変なもの、エラーコードみてぇによくわかんねぇもんだろ?」


「……で、それは結局なんだったの?」


「わかんねぇんだよな。結局のところYESにしても何にも変わらなかったし。ただそれからしばらくして別のやつで同じように移住がーってでたんだ。だから気にせずYESを選択したんだ。そしたらしばらくしてどんどんと同じように別のやつたちからの移住の承諾画面が出るようになった。そしたらあいつが生まれたんだ」


「ふーん、生まれてそれから?」


「いや、生まれたって言ってもな、玉から生まれたんだよ」


「は?召喚したとかってことか?」


「いや違うんだよ、文字通り玉から胎児が出てきたんだ」


「…お前何言ってんの?」


素っ頓狂なことを言い始める男にほかの3人は目を細め軽蔑した目を向けた。しかし青年は腕を軽く振りその視線を払った。


「俺が知りたいね。あの瞬間グロくて結構引いたしよぉ」


「………冗談とかではないみたいね」


「誰が冗談でこんなこと言うか。おかげで世話をしたりで大変だったんだぞ?だけど俺の子供として育てるわけにもいかなくてなぁ、仕方なく子供ができなくて悩んでいた夫婦に任せるようにしたってわけだ。それでステータスを確認したらあの表示がされてたってわけだ」


「………だとしたらあの玉は渡さない方がよかったんじゃないの?」


「それは俺も思ったんだけどよ、千晴と話したら逆に渡した方がいいって話になったんだ。もし覚醒したとしてもくくるを支えてくれる奴らがいればなんとか抑えてくれると考えてな」


そういい青年は地面にゴロンと寝そべった。


「まぁ実際にうちの弟子も助けたみたいだしね(笑)」


「次の世代の事は次の世代に任せるさ。俺はもう疲れたしな」


「だとしてもなんで今更あのくそ野郎が……」


強面の男が話そうとした瞬間3人の姿は煙となって消え、ただ一匹のスライムだけが残された。


その体を揺らしながら跳ねると一瞬で町へと移動して店の前でくくる達を見た。


次の世代の者たちは楽しそうに笑いあい、お互いの手を取り合っていた。


自身の愛弟子も例にもれず溶け込んでおり、安心する


しかし


「ん?なんだこの移住を希望しますって?」


不穏な気配がそのスライムを包んだ。

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