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クソ迷惑なじじいに街の作りなんてクソめんどくさいことを押し付けられて二日目、俺は何もない部屋で寝していた。
布団もなければ明かりもない、ただただ広い部屋だ。
「…床は硬いな」
床にとりあえず寝っ転がって寝ただけで、既に体が痛い。
街作りの前に、部屋作りが先だな、これは。
マンションの構造は1階から12階までと非常に高い。俺の部屋は12階の一番いい部屋を選ばしてもらい、サシャとゴンゾは2階、サタンは11階、華は俺と同じ12階の部屋を選んだ。キリは動けないためそのまま水源待機だ。
しかし、このマンションというのは1階のエントランスは豪華で無駄に広いし、部屋数もとにかく多いし何かと無駄な物を建ててしまったと後悔した。
部屋にはガスコンロというものと、エアコンなるものがついてはいたが、今のところ機能させる方法がわからず、ただの飾りになっている。
そんな自分の無駄なポイント使いを反省しながら外へ向かい、日の光を浴びる。
既にみんな起きているようで、遠くにある畑では華がスライムと一緒になにかしていて、植林場ではゴンゾが木を切っていた。
「みんな朝早いな…」
意外なのはサシャだ。あいつ遊び人のくせに朝はしっかり起きてるんだな。すでにキリと楽しげに盛り上がっていた。
「おい、ククルおせーぞ」
「あぁ、ごめんサタン…。って、誰だお前」
感じの悪い口調で朝からサタンに怒られたと思うと、目の前にいたのはサタンではなく、赤髪の綺麗な女の人だった。
「あぁ?俺だよ、サタンだ」
「…何言っているの君は」
「昨日ステータス確認しただろ。俺のスキルは『変化』で、性別は不明なんだよ…」
「いや、確かにサタンのステータスは見たけど、どう見ても君は女の子じゃないか」
「だーかーらー!俺なんだよ!」
すごい怒りながら言ってくるけど、全然理解できないんだが。
「俺は性別が決まってないから、毎日男と女が入れ替わんだよ」
「はぁ!?そんな設定聞いてねーよ!?」
「どうせ言っても信じないだろうし、見てもらったほうがはえーかと思ってな、言わなかった」
こいつはどうしてこういう大事なことを先に言わないんだろう…。
1時間ぐらいサタンと言い合いをしたが結局認めなくてはならないし、もうどうでもよくなったから大人しく2人で植林場へ向かった。
「よ、ゴンゾ。どんな感じ?」
「おぉ!ククル殿!起きられましたか!」
斧で木を切っていたゴンゾは手を止め相変わらず大きな声で返事をしてきた。
「どう?問題なさそう?」
「問題ですか?そうですなぁ、やはり人手が足りないですな!」
「やっぱり…」
遠くから歩きながら見ていたが、さっきから木を切っては運んで、空いている土地へ向かっては苗を植えていた。
1人でやるには結構な重労働だし、なにより重労働だ。
玉で植林上のステータスを見るとポイントの還元率は高いらしく、今日だけで120ポイントも稼いでいた。
「へぇ、こういう風に溜まっていくんだ」
「切った木を置くところがありましてな、そこに置きますとどこかに転送されるシステムになっているようです」
「へぇ、つまりは物資を送ることでポイントと交換されるのか」
俺たちがやっている商売のようなものか。
「一応切った木は何本か残しておいてくれないかな?」
「む?何かに使われるのですか?」
「そうだね、だいぶ先になるだろうし10本ぐらいお願い」
「ぶわっはっは!了解しましたぞ!」
相変わらずうるさい。
確認をし合っていると、突然近くに植えてあった苗が急成長し、10メートルほどの木が生えた。
「うぉ!?なんだこれ!?」
「む?ククル殿は知らないのですか?この木は魔界の木で、とても丈夫で、成長が早いのですぞ」
「あぁ、そうだな、こいつぁよくダンジョンなんかで使われてる木だ。冒険者どもが切っても片っ端から成長しやがるから、悪魔の森なんて呼ばれるあたりに生えてんだよ」
「そ、そんな木があるんだ」
「本当はゴブリンが切られたところに片っ端から苗を植えてるだけなんだけどな」
「彼らは力もありますし、何より働きものですからなぁ!」
魔界って意外と働き者ばっかなのかもしれない。
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続いて向かったのは農場だ。
しかし、そこにいた華は頭をひねっていた。
「おはよう。どうしたんだ華」
「あぁ、主。おはよう。…少しばかり困ってるんだよ」
「困ってる?」
「あぁ、まず道具がどこにもなくてな、仕方ないから手で耕していたんだが…。土地は広いし、まず種がないんだ」
「え!?そうだったの?」
「すまないが、道具を買ってもらえないかい?さすがにこの土地を全部素手で…というのはさすがの僕でもきついんだ」
確かに目の前に広がっているのは立派なお城が建てられるほど広大な土地だ。これを全部素手というわけにはいかないだろう。
「あぁ、わかったよ。よかったら一緒になにが必要か見てくれないか?まだレベルが低くていい物はないけど」
「うん、構わないよ。見せてくれ」
そういい華が近づいて来ると、ほのかに汗の臭いと女の子特有の少し甘い匂いがしてきた。
そういえば華は顔が美形とは言え女の子なんだ。
スタイルも腰の位置が高いところから足が長いってわかるし、たまに着物の胸元から見える肌はすんでいて綺麗だし、なにより高い位置で髪を結っているからそこから見えるうなじがなんとも…。
「おい、ド変態野郎、発情してんじゃねぇよ!」
「は、はぁ!?発情してねぇよサタン!」
「してただろ!思いっきり胸見てだじゃねぇかオメェは!」
ち、ちげーし?綺麗だなって眺めてただけだし!?
「あ、主、流石にその、僕もそんなに見られたら恥ずかしいというか…」
「あ、いや、その、ごめん」
「いや、いいんだ!そ、それよりさっきから一緒にいた彼女はやっぱりサタンさんだったんだね」
「ん?あぁ、そういえば言ってなかったか」
「いや、普通言わなきゃわかんないだろ…」
とりあえず華に説明すると、あっはっは!と笑いだした。
「そうなんだね、僕は見た目が男の子で、中身は女の子って感じだけど、君は日替わりで性別が変わるというのは面白いね」
「俺は全く面白くねぇけどな」
「ふふふ、十分に面白いから誇っていいよ」
「うるせぇよ!とっとと道具選びやがれ狐野郎!」
「ごめんごめん。よし、主。見せてくれ」
「はいよっっと」
農場を選択すると『レベル1農場』と表示されそこに道具と種も表示された。
表示された種の種類は人間界にある植物ばかりで、俺でも食べれそうだ。
とりあえず、何個か言われた道具と種を選択し、支払い画面を見ると、すごい数値が表示された。
『800pt』
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ポイントの急上昇はキリたちのおかげだった。
キリの「浄水」スキルのおかげで使っているだけで水の状態を改善し続け、ボーッとしてるだけでポイントが入るというまさにポイント製造機と化していた。
「うちの守り神だな、キリは」
「そ、そんな私は何もしてませんよ!」
「いや、キリはそのままでいるだけで俺を助けてくれるからありがたいよ」
「ありがとうございます…」
あぁ、本当にキリはかわいいなぁ。ピンク色のウェーブのかかった髪をいじりながらもじもじしていてとても可愛い。それでいて気品があるし、本当にもう俺の女神だ。
「ほんとキリってばすごいわよね、流石だわ」
「さ、サシャまでぇ…」
隣にふわふわ浮いているサシャは自分のことのように誇らしげに笑っている。
けど、流石はリリスなだけリリスはとても色っぽい。少し露出高めの黒いドレスはとても似合っているし、幼い顔のわりにとても大人びた雰囲気をだいしている。
「また発情してんのか、このド変態野郎」
「し、してねぇよ!」
「ほんと、これだから成人越えの童貞は困るわよねぇ」
「童貞は関係ないだろう!」
ちょーっと女の子との密接な関係がないだけだし!?
ひどいことを言ってくるサシャに対し隣で「どうてい?」って首をかしげてるキリを見習え!
「けど、サタンさんの姿とても綺麗ですよね。昨日までの怖い男性との雰囲気のギャップがあります」
「それ、あたしも思った!めちゃくちゃ美人だし、髪もサラサラでうらやましいんだけど!」
「あぁ!?うるせーよ!仕方ねーだろ、体質だ!」
「ひっ!ご、ごめんなさい…」
「あ、いや、別に怒っては…」
「あー!あんたなにキリ泣かしてんのよ!」
「な、泣かしたわけじゃ!」
「ほんと、口調きついよね」
「仕方ねぇだろ!生まれつきだ!」
どうもキリとサタンは相性が悪いらしい。まぁ無理もないか、お嬢様とヤンキーって感じだしな。
けど、今日だけでだいぶ進展はあったな。