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女の執念  作者: 今田信義
4/5

仲間

菜々子が中学2年の夏、父は再び覚せい剤取締法違反(使用)の容疑で埼玉県警に逮捕起訴された。

風邪薬に覚せい剤が混ざっていたという父の主張に対し、埼玉地方裁判所浦和支部は、反省の色なしと父の主張を退け懲役2年6月の実刑判決を下した。それを機に母は離婚を決意し、一家は母の実家のある千葉県千葉市に引っ越してきた。


菜々子は、千葉市内にある市立中学校に転入学することになった。無口な菜々子に対し同級生たちはあまり歓迎の意を示さず、初めは誰ひとりとして話しかける生徒がいなかった。だからと言って、邪険にされる事も一切無くごく普通のどこにでもいる大人しい一女子生徒のように見られていた。


その同級生たちの菜々子に対する認識が一変したのはある事件が起こってからだった。


菜々子は何時ものように机に腰掛けボンヤリと外の景色を眺めて授業が始まるのを待っていた。その時、窓の外からサッカーボールが勢いよく菜々子の顔をめがけて飛んできた。菜々子は避ける事もせずボールは顔面に直撃した。


慌てて飛んできた男子生徒が、


「わりいわりい」


と、笑いながら誤ってきた。


男子生徒は、


「しかし、お前、サッカーボールがまともに顔面に当たっても鼻血ひとつ出さねえなっ。男みてえだ。ハハハハッ」


「おまえ、転校生だろ…」


と言った瞬間、菜々子の拳が男子生徒の顔面にのめり込んだ。

更に、後ろに倒れた男子生徒に馬乗りになり、2発、3発と、拳を叩き込んだ。男子生徒の鼻からは鼻血が飛び散り、折れた前歯が床に落ちた。


クラスメートは、皆唖然として成り行きを見守っていた。誰ひとりとして止める者はいなかった。

それ以来、菜々子は男子生徒から恐れられ、陰で、


『ななお』


と呼ばれる存在になった。



男に引けを取らない菜々子は、次第に女子生徒からあこがれの眼差しで見られるようになり友達も増えていった。


菜々子の周りにはいつも仲のいい友達が集まってきた。

学校ではまともに授業を受けず、いつも仲間と体育館の裏でタバコを吸っては、


「ねえ、菜々、なんぱ通り行こうよ」


「学校にいても、つまんないし」


行こう行こう!!


「マック行ってさ、ワイワイ騒ごうよっ」


いいねいいね!!


と、盛り上がる。


突然、絵梨香が叫んだ。


「あっ!そう言えば、この前マックでカッコイイヤンキー兄ちゃんにナンパされてさ、シンナーあるからって、番号聞いたんだ」


「いつでも電話してきなよって、いってたよ」


リエが突っ込んだ。


「アンタ、そのオトコと、シタノ?」


「当たり前でしょ、加曽利山荘でねっ」


「ダサっ、加曽利山荘だってさ。せめて、お船のかたちの石庭にしたらっ」


キャハハハハハ


菜々子は、そんな仲間たちのバカ話を静かに聞いていた。


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