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女の執念  作者: 今田信義
3/5

凶暴な兄

中学に上がると、2歳年上の兄は番格的存在になっており、ケンカをして相手をぶちのめしては、市内のみならず市外にまでその名前を広めていった。

菜々子はその凶暴な兄の妹として同級生や先輩の女子生徒から常に気を使われ裏では軽蔑の眼差しで見られていた。

ある日、街に買い物にでかけた時,通りの向こう側で中学生とも高校生とも思われる大人数の生徒が乱闘騒ぎを起こしていた。

よく見ると兄の姿もあった。

兄は、ひとりの学生に馬乗りになり、顔面を殴打していた。


「おう、コラッ、弱いくせしやがって誰にケンカ売ってるんだぁ」


と、笑いながら殴り続けていた。

前歯が折れる。前歯が飛び散る。


「ひぃぃっ勘弁ひてくだひゃぁい」


兄は殴り終えると相手の指をつかみ1本ずつ折り始めた。


指が反対側に反れる。


ボキッ!


ボキッ!


1本の指が反対に反れるだびに鈍い音が聞こえる。


「ぎゃぁああああ」


と雄叫びをあげ泣き叫び続けていた。


周りを見渡すと、全員血まみれになり、その内のひとりは、脚を折られたのか、くの字に変な方向を向いていた。


奈々子は何の感情も示さず、ただ、それを見ていた。



高校1年になる長女の美里は、酒に溺れ、父の血を引いたのか酒を飲むと人が変わり誰彼構わず常時所持しているカミソリで襲いかかり、違う意味合いで恐れられていた。


下の妹も小学生になったばかりの末弟もやがては手に負えぬほどの不良としてその名を轟かせてゆくことになる。


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