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お礼とハンカチと王子様。

「で、かんざしさんとはどうだったんだ?」

「どうってなんの話」


 合コンが終わって次の日の朝からメガネ丸は元気だった。

 合コンへ行く前から小鳥ちゃんとは遊びに行く約束はしてたからね。だから特に変化は無い。


「王子は誰かと付き合った事無いよな」

「あるよ悪いけど」

「そうだろ、そうだろ……ある…あるってぇぇぇぇ!!」

「メガネ丸五月蝿い」


 そんなに驚くほどか?


「いや、付き合ったってもしかして……男女の?」

「それ以外の付き合いってのを私の認識では無いのだが?」

「いつ?今も続いてるのか?」

「確か高校二年の頃になっ……」


 相手は一つ上の先輩だったのだが、『一目惚れだ!付き合ってくれ』と言われて付き合い出したんだ。


 だけど恋人か?と問われると何か違う。それらしい事は何も無かった……だからあえてお付き合いしてたが正しい気がする。


 なにせ何をするにも初めてだった私は、持てる知識で色々考えたんだよね。デートと名のつく雑誌とかネットとかで片っ端から調べながらね。

 で、ある結果に行き着いた『気の使える彼女って男子は嬉しい』って総合トータルを算出すると、様々なマナーを覚えてデートの前の日まで頑張ったんだよね。

 結果私は、然り気無く車道側を歩いたり、レストランで入り口でドアを開けて待ってたり、椅子を引いて座ってもらったり……先輩の事を慮って様々なおもてなしマナーをやってさぁ先輩から『お前が格好良すぎて、俺……このままじゃ乙女になってしまう』と謎の言葉を残して喧嘩する訳でもなくただ自然消滅してしまったんだよ。


「それは王子のせいだな」

「私の何処が間違ってたんだ?気の使える彼女はダメって事なのか?」

「気が利くきかないは今回はどうでもいい。王子が参考にした物はなんだったかって話だよ」

「確か『絶体成功完全デートマニュアル!』ってのを基本ベースにした」

「やはりな……あまりにも分かりやすすぎて笑えてくる」

「……なんだよ!笑うことないじゃん……初めてだったんだから」

王子おまえ基礎ベースにしたのって男性向けのHow to本だからなぁ。しかし相手をそこまで蕩けさせるなんて本当に王子なのかもな」

「……私は間違っていたのか?」

「いや間違っちゃいないよ、釵さんとデートするなら同じ事をすれば喜んでくれるさ……きっとね」

「そう言うお前はどうなんだ?合コンで仲良さそうな女の子いただろ……ほら、女性側のリーダーっぽいの」

「あれはそんなんじゃ無いって、従姉だって。女子側はアレが首謀者の王子見学だからな!釵さんは当初は無関係だったんだぞ……それをお前がぁ」

「あれは仕方無いだろ、あの時釵さんは困ってたんだから」

「まぁいいや、今日は何か奢れよ!幸福者!」


 その日の昼休み私は、小鳥ちゃんにメールを送った。

 《こんにちは、今日の講義の最終は何時かな?》

 《メールありがとうございます王子。午後4時じゃ遅いですか?》

 《私は大丈夫です。でも予定とかあったのでは?》

 《わたしは何時でも大和さん優先ですよ。5時に国馬駅で待ち合わせでも構いませんか?》

 《宜しく。また後で会えるのを楽しみにしてるよ》




 国馬駅に着くと小鳥ちゃんが柱を背に待っていた。


「小鳥ちゃんお待たせ」

「大和さん走ってきたのですか?」


 私の汗を小鳥ちゃんがハンカチで拭き取ってくれる……折角洗濯したのを返すのにまた汚してしまっては本末転倒。


「ハンカチをまた……ごめん」

「あっ……いえ大切にしますから!」


 慌てながらも汗を拭き続けてくれるあたり小鳥ちゃんは可愛い。


「忘れないうちに」


 私は洗ってアイロンをかけたハンカチを小鳥ちゃんに手渡した。


「確かに、ありがとうございます。あら、ハンカチから薫りが……」

「えっと迷惑だった?ユーカリの薫りなんだけど」

「涼しくっていいですね。……大和さんの匂いなんだ」

「用事すんじゃいましたね」


 授業が終わったらハンカチを返しに行きたいと言ったのは私なんだけどね。


「このまま帰るのは、さみしいです大和さん」

「小鳥ちゃんはどこか行きたい場所とか希望がありませんか?」

「残念ながら土地勘が無いので何が有るのか分からないんです、わたし……だから大和さんにお任せでお願いします」


 困った私の目前にはAOEN系列のショッピングモールが見えた。

 ここなら色々楽しめそうだ。アミューズメントパークや専門雑貨もあるし、それに最上階には映画館もある。

 最近はデートに映画はなんなだか枯れてるって風潮だと耳にしてるけど、相手との共通の話題が無ければ映画を一緒に見て後で感想を話せば流れは良いと思う。ビバ定番!ビバビバ!


「小鳥ちゃん映画などいかがですか?」

「映画……って映画館でってことでしょうか?ならば是非!」


 エレベーターで最上階まで上がると溶けたバターの薫りと館内フードを宣伝する陽気な音楽と喋りで思わずポップコーンを買いに行きたくなってしまう。

 そこはこらえて、先ずは上映作品のリストを小鳥ちゃんと一緒に見る。


「たくさんやってるんですね?わたし驚きました」

「小鳥ちゃんは映画は見たいのはありましたか?」


 映画を見ようと言ったのは私だ。

 しかし、小鳥ちゃんの趣味が分からない。


「大和さんにお任せします。わたし映画館に来たのは初めてですから」


 映画館が初めてって、小鳥ちゃんって本当にお嬢様なの?




 結局私が見たかった映画にした。『スコープ』ってアクションなんだけどね。




 簡単なあらすじは、スナイパーの男が依頼を受けてスコープを覗くとアパートの隣に住む女性だった。

 初日はタイミングが悪いと依頼主に嘘をついた。

 それを不信に思った依頼主は別の暗殺者を雇いスナイパーと女性を狙うことにした。

 しかし、暗殺者はスナイパーに『女性を殺さないとお前を殺さなくては成らない』と連絡をしてきた。

 スナイパーは得意の物真似の一つ『聖徳太子』で女性を呼び出し逃亡をするが、町のヤクザや暗殺者に追われ続ける。

 だがスナイパーは手紙を潜伏先に残しておいた。

 そして、次の潜伏先の壁に小さな『K』だけが書かれていた。

 スナイパーは潜伏先に女性を残してヤクザの親分と幹部の四人を纏めて射殺をする。

 雇い主の前に現れたスナイパーは依頼を断ったが、不意をつかれて腹に銃弾を喰らってしまう。

 が、最後の力で依頼主を射殺。

 気力だけで携帯を使い女性に電話をした。

 女性が出ると聖徳太子の物真似を残してスナイパーは静かに目を閉じた場面でスタッフロール。

 スタッフロール中はNG集が入っていて楽しかった。




 ありきたりな物だったが、私の感想は『何故に聖徳太子?』だった。


 映画館フロアに隣接する喫茶コーナーで感想を話したが、聖徳太子の部分は同じなんだけど……。


「聖徳太子の物真似が似てるとかの以前に、物真似が始まるとクラクションやヘリコプターとかの音がでて折角の物真似がよく聞こえなくて残念だったわ」


 小鳥ちゃんいい娘だね。

 あとは、ウインドウショッピングを楽しみ。時計を見たらある程度良いと時間になっていた。


「名残惜しいけど帰る時間ですね」

「少しだけ寄り道したいのですがいいですか?」

「構わないよ、でも何があるんだい」

「願いの叶う階段です」


 小鳥ちゃんに引っ張られる形で来た場所には神社の境内に続くのではと思う程の長い石階段だった。


「ここです、行きましょう大和さん」


 隣を歩いていた筈の小鳥ちゃんは四・五段先を登っている。

 小鳥ちゃんは後ろを振り返りながら私がいる場所を確認している。


「大和さ~ん早く早く」


 大きく手を振った時にバランスを崩したのか私の方に倒れて来た。小鳥ちゃんの悲鳴が出る。

 私は二段飛ばして駈け上がり彼女を抱き留めた。


「やっと追い付きました……大和さんの近くにわたし」


 小鳥ちゃんの両腕が私の首の後ろに回されている。


 石階段の中腹には今の時間私達以外の人は存在しない。

 二人きりの世界だった。


 平地では気付かなかった。


 小鳥ちゃんは階段二段分高い位置にいる。


 階段二段分、私との身長差を埋まっていた。


 その距離はお互いの唇までの距離。


 その距離は……


 ゼロ。


 回りは静寂なまま。

 分かるのはお互いのぬくもり。


 ――唇が……熱い。


 スッと二人の間に隙間が出来た。


 小鳥ちゃんは片手を唇に当てて余韻に浸ってる感じだ。

 私のファーストキスだったんだよね。


「……うれしい……わたし大和さんにファーストキスを貰って頂いた……」

「小鳥ちゃんも……」


 あぁ小鳥ちゃんも初めてだったんだ。相手が女の子でも嬉しいかも。


「大和さんの唇って柔らかいんですね……男性なのに」


 ――唇、柔らかいですね……男性なのに


 ――柔らかいですね、男性なのに


 ――男性なのに


 えぇ~!!



あーたーらしーいあーさがきたー♪とはいきませんでした大和。


銃剣道を早速使ってません。


でも予定ではここまでが1話の予定でした。


でも残念ですが短冊の都市伝説が残ってますからまだ終わりません。


では、次回。

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