私たちはいつものように
これでもかと言うぐらいソフトな百合です。
「桜の花は、どうしてこんなにきれいだと思う?」
卒業式のあと私を呼び出した校舎裏で、親友はそう問いかけてきた。
これは、あれか。桜の木の下には人間の…………が云々とか、そういうやつか。
「今、死体が埋まってる、なんてこと考えたでしょ?」
私が解答を口にするより先に、彼女はそうたたみ掛けてきた。
「う……まあ、はい」
図星をつかれた私の顔を見て、親友はくすくすと笑う。
ああ、この娘の笑顔はいつ見てもきれいだなあ――――そう思うようになったのは、いつの頃からだろうか。
教室で、帰り道で、運動場で、気づけば私は、彼女を目で追うようになっていた。『好き』という気持ちはもちろんある。ただそれが、友人として好きなのか、恋人として求めているのか、ついに卒業してしまうこの日まで答えを出すことはできなかった。
「知ってる? ソメイヨシノって、全部同じ個体なんだって」
最初の質問に私が答える前に、彼女はもう次の問題に進んでしまっている。
ええと、確かその話は聞いたことがあったような…………。
現存するすべてのソメイヨシノは接ぎ木で増えた木、だとかなんとか。
「それって、なんか素敵だと思わない? 子供を作れなくても、次の世代へ残していけるモノがあるってことだよね」
それは……どういう……?
はっとして彼女の顔を見つめると、はにかんだように、頬を染めて笑っていた。
…………そっか。そういうことか。
「うん、そうだね」
答えて私は、親友へと手を伸ばす。
「帰ろうか」
彼女もまた、満面の笑みを浮かべて、私の手を取ってくれた。
桜の花吹雪が舞い散る中、いつものように私たちは手をつないで歩き出す。