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Ep2 「説明と雑談と開発者」

やっと第弐話を投稿。前送ってから約一ヶ月経ってるし・・・・・・もっと早く、そして深みのある文章が書けるようになりたいなぁと思う今日この頃。

『Ede bibe lude post mortem nulla voluptas -食べろ、飲め、遊べ、死後に快楽はなし-』



 新歴二百九十七年。

 人類が繁栄の場を宇宙に変えて、幾星霜や遥かとかいうほどではないにしろ、それなりの年月が流れしこの時代。

 人類は銀河連邦という組織を作り、発展と革新を、交流と国交を行っていた。

 しかし今から十三年前、一つの国がその銀河連邦から突然脱し、『全宇宙の制覇』を掲げ、覇道を突き進む道を選んだ。

 エルヴィニア皇国。

 九十三もの惑星を支配する、この世界最大級の巨大国家である。

 エルヴィニア皇国は、その圧倒的とも言える強大な軍事力で、目標である全宇宙の制覇を進めていた。

 無論、銀河連邦もそれを止めようと奮闘したが、長い歴史の中で腐敗していた彼らに、世界最強と謳われる超大国を止めることはできなかった。

 エルヴィニアに支配される国、エルヴィニア寄りの国も数を増していき、銀河連邦も形骸化して、もうそう遠くない内に世界がエルヴィニア一色で染められるという空気が漂い始めていたそんな時。

 そのエルヴィニアに反逆の意志を示し、討ち倒そうとした存在が現れた。

 その名はザイン。

 正体を仮面で隠し、自身を『魔龍』や『破壊と創造の化身』と謳う、長い新歴の中でも一・二を争う罪状を持つテロリストである。

 彼は、『全ての間違いを破壊し、全てを正しき形に創造する』『悪意に満ちた世界を破壊し、優しさに満ちた世界を創る』と述べ、自らが作った革命組織である"九頭龍(クトゥルー)"を率い、様々な場所でエルヴィニアに戦いを仕掛けた。

 ザインの意志に賛同した人々や組織や国は数多く、それはエルヴィニアへの反乱と反逆を――銀河全体を巻き込んでの闘争を生むことになった。

 そして彼が放った反エルヴィニアの焔は、彼が一年前にエルヴィニアに捕らえられ処刑となり、総帥を失った"九頭龍"が実質的に壊滅状態となった現時点でも未だに絶えることなく、世界を燃やし続けている――。


 以上、世界観説明終了。

 以下、この俺、天道歩の戯れた物語、本格的に開始。






                       惑星アリウム

                   エルヴィニア皇国軍インペラード基地



 エルヴィニア皇国軍インペラード基地は、ここ惑星アリウムにある基地の一つ。二十年以上前に、エルヴィニア皇国がかつてのこの星の支配者であるユートノール王国を滅ぼして領地にしてから二番目に建設した基地で、俺――天道歩の所属する第七独立機動部隊『プロドスィア』が駐留している場所だ(とは言え、これほどの年月が経った今でもユートノールの残党を主とした反抗勢力が多数残っているので、完全に統治できているとは言い難いのだが)。

 三日がかりの任務とその帰路での寄り道を終え、基地に戻ってきた俺は、鉄とオイルの匂いが入り混じる格納庫を整備班が忙しく立ち回る中、一機のエクス・マキナの正面に立って、その姿をを見上げる。

 倉庫の左から数えて七番目、本来なら雪の如き純白の体を持つそいつは、今は全身に赤黒い液体を返り血のように浴びて佇んでいた。

 デュアル・アイ式のメインカメラのすぐ上から生えている、天に逆らうかのように伸びた一本角。大きく突き出た肩と膝の攻撃的な外骨格。すらりと伸びたしなやかな四肢は、幾何学的な模様の入った分厚い手甲と脚甲を纏っている。

 ヴァルスロード。それがこのエクス・マキナの名。俺がパイロットを務めている機体にして、皇国軍の新たなる主力量産機開発を目的に立案された『NEMO計画』の第一号機、要するに試作実験機のファースト・チルドレンだ。最高級の技術が惜しむことなく投入され、現段階における人型戦闘兵器の集大成であるとさえ言われるこいつは、既存のエクス・マキナの全てを凌駕する性能値を誇っている。

 実際、大したもの、凄まじいまでのマシンポテンシャルだ。

 単純な攻撃力や機動性、防御力等も破格のレベル。はっきり言って無双の一機。これに勝てる機体など、同じNEMOシリーズ以外では存在しないだろう。そう断言できる。

「・・・・・・・・・・・・あの時、コイツに乗ってたらなぁ」

 そんな言葉が、俺の口から無意識の内に零れた。

 あの日あの時あの場所で、もしこいつに乗っていたら、俺は今頃――

「なーにが『あの時、コイツに乗ってたらなぁ』・・・何だ?」

 後ろから声がした。物思いを打ち止めし、振り向く。

「もし、初めてエクス・マキナに乗った時からコイツが乗機だったら、俺は今までの時間をもっと充実したものとして過ごせていたんじゃないかなー、ってことさ」

 俺は思っていたことをそのまま報告した。嘘だが。

「ふぅん、それは何とも残念だったねぇ、歩君」

 なんて言葉と共に、後ろから顔めがけて飛んできたドリンクのボトルをキャッチ。フタを開けて、ひんやり冷たいスポーツ飲料を飲みつつ、コレを投げてきた奴の顔――笑顔でこっちに向かってくる男の面を見つめる。

「まぁそれについては諦めるさ、時間は戻ってくれないんだしな。っていうか物を投げて渡すな、ヴィーノ」

 そう言うと、目の前のヴィーノと呼ばれた男は「あー悪ぃ悪ぃ、次から気をつけるわ、覚えてたら」と言ってケタケタ笑いながら、俺の肩をぽんぽんと叩いてきた。

 ヴィーノ・テスタロッサ。それがエルヴィニアの名門貴族であるテスタロッサ家の次男坊にして、自ら開発したヴァルスロードのパイロットに俺を選んだこの男の名だ。階級は少佐。髪の所々に入った青いメッシュと左目の眼帯が特徴的で、背は俺より一回り低く、腕や足も軍人の割にはかなり細い。筋肉など全然ついていない感じだ。正直言ってあまり軍人らしくない。着ているのも軍服ではなく研究者が着るような白衣だし(因みにヴィーノと出会ってから、俺がコイツの軍服姿を見たのは一回もない)。

「んで歩、今回でヴァルに乗って宇宙空間と地上での戦闘をやったわけだけど、それを踏まえてどうよ? うちの子は」

 わかるとは思うが、『ヴァル』とはヴァルスロードのことで、ヴィーノだけが使う呼び名だ。

「素晴らしいな。パワーも防御力もスピードも申し分ないし、何より俺の反応と操縦についてきてくれるところは満点だ」

 自分がこのヴァルスロードを一番に評価する点、それは、機体の追従性だ。

 十一歳の時に初めてエクス・マキナに乗ってから現在に至るまで、自分は様々な機体に乗った。

 世界最初のエクス・マキナで皇国軍が現在の主力機としているゲイラボル系はもちろん、ヴェルカ共和国製のテンペスト、アルタ帝国が造ったベガ・・・・・・他にも色々と乗ったが、どの機体にも通じて一つ全く同じ評価を下している。

 追従性が悪い。著しく。

 こちらは完璧や究極や最高と自負できる操縦をしようとしているのに、機体の方がそれにほとんどついてきてくれないのだ。これでは自分のパイロットとしての力量を半分も発揮できない。そのせいで、かつての自分は殺られこそしなかったし撃墜数は多かったが、反面、機体の損傷率は誰よりも高かった。

 だがしかし、このヴァルスロードに乗ってからはそうではない。

 この機体は自分の操縦に、十全と言えるくらいついてきてくれる。そのお陰で自分は敵を思う様に圧倒し、蹂躙し、倒すことができる。パイロットとして冥利に尽きると言うところだろうか。

「でもヴィーノ、ヴァルスロードのプラズマブレードのサイズ、あれはやっぱり変えてくれ。もっとデカい方が俺は使いやすい」

「あぁ、前も言ってたな、そんなこと。けどそれなら大丈夫だ。ハイドリヒ社が新型の格闘兵装を作ったらしくてさ、それ付けることにしたから」

「新型? どんなのだ、デカいのか?」

「名前はザラトゥストラ。新技術の採用で今までのどんなプラズマブレードをも凌ぐ切れ味持つんだとか。まぁザラトゥストラ自体はプラズマブレードじゃないらしいけどな。因みにサイズはクリムゾン・エッジ並。よかったじゃん、渡りに船渡りに船」

「クリムゾン・エッジ並か・・・・・・使えるのか? そんな武器」

 クリムゾン・エッジ。エクス・マキナの装備するプラズマブレードでも最大の大きさを誇るが、その巨大さ故に取り回しに大難があり、機体バランスを著しく損なわせることから試作型が何本か作られたのみで開発中止になった武装だ。使おうとしたものの、幾ら何でもデカすぎてやっぱりダメでしたなんてことになったら、目も当てられない事態受け合いだぞ。

「だからこそヴァルに使わせるんだろ」

「あぁ、なるほど・・・・・・」

 ヴァルスロードのパワーと関節の柔軟性は、既存の機体のそれを遥かに凌駕する。確かにこいつだったら・・・・・・というかこいつぐらいにしか使えないだろな、クリムゾン・エッジみたいなバカでかい武装。

「そもそもその新武器使わない+お前の希望だと、それこそクリムゾン・エッジじゃないとダメになるし」

「それもそうだな・・・・・・」

 しかし相変わらずよく動く口だ。頼んでもいない説明もとんとしてくれる、と考えながら俺はふと思い出す。

「なぁヴィーノ。前から思っていたんだが、あの戦闘前の咆哮はいらないんじゃないか?」

 実はあの咆哮、ぶっちゃけたことを言ってしまえば、こいつが機体稼働時と戦闘機動開始時に作動するようにしたプログラミングの結果であって、別に機体構造上そうなっているわけでも特別必要な物でもないのだ。なくて困る物でもないし、なくしてしまっても問題ないだろう。そう言うとヴィーノは「えー、あれがいいんじゃんよー! あの悪魔龍みたいな威圧感溢れる咆哮がさー。何か血が滾るって言うか、戦闘開始ーみたいな感じでさー。わかんねーのかなー、あのカッコ良さがー」と喚き散らし、不満そうな目で俺を見てきた。

「知るか。それはお前の勝手な好みだろうが」

「まっとりあえず、それについては置いとくとして・・・・・・」

 置いとくな。

「じゃあこっちもよろしく頼むな」

 その言葉と共に渡される、ヴァルスロードについてのチェック項目リストの山。誤魔化された気がする。俺はため息をつきながら分厚いA4用紙の束を受け取った。

(・・・・・・?)

 手渡された用紙の束を見て、俺の胸中に疑問の種が蒔かれる。

 戦闘兵器であると同時に精密機器、更には最新鋭で実験機のヴァルスロードを任されている者としては、搭乗後のこういう事後処理は当然だし(他の機体に乗った時もやったし、同僚であるゲイラボルのパイロット達もやっている)、別に苦痛なことでもないのだが、しかし・・・・・・。

「何だよ、珍しいな。いっつもカルカロザメみたいに無表情なお前がそんな怪訝そうな顔するなんて。何かあったのか?」

 カルカロザメ。惑星ホルンに生息する鮫の一種。平均的な体長は十一メートルで、体重は3500kg程度。赤い三つの眼が特徴で、高度な運動能力と知能を併せ持ち、『海の帝王』とまで呼ばれる危険な鮫だ。あの生気も感情も感じられず、さながら死人のような目を持つ生物みたいと言われたことに思うところがないわけでもないわけでもないが・・・・・・あぁ、だが確かにアレと毎朝鏡の前で見る男の顔は似ているかもしれない。

「いや、大したことじゃないんだが・・・お前、こんな大量の書類、今までどこにどうやって持ってたんだ?」

 少なくとも、先ほどまで確実に手ぶらだったはずなのだが・・・・・・それは俺の見間違いというか、幻想だったのか?

「あぁ、そのことか。うーん、それはだな・・・・・・」

 するとヴィーノは急に俺を背を向け、数秒してから――

「禁則事項だ☆」

 こちらを振り向き、ウインクまでしてほざきやがった。そんなヴィーノへの感想。嘘偽りなき本音。

「キモい。っていうか軽く引いた」

「いやー、しかしアレだね。俺はこう思うよ。歩、お前に会えて、本当に良かったよな~って」

 無視しやがった。それもごくごく自然、さもありなんな具合に。・・・まぁいいがな、どうでも、死ぬほど。

「・・・で、何で俺に会えて本当に良かったって思うんだ?」

「だってさぁー、お前がいるからこそ、乗っているからこそ、俺のヴァルはこうやって勇猛邁進に、一騎当千に、常在最強に活躍できてるわけじゃん。今まで冷や飯食らいだった開発者としては、これほど嬉しいことはないんだよねぇ。多分ヴァルもそうなんだと思うぜ、お前が乗るまで欠陥製品扱いだったわけだし。・・・・・・にしても、あぁ、もどかしいなぁ。心の底から喝采だ。お前に巡り会えて、本当に良かった。誇りに思うよ、我が親友。お前が俺の親友、そして息子の相棒で鼻も高い。まっこと素晴らしい。今こそ賛美歌を捧げるべき時だな。何せお前は俺達の福音なんだから。いやぁ、本当に――」

(あぁ、またか、この厨二は)

 自分の作品に関することで精神が最高潮に高ぶると、ヴィーノは毎回こういう風にウザい口調で語り出す。当初は『うっざぁ、こいつ・・・・・・』と若干引いていたが、まぁさすがに慣れればどうということもない。こんな具合に呆れる程度だ。

 というか俺がパイロットだろうと何だろうと、欠陥製品という点では今も変わりないと思う。パイロット的にも常識的にも。

 それに、気にする必要などないんだがなぁ・・・・・・。与えられた任務をこなすのが――この機体を使いこなすのが、今の俺の仕事なわけだし。

 と思いつつ、俺は視線をヴィーノからヴァルスロードに戻した。

 目の前で静かに立つヴァルスロード。無双の道を突き進む、白亜の魔人。隣で頼んでもいない論説をしてくれている開発者曰く、『世界初の第五世代型にして、究極最強無敵チート兵器』。

 しかし、エクス・マキナか。

 エクス・マキナ。それは究宮という辺境惑星の遺跡で発見された出土品――人型ロボットがもたらした数多のオーバーテクノロジーによって人類が造り上げた、平均十五メートルサイズの人型戦闘兵器。その戦闘能力は彼らが登場するまで使用されていた戦車や戦闘機といった兵器の数台分とも言われ、現在エルヴィニアが世界の大半を支配し、覇権を轟かせているのは、もちろん元々の国力の高さもあるが、この人型兵器をどの国よりも先んじて開発、多数を戦線に投入し、幾多の戦争を勝ち抜いたところに拠る部分が大きい。

 偶に思う。

 究宮のロボットがもたらした技術は、件のエクス・マキナを代表とする兵器群や、今を生きる俺達の日々のテクノロジーの大本となった。

 しかし幾ら何でも、オーバーテクノロジー満載のロボットが十分に解析できる状態で見つかり、様々な技術の発展と革新を促し、更にはこんなSF的なロボットが世界のあらゆる戦場で活躍することを、誰が予見しただろうか。

 またそのエクス・マキナの父祖たるロボットを作った先史文明の人類と世界は、遙か昔に起きた龍王と魔王という存在の戦いの影響で滅び去ったと言われているが、それは本当なのだろうか?

 よしんば本当だとして、その時の戦いでは龍王が勝利し彼は人類の守り神にして新たな世界や生命体の創造主となったようだが、しかしそれならば彼は今はどこにいて何をしているのだろうか?

 彼からしたら、俺達人間は、一体どんな存在なのだろうか?

 今の人類を、どんな風に見て、聞いて、感じているのだろうか?

(・・・・・・戯れ言だなぁ・・・・・・)

 途端にあほくさくなったので思考を打ち切ることにした。どうせこんなもの、どんな世界でも一つや二つや三つはある神話や御伽話の一種だ。

 あ、そうだ。丁度いいというわけではないが、今まで聞けなかったこのことを聞いてみよう。いわゆる話題変えだ。

「なぁヴィーノ。どうしてお前はいつも軍服じゃなくて白衣を着てるんだ?」

「故にこそ俺は――ん? 何、白衣?」

 そう尋ねると、ヴィーノはようやく語りを終了させ

「あぁ、それね。アレだよ、キャラ立て」

 と実にあっけらかんとした調子でヴィーノは言った。・・・・・・いや、そんな軽く言ってるけど、キャラ立てってお前・・・・・・。

「ほら、俺ってさ、何って言うかキャラ薄いじゃん。キャラ弱いじゃん。洒落た言い方したら花がないじゃん。だからさ、せめて服装でキャラを立てようかな~って思って」

「・・・キャラを立てるんだったら、口癖とかの方がわかりやすくていいんじゃないか? ほら、『やっちゃるぜ!』とか『二回死ねー!』とか『少し、頭冷やそうか・・・・・・』とか。まぁ最後のは口癖っていうよりは名(迷?)ゼリフだが、そういうのの方がインパクトはあると――」

「こんの馬鹿ヤローが!」

 殴られた。正拳突きで顔面。まぁこんな柔な細腕で殴られたところで全然痛くない、寧ろ蚊に刺された位にしか感じないのだが。

「いいか? 確かに口癖ってのはわかりやすいし即効性がある。けどなぁ、一々一々自分で口癖考えて、しかも事あるごとにそれを言うなんて怠いわ。面倒くさいわ。そんなのより、外見でキャラを立てた方がわかりやすいし面倒くさくないし真似もされにくくていいわ」

 身も蓋もない、と言うより漫画の編集者のような意見を言われてしまった。

「つーかさ、お前だってのっけから『わからない』だのと百回ほどのたまって作品世界に登場したじゃん。だったらそれに負けないよう、俺は外見でインパクトの増大を図るんだよ。だいたい俺の初登場にして物語の本格的な始まりである第一話の今回だからこそ、より一層頑張んないとな。ほら、どこぞの誰かさんも『何事も始めが肝心だから多少背伸びした方が丁度いい』って言ってたし」

 いつの間にか俺から奪ったペットボトルに口をつけながら、ヴィーノは愚痴とも揶揄とも批評ともつかぬ口調で言葉を放つ。

「・・・・・・そ、そうなのか」

「そうなんだよ。俺が軍服着ずに白衣ばっかり着てるのは、そういう涙ぐましい理由があるからなんだよ歩君。理解した? ドゥーユーアンダスターン?」

「・・・・・・あぁ、理解した」

 ――そして、その後も俺達は益体もなくどうでもいい話を続けていた(ヴィーノが定期購読している雑誌に新連載となった漫画のデキがどうだとか、つい先日あるバトル漫画の単行本数がとうとう五十巻に到達したのだが自分的にはヒロインを助け出す『救出編』までが面白かった・それで終わってた方が神作になってただとか、小さい頃読んでた童話って年取って知識ついた今読み直してみると割ととんでもない話が多かったりするよなだとか、ヴィーノの好きな女優に最近小じわが目立つようになってきただとか、最近大流行のあるアイドルグループだが四十九人もいると興味ない奴には誰が誰だかわからないよなだとか、速さはこの世の理だと思うんだよなだとか、本当に益体もないどうでもいい話だ)。

 そして、ヴィーノの速さについての持論が佳境に入ってきた頃、

「あ、そうだ」

 ポンと手を打ち、ヴィーノが話題を唐突に変えてきた。

「そういえばジェイムスが、夕方ぐらいになったら部屋に来いって言ってたぞ」

 ジェイムス。それは俺の直接の上官で、この第一三独立機動部隊プロドスィアの司令官である男の名だった。

「少佐が? 何の用で?」

「知らね。そこまでは聞いてねぇし」

「・・・・・・ふむ、わかった。じゃあ夕方ぐらいになったら行ってみる」

「おう。あ、それとさ。お前、そろそろ休暇取った方がいいんじゃね? 知ってんだぜ、今年になってからちっとも休んでないの」

「・・・なぜお前が俺の休暇事情を知っている?」

「この前、人事部の奴らと飯食ってる時に聞いたんだよ。まぁぶっちゃけ問題、お前が休もうが休まなかろうがどうでもいいんだけどさ、ヘビーローテーションのせいでヴァルに乗ってる時に支障出されても困るし。どうせしばらくの間はテストも任務もないんだから、今週か来週辺りにパーッと休み取っちまえよ? あ、里帰りとかしてもいいかもな」

「・・・・・・考えておく」

 まぁ里帰りに関しては絶対にしないだろうが。俺って帰れるような状況・・・・・・というか境遇じゃないし。たぶん休暇を取っても、日がな一日部屋に籠もって寝るか読書か壁の一点をじーっと見つめる作業をすることになるのだろう。ふむ、引き篭もりだなぁ、俺。

「よし、そんじゃ意見も聞いたし書類も渡したし雑談もしたし連絡も伝えたし・・・・・・俺そろそろ行くわ。今回の任務と戦闘で招集できたデータ解析したいし。じゃあまたな、歩」

「あぁ、またな」

 そしてお互いに背を向け合って離れ、俺は格納庫を出た。

 腹も減ってきたし、時間的にもいい頃合いだ。食堂に行こう。

 因みに、先ほどヴィーノの前でああは言ったが、本当はヴァルスロードのプラズマ・ブレードが大型になろうが新しい格闘武装が搭載されようが、別にどちらでもいい。あの意見は、何か言わないといけなさそうだったから言っただけだ。

 俺はただ、与えられた任務を、言われたようにこなせばいい。

 俺が死んで終わるまで――天道歩という存在が、跡形もなくぶっ壊れるまで。

 そう、ぶっ壊れるまで――

これにて第二話は終了。第三話も恐らくこんな感じで戦闘抜きで平凡な日常パートになるかと思われます。因みに今回、歩とヴィーノの雑談で出たマンガやアイドルグループや女優に関しては、別に自分がこれらを嫌っているから出したわけではありません。ただ、自分がそれらに対してふと思ったり常々思ってたようなことを、ほとんど感想にもならない戯れ言として書いただけです。なので批判だとかそういう思惑があったわけではなく、強いて言えば『こういう風に思ってる人間もいる』という感じで受け取ってください。何だか言い訳がましいことをウダウダと語っていますが、そこら辺はどうかご理解のほどよろしくお願いします。ですが、『速さ』に関しては、かの兄貴が言っていたように、自分もこの世の理ではないかと思っております。

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