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ロリな勇者と全身凶器  作者: V1アームロック
第1章 勇者、出発
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Intermission2 姦しさと汗臭さと

 船は航路を行く。ヒューゲントからヴァルコラキまではあと1日、決して短くは無い。

 普段ならば旅行客などで満員となるその船も、今回の乗船者はレギオンを討伐した5人しかいない。航路の安全の最終確認ということもあるが、何よりも街を救った英雄への贈り物なのだろう。

 エストとエレノア、そしてシャーロットは船室でゆっくりと時間を過ごしていた。エレノアとシャーロットは酔い止め薬のおかげか、先日のようにダウンする事は無いが、それでも不安げな表情だ。

「そういえば、領主さんに報告した時にずいぶん仲良さそうにしてたけど、何かあったの?」

 エストは気を紛らわせるためか、二人に言葉を投げる。出合った当初は酷い舌戦を繰り広げた二人がいつの間にか無邪気に笑い合うようになったのだから、それは当然の疑問だろう。

「それは偏に儂のおかげじゃの」

 二人が答えるよりも早く、船室の壁に立てかけられたマーレボルジェが答える。マーレボルジェのその回答に、エストは思わず眉間に皺を寄せる。

「……あなた、余計な事して無いわよね?」

 今にも炎を生みそうなエストに、マーレボルジェは必死に反対する。それを見かねてか、エレノアが口を開いた。

「マールの言っていることは事実ですわ。私達が船室に運ばれてから、酔い止めの魔法をかけてくださいましたの」

「それでエリーが驚いたので、マールについて説明したらすっかり気に入っちゃって……」

「そうは言ってもシャル、喋る鞘ですわよ? それに古代魔法を使いこなすとは、魔法マニアとしてはたまらないですわ」

 いつの間にか愛称で呼ぶ間柄になった二人に和やかな笑みを浮かべたエストは、そこである疑問を口にする。

「あれ? じゃあ二人は戦闘に参加できたんじゃ……」

 エストが言うと、二人は申し分けなさそうに苦い笑いを浮かべ、そしてマーレボルジェを見つめた。

「儂が止めたのじゃよ。正体の分からん相手に娘っ子が二人加わってもどうしようもない。せいぜいが囮であろう?」

 なんとも辛辣な言葉だが、エストはその行動の理由が間違いでは無い事を知っている。たしかに、あの戦場に無事な二人がいたとしても、レギオンに攻撃されるのがオチだっただろう。

「ふぅん。まぁ被害が少なかったから良いや。マール、ありがとね」

 エストの言葉に、マールはしばらく沈黙し、そしてやっと言葉を紡いだ。

「……主に感謝をされるとは思わなんだ」

「あなた私を火炎女だとしか思って無いのかしら?」

 にっこりと笑みを浮かべたまま、エストが言う。それに対して必死に否定を述べるマーレボルジェに笑みを漏らしながら、エレノアはエストに質問を行う。

「そういえば、あなたも魔法使いなのですわよね? 属性は幾つお持ちかしら?」

「ん? 私は3つ――炎と、氷と、それから治癒よ」

 エストの答えに、エレノアは小ぶりな胸を張って自慢げに自らの属性を話す。

「ほほほ! 私の勝ちですわね! 私の属性は5つ、雷と氷、土、風、そして治癒ですわ! 中でも雷と氷に関しては同年代で私にかなうものはおりませんでしたの!」

 その言葉に、エストは素直に驚愕を浮かべる。自らがそうであるように、常人が修められる属性は多くても3つ、それ以上の魔法を使用するのはある程度の才能を持つ者なのだから。錬度がどれほどなのかは気になるが、5つの属性を中級まで使いこなせれば立派に「魔法使い」を名乗れる。

「確かにこの小娘、並々ならぬ魔力を持っておる。それは儂が断言する。とはいえ、その魔力の量はその年にしては異常ぞ。なんらかの魔法具を使っておろう?」

 マーレボルジェの言葉に、エレノアは「ばれたか」とばかりに小さく舌を出してドレスの中から装飾されたネックレスを取り出す。金の鎖の先端に赤い小さな塊が据えられたそれは、光を浴びて複雑に輝いた。

「ほう、精霊結晶か。それならばその魔力量も納得よ」

 精霊結晶、それは平たく言ってしまえば魔力それ自体の結晶である。開放された魔力が精霊となってしかるべき場所に還るまでのサイクルの中間地点が、この状態なのだ。大容量の魔力タンクとしても作用し、知識を収納できるという、魔法使いにとっては喉から手が出るほど欲しい物である。

「あっ! ずるい! そんな大きな精霊結晶持ってるなら私に勝ち目なんて無いじゃない!」

「ほほほ! これは旅立ちの祝いに父上から賜ったものですわ! 精霊結晶無しでも5属性は使えましたのよ!」

 エストとエレノアはきゃあきゃあと黄色い声で騒ぐ。シャーロットはそんなやり取りを見つめ、そして吹っ切れたようにエレノアに言葉を投げた。

「ねえ、エリー。あなたはこれからどうするの?」

 シャーロットの言葉に、エレノアはわずかに口をつぐんだが、答えを導く。

「ヴァルコラキから北へ行って、魔王を討伐しますわ。それが私の、私達の目的ですから」

「その旅に、私達も加えてくれないかしら?」

 シャーロットの言葉に、エレノアは呆れたように息を吐いた。

「いまさらですの? 私はてっきり、これからの道中を一緒に往くものだと思っていましたわ」

 エレノアの言葉に、シャーロットは瞳を輝かせる。

「じゃ、じゃあ……」

「ええ。これからよろしくお願いしますわ。『勇者』」

 エレノアはにっこりと笑みを浮かべ、そう言った。


――――


 アルベルトとゴリアテは甲板に胡坐を掻きながら、鋭い眼差しで前方を警戒している。出航から既に数日、前方の警戒が彼らの主な任務であった。

「……なあ」

 ゴリアテは兜と篭手、そして具足を脱ぎ捨てて盾を傍らに放る。

「……何だ?」

 アルベルトはいつもの調子で言葉を発する。

「アンタは暇じゃないのか?」

「暇だとも」

 そう、暇なのだ。ヒューゲントを出発してからというもの、魔物の気配すら無いのだから。レギオンが海路を妨害している間に海にも魔物がはびこっていると考えていたのだが、どうやらそれは誤りだったらしい。

「というか、俺達はここにいなくても良いのではないか?」

 ゴリアテが気付いたように言うと、少しの沈黙の後、アルベルトが答える。

「……あの空間は少々居難い」

 その言葉に、ゴリアテは再び気付いたように相槌を打つと、薄く笑みを浮かべた。女三人寄れば姦しいと言う通り、彼女達の居る空間はなんとなく居心地が悪い。

「確かにその通りだ」

 そして男二人は再び海を眺める。波の音だけが、その空間を埋めていた。

「……一つ、質問して良いかな?」

 ゴリアテが目線を海に固定したままアルベルトに尋ねると、アルベルトは肯定の返事を行う。

「全身凶器のあなたは……オルヴィスティを守るために最後まで戦って、死んだと言われている。あなたはあの国が陥ちてから、いったいどこでどうやって生きてきた?」

 ゴリアテの言葉に、アルベルトは薄く笑みを浮かべるだけで、答えを言おうとはしない。やがてゴリアテも根負けしたのか、大きく息を吐いた。

「まあ、話したくない過去くらいはあるか」

 そういうと、ゴリアテは甲板に横になった。エレノアとシャーロットが旅を共にするようになった事は、彼らはまだ知らない。

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