これも冒険には違いない
冒険者への依頼は通常、冒険者組合を通じて行われている。
組合を通す事で冒険者は怪しげな依頼を避ける事が出来るし、
依頼主の方も役に立たない者を雇ってしまう危険性が減少する。
組合側も依頼主より仲介手数料が入り、運営が円滑になる。
これは基本、依頼主が例えば軍とか王国商工会のようなものであれ、
依頼と受注の流れは変わらない。原則として必ず組合を通す。
例えば護衛を請け負った冒険者達を依頼主側の商人が気に入り、
一年二年と長期間で護衛として雇い続ける場合がある。
場合によっては冒険者をやめて、そのままその商人の専属になる、
という話も時々聞くのだが、それでも冒険者組合へ筋は通す。
組合側は仲介手数料がなくなる訳で、相応の対応は必要なのだ。
冒険者資格の休止、あるいは廃業手続きを取る事になる。
◆
二つ星冒険者「月夜の焚き火」五名は今、その選択を迫られていた。
ここ半年ほどの間連続して受けている護衛の相手である商会より、
冒険者を辞めてウチの専属にならないかと声をかけられているのだ。
相手の商人は職業柄か、人当たりのいい人物である。
冒険者を単なる雇われ人として扱わず、色々配慮もしてくれていた。
金払いもいい。他の護衛をやった冒険者と比べても報酬は高かった。
冒険者は大半肉体労働と言って良い。そういつまでも続けられない。
今は五名とも二十歳前後だが、二十年後も現役でいるかは不透明。
見習いから始めていって五年目、未ださしたる活躍はしていない。
元は華々しい活躍を夢見ていたが、そんな者は一握りと理解もした。
見切りをつけて雇われるべきか否か。五名の意見は分かれた。
専属で雇われてしまえば、今よりも生活は安定するかもしれない。
護衛で数回は害獣や魔獣に襲われているが、大した怪我はまだない。
大きめの街道ばかり使用しているし、命の危険は少なかろう。
そうは言うが、雇われた場合はただ護衛していればよし、とならん。
読み書き計算は皆ある程度出来るが、取引先との駆け引きとか、
帳簿の付け方とか、品物の目利きとかを覚えていかねばダメだろう。
武器を振り回せば解決出来ていたこれまでとは全く違ってくるぞ。
なかなか意見はまとまらず、商人への回答期限を迎えてしまう。
結果「月夜の焚き火」は解散となり、三名が廃業して専属の道へ、
残り二名は一行の名前を引き継がずに冒険者を続ける事になる。
◆
廃業した三名は、商会専属の護衛として活動を開始した。
しかし、はじめての給金を受け取って少々顔をしかめる事となる。
明らかに冒険者の時よりも少ないのだ。しかし文句は言えない。
外部の者を雇うのと、いわば商会の職員への報酬は違うのだから。
そして堅実であり安全であるが、三名はそれが物足りなかった。
かつての高揚感が、日々の生活から失われてしまったのだ。
いずれ慣れるだろうと思いつつも、不満は溜まっていく。
冒険者を続ける決断をした二名の方は、と言えば。
人数が減った事により、受けられる以来の幅が狭まっていた。
当然ではある、二名より五名の方が出来る事が多いのだから。
かつての様には護衛は受けられない、受けるのならば合同だろう。
しかし、護衛を受けるような冒険者はもう既に誰かと組んでいる。
実入りは当然減った。今は町中の警邏がせいぜいである。
こちらの二名も充足感は少しずつすり減らされていく。
自分達の選択ではあるのだが。
一年後、五名は偶然別の町で遭遇した。
三名はそれなりに護衛以外の仕事も任されるようになっていたが、
別の苦労も増え、ついていた筋肉量も目に見えて落ちていた。
二名は二つ星から三つ星へと昇格していたが、活躍は聞かない。
「かねてからの活動を鑑みて」の昇格で、さほど感動はなかった。
護衛はもはや受けていない。警邏専業と化していた。
お互いがお互いを確認し、少々の会話でお互い状況を察した。
我を張って生きていくのは実に難しい。
バッドエンドとも言い切れないけど、自分でももやつく。




