告白したら『てめぇ』と返された。やはり彼女は美しい
おはよう、こんにちは、あるいはこんばんは。
もっとも、私にとっての太陽は彼女だけなので、世間一般の挨拶など何の意味もなさないのだが。
__と、挨拶は程々にして本題に入ろう。ところで、いましがた貴君らは、私が誰かであるか気になっているのではないだろうか。
私が誰であるか。単刀直入に言おう。ラブコメの主人公である。
え、どんなラブコメであるか……?
そんなもん知るか、というのが私の答えでありますゆえ、察していただこう。
そしてここからが本題だ。貴君らが最も気になっているであろうこのラブコメのヒロインについてだ。
ひとことで言うと、彼女は美しい。もう好みだ。癖だ。私は一目て魅入ったさ。こんな綺麗な女がいるとは思わなんぞなかった。
淡雪のような真っ白な肌。触れたら消えてしまいそうだと思える。そして、腰まで伸びた黒い髪がまた素晴らしい。雪を連想させる肌と相対的に深淵のような黒だ。環境光が墜ちる艷やかなその髪を手すきしたくてたまらぬ。
けして酔狂な趣味があるわけではないが、取り敢えずその黒髪を舐め回したい。
私が最も彼女の好きな部分を語ろうか。
瞳だ。瞳が好きなのだ。
硝子玉のような蒼い瞳。
それは、陽光が当たれば青空のような蒼になる。相対して行灯の明りがさせば、海のような蒼にもなる。不思議な蒼だ。
その蒼で射抜かれるたび、身の毛がよだち、全身の繊毛が震えたつ。息が荒くなり、ずっと視線を浴びていたい気分になる。
私は彼女のすべてに魅入られているのだ。
ほう。ではそんな彼女に、どうアピールするか、とな?
貴君よ、よい質問だ。
結論から言おう。私はアピールなどしない。私はそんな野暮なことなどせずとも良いのである。
ただ、日課にしていることはある。
内容は至って偏屈のない簡単な事だ。彼女と面と向かって〝愛している〟と〝結婚を前提に付き合ってほしい〟という旨を伝えることである。
その言葉を発したときの彼女の表情と言ったらたまらないのだ。
呆れ、愁眉、懊悩、諦念、それらが混ざり合わさり、飽和したような表情。然れども、その一端に僅かな愉悦が垣間見える。これがたまらぬ。
私が彼女を愛する理由?
そんなもの、語るだけ無粋というものだ。
ただ___否あの蒼を初めて見た瞬間、胸の奥で何かが軋んだのは覚えている。
あれは痛みだったのか、救いだったのか。
今となってはどうでもよいものだ。
重要なのは、あの蒼が私を現し世に引き戻したという事実のみだ。
え、ほかのヒロインがいない、と?
いるわけねぇだろが。
男たるもの___否、人間たるもの、ただ一人を愛し続けるのが道理と言うものである。
あゝ、そうだ。貴君たちに語りたい事がある。
これは私の持論であり、私の武士道であるのだが、幾分か黙って聞いてほしい。
気づくことこそ誠実である。
最近、やったらめったら知人がモテているのを目にする。女に鼻を伸ばし一人を決めるものでもなく、優柔不断なふりをする野郎。
好意に疎い奴らをみるたびに、思うのだ。
〝貴殿は心の病を患っているのか〟と。
だが違う。彼は心の病を持つわけではない。
好意を気付かないふりをしているのだ。
何ともまぁ、不誠実でかつ夢を見がちな野暮である。
私は、気付くことこそ誠実だと私は考える。
このまでで貴君らは、私の彼女への観察眼を嫌ほど見ただろう。こんなに慣れとは言わんが、多少なりとも気づくがよい。
宣言しよう。
____私はこの考えを、押しつけるさ。
◆
彼女は言った。
「てめぇの偏屈な持論ぶっ込んでんじゃねぇぞ」と。
やはり好きだ。
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