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キラキラ シンシン ヘムヘム 「冬童話2026」

作者: 月白ふゆ
掲載日:2026/01/05

キラキラ。


ひかるものは、

いつも空にあるとはかぎりません。


シンシン。


音を立てずに、

雪が、ふっています。


町は、しずかで、

夜は、やさしくて、

足あとも、すぐに消えてしまうころ。


ひとりの子どもが、

道ばたに、しゃがみこみました。


キラキラを、

さがしていたのです。


さっきまで、

ここに、あったはずでした。


小さくて、

やわらかくて、

ふっと、ひかったもの。


星ではありません。

ゆきでもありません。

宝石でも、ありません。


子どもは、

手ぶくろをぬいで、

そっと、手をひらきます。


つめたい。


ゆびが、かじかんで、

息が、白くなりました。


「……ない」


そう言いかけた、そのとき。


キラ。


ほんの、いっしゅん。


地面の上で、

光が、ゆれました。


子どもは、

見つめませんでした。


キラキラは、

見られるのが、にがてです。


追いかけられると、

すぐに、

かくれてしまいます。


だから、

子どもは、

目を、すこし、そらしました。


すると。


キラキラ。


また、ひかりました。


それは、

昼に、生まれたキラキラでした。


パン屋のおばあさんが、

「ありがとう」と言われて、

ちょっと、わらったとき。


そのとき、

こころから、こぼれたキラキラ。


昼は、

声や、音に、まぎれて、

気づかれませんでした。


でも、

夜になって、

町が、しずかになると。


キラキラは、

ここに、のこっていたのです。


そのとき。


ヘムヘム。


ちいさな音が、

雪の上から、しました。


ヘムヘム。


白くて、

まるくて、

ふわっとした、いきもの。


息をすると、

おなかが、

ふくらんで、

しぼんで。


ヘムヘムは、

キラキラのあった場所を、

ちょん、と、ゆびでさしました。


「たべても、いい?」


声は、

ささやきみたいでした。


「だめ、って言ったら?」

子どもが、聞きます。


「たべない」


「いいよ、って言ったら?」


「ゆっくり、たべる」


ヘムヘムは、

まちました。


あせりません。

とりません。


ただ、

そこに、いました。


子どもは、

すこしだけ、考えて。


「……いいよ」


そう、言いました。


ヘムヘムの目が、

キラリ、と、ひかります。


ヘムヘムは、

キラキラを、ひとつ。


かまないで、

のみこまないで。


そっと、

こころの中に、しまいました。


すると。


キラキラは、

見えなくなりました。


でも。


町は、

さっきより、

あたたかく、見えました。


雪は、

やさしく、

ひかっていました。


「どうして?」


子どもが、たずねます。


ヘムヘムは、

空を、見あげます。


シンシン。


雪が、ふっています。


「キラキラはね」


「ひかるために、

あるんじゃない」


「こころを、

あたためるために、

あるんだよ」


「じゃあ、なくなっちゃうの?」


「ちがう」


「しまわれるだけ」


そう言って、

ヘムヘムは、

まるくなりました。


ヘムヘム。

ヘムヘム。


ちいさな、ねいき。


子どもは、

しばらく、立っていました。


空には、

星が、あります。


でも、

それよりも。


むねの中が、

ぽっと、

あたたかい。


見えないけれど、

たしかに、そこに、ある。


キラキラは、

消えたのでは、ありません。


だれかの、こころから。

だれかの、こころへ。




シンシンと、

雪が、ふる夜。


キラキラは、

きょうも、

しずかに、

めぐっています。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

このお話の「キラキラ」は、

特別な力や、目に見える光ではありません。

だれかの中で生まれて、

だれにも気づかれないまま、

そっと残っていくものを思い浮かべて書きました。

冬の夜は静かで、

だからこそ、小さな気持ちがよく聞こえる気がします。

もし読み終えたあと、

胸のどこかが少しだけあたたかくなっていたら、

それが、この物語のキラキラです。

あなたの中にもしまわれた光が、

また誰かのもとへ、静かにめぐっていきますように。


月白ふゆ

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