キラキラ シンシン ヘムヘム 「冬童話2026」
キラキラ。
ひかるものは、
いつも空にあるとはかぎりません。
シンシン。
音を立てずに、
雪が、ふっています。
町は、しずかで、
夜は、やさしくて、
足あとも、すぐに消えてしまうころ。
ひとりの子どもが、
道ばたに、しゃがみこみました。
キラキラを、
さがしていたのです。
さっきまで、
ここに、あったはずでした。
小さくて、
やわらかくて、
ふっと、ひかったもの。
星ではありません。
ゆきでもありません。
宝石でも、ありません。
子どもは、
手ぶくろをぬいで、
そっと、手をひらきます。
つめたい。
ゆびが、かじかんで、
息が、白くなりました。
「……ない」
そう言いかけた、そのとき。
キラ。
ほんの、いっしゅん。
地面の上で、
光が、ゆれました。
子どもは、
見つめませんでした。
キラキラは、
見られるのが、にがてです。
追いかけられると、
すぐに、
かくれてしまいます。
だから、
子どもは、
目を、すこし、そらしました。
すると。
キラキラ。
また、ひかりました。
それは、
昼に、生まれたキラキラでした。
パン屋のおばあさんが、
「ありがとう」と言われて、
ちょっと、わらったとき。
そのとき、
こころから、こぼれたキラキラ。
昼は、
声や、音に、まぎれて、
気づかれませんでした。
でも、
夜になって、
町が、しずかになると。
キラキラは、
ここに、のこっていたのです。
そのとき。
ヘムヘム。
ちいさな音が、
雪の上から、しました。
ヘムヘム。
白くて、
まるくて、
ふわっとした、いきもの。
息をすると、
おなかが、
ふくらんで、
しぼんで。
ヘムヘムは、
キラキラのあった場所を、
ちょん、と、ゆびでさしました。
「たべても、いい?」
声は、
ささやきみたいでした。
「だめ、って言ったら?」
子どもが、聞きます。
「たべない」
「いいよ、って言ったら?」
「ゆっくり、たべる」
ヘムヘムは、
まちました。
あせりません。
とりません。
ただ、
そこに、いました。
子どもは、
すこしだけ、考えて。
「……いいよ」
そう、言いました。
ヘムヘムの目が、
キラリ、と、ひかります。
ヘムヘムは、
キラキラを、ひとつ。
かまないで、
のみこまないで。
そっと、
こころの中に、しまいました。
すると。
キラキラは、
見えなくなりました。
でも。
町は、
さっきより、
あたたかく、見えました。
雪は、
やさしく、
ひかっていました。
「どうして?」
子どもが、たずねます。
ヘムヘムは、
空を、見あげます。
シンシン。
雪が、ふっています。
「キラキラはね」
「ひかるために、
あるんじゃない」
「こころを、
あたためるために、
あるんだよ」
「じゃあ、なくなっちゃうの?」
「ちがう」
「しまわれるだけ」
そう言って、
ヘムヘムは、
まるくなりました。
ヘムヘム。
ヘムヘム。
ちいさな、ねいき。
子どもは、
しばらく、立っていました。
空には、
星が、あります。
でも、
それよりも。
むねの中が、
ぽっと、
あたたかい。
見えないけれど、
たしかに、そこに、ある。
キラキラは、
消えたのでは、ありません。
だれかの、こころから。
だれかの、こころへ。
シンシンと、
雪が、ふる夜。
キラキラは、
きょうも、
しずかに、
めぐっています。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
このお話の「キラキラ」は、
特別な力や、目に見える光ではありません。
だれかの中で生まれて、
だれにも気づかれないまま、
そっと残っていくものを思い浮かべて書きました。
冬の夜は静かで、
だからこそ、小さな気持ちがよく聞こえる気がします。
もし読み終えたあと、
胸のどこかが少しだけあたたかくなっていたら、
それが、この物語のキラキラです。
あなたの中にもしまわれた光が、
また誰かのもとへ、静かにめぐっていきますように。
月白ふゆ




