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男子校女装化計画!?〜廃校危機を救う奇跡の文化祭大作戦〜  作者: ほしみん


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第5話 まさかの女装プロジェクト発動!

 翌日の放課後、生徒会室で委員長が作戦を説明していた。


「まず、なぜこの計画が必要なのか、改めて認識合わせから行いましょう」


 委員長がホワイトボードの前に立つ。


「現在音光学園は、定員割れをしていて、もっと人に入ってもらわないといけません。


 しかし現状音光学園に応募するだけの理由を我々は提供できていません。


 そこで、思い切った方法に出る必要があります。それは、文化祭の期間のみ、我々は男子校であるにもかかわらず女子校を演出して、SNSなどのメディアを利用して一般への知名度を爆上げする、というアプローチをとることとなりました。


 そのためには、我々は完璧な『女子校』を演出しなければなりません。そのためには、女装技術だけでなく、女性としての立ち振る舞い、話し方、日常動作まで、すべてを完璧にマスターする必要があります」


 一同、おおおおと唸る。


「何を持って成功とするか?それは、メディアの取材に対して誰からも中途半端ではない本気の完璧な『女子校』を披露することです」


 委員長が小型のビデオカメラを取り出して、何気なく録画を開始する。


「随分ハードル高いな……」


 美月が呟く。


「では、具体的にどう段階を踏んで実現するのか。この計画には5つの段階があります」


 委員長がホワイトボードに図を描きながら、カメラは会議の様子を記録し続けている。


 美月が気づく。


「おい、何撮ってるんだよ?」


「あ、これですか?」


 委員長がカメラを軽く持ち上げる。


「会議の記録です。後で振り返る時に便利ですから」


「記録って……」


「プロジェクトの進捗管理のためです。それに、計画が成功した時の証拠にもなりますし」


 委員長は何でもないことのように答えて、再びホワイトボードに向かう。


 カメラは淡々と会議を記録し続けていた。


「第1段階:美月君が女装技術を習得」

「第2段階:1ヶ月間のモデルケース実施」

「第3段階:クラスメートに真相を明かし計画を練る」

「第4段階:学校全体に展開し一丸となって取り組む」

「第5段階:文化祭本番」


「随分段階区切るんだなぁ」


「ええ、今回は前代未聞の試みになりますから検証と準備に時間をかけたほうがいい、という判断です。


 さて──」


 委員長が振り返って一同を見渡す。


「なぜこの順番なのか、早速説明しましょう」


「まず第1段階。美月君の女装技術習得です。これは最も重要な基礎作りで、いきなり大勢の前で女装しても必ずバレます」


 美月が手を上げる。


「ちょっと待てよ。具体的にどのレベルまで?」


「答えは簡単。『誰も男だと気づかないレベル』です」


 一同がざわめく。


「第2段階は実践テスト。美月君に実際に学校生活で『女子生徒』として過ごしてもらいます。机上の空論では見えない課題を洗い出し、計画の実現可能性を判断します」


「なんで最初からクラス全体に話さないんですか?いきなり騙すのは……」


「第3段階で答えが分かります。クラスメートへの真相公開です。なぜクラスから始めるのか?最も身近で美月君を知っている人たちが納得すれば、女装のクオリティや面白さに関する説得力が生まれるからです。ここで失敗すれば計画は頓挫します」


「確かに、段階を踏まないと大混乱かもなぁ」


「第4段階は全校展開。クラスでの成功事例をもとに、全校生徒が一丸となって『女子校』を演出する体制を構築します。ここまで来れば、もう後戻りはできません」


 委員長の声に緊張感が漂う。


「そして第5段階、文化祭本番。これまでの準備が全て試される瞬間です。メディアの取材に対して、誰一人として疑わない完璧な『女子校』を披露し、世間の話題を総なめして、学校の存続を勝ち取るのです」


 美月が眉をひそめる。


「そもそもなんで俺が最初なんだよ……」


「君の容姿が最も適しているからです」


 委員長が美月をじっと見つめる。


「正直に言いますが、この学校で最も女性らしい特徴を持っているのは君です。骨格が華奢で、顔立ちも整っている。声質も高めで、女性的な話し方を身につければ十分に通用するでしょう」


 美月は鏡を見るように自分の顔を触ってみる。確かに、クラスの他の男子と比べると、自分は線が細い方だった。


「それに、君には演技の素質があるはずです」


「演技って……俺は演劇部じゃないぞ」


「いえ、違います。もっと根本的な演技力です。美月くんはわかってるでしょう?」


 委員長の意味深な言葉に、美月の顔が強張る。まさか、あのことを知っているのだろうか。


「とにかく、君以外にこの計画を成功させられる人はいません。学校の命運がかかっているんです」


 美月は天井を見上げて深いため息をつく。


「……やるしかないってことか」


「美月……」


「──しゃーない」


 美月は自分に言い聞かせるように呟いた。


「わかった。やってやる」


 委員長が続ける。


「まず1ヶ月で女装や女性の過ごし方を学んでください」


 委員長が手帳を開いて達成要件を読み上げる。


「基本的なメイク技術の習得」

「女性らしい立ち振る舞いの習得」

「制服の着こなしと歩き方の練習」

「声のトーン調整」

「女性特有の日常動作の理解」

「そして最も重要なのは、1日中バレずに過ごせること」


 美月の顔がどんどん青ざめていく。


「ちなみに、この計画が成功すれば、君は学校の救世主として歴史に名を刻むことになります」


「別に名前を残したいわけじゃないんだが……」


「さらに、この経験は将来にも役立つはずです。女性の気持ちを理解できる男性は非常に貴重ですから」


 委員長の言葉に、美月は少し考え込む。確かに女性の苦労を実際に体験できる機会なんて、普通の人生では絶対にない。


「ところで、君にはお姉さんがいましたね」


 委員長が資料を取り出す。


「桜井美桜さん。19歳、美容系専門学校生。地元ファッション雑誌のモデル経験もある。美容とファッションのプロフェッショナルです」


 美月の目が点になる。


「え?どこでそんな情報を……」


「プロジェクト戦略の基本は事前調査です。彼女なら間違いなくプロ級の技術を持っています」


 委員長が美月を見つめる。


「美桜さんに協力を仰ぎましょう」


 美月の顔が青ざめた。


「姉ちゃんに女装の話をするって……それなんて羞恥プレイ?」


「大丈夫です。彼女も学校の危機を知れば、きっと協力してくれるんじゃないでしょうか」


 委員長が資料を見せる。そこには美桜がローカル雑誌に掲載された記事があった。


「『地元の美少女モデル』として紹介されています。技術は間違いなくプロ級です」


 美月は観念した。確かに美桜以外に頼れる人はいない。


「わかったよ……この話俺からするのか?」


「それとも僕も同席したほうがいいですか?」


 美月はしばらく迷ったが、覚悟を決めた。


「俺がやる。俺から話すよ」


「正直に話すのが一番です。学校の危機、計画の内容、そして君の決意を」


 ◆


 その夜、美月は重い足取りで帰宅した。


 夕食中、美月は箸を持つ手が震えていた。美桜にどう切り出すか、頭の中で何度もシミュレーションを繰り返している。


「美月、さっきから一口も食べてないじゃない」


 母親が心配そうに声をかける。


「え?あ、ちょっと学校のことで……」


「何かあったの?」


 美月は慌てて首を振る。この計画は絶対に家族には話せない。


「大したことじゃないよ」


(大したことしかないんだけど……)


 美月は内心で苦笑いしながら、恐る恐る美桜の方を見た。




 夕食後、美桜の部屋をノックする。


「姉ちゃん、ちょっと話があるんだ……」


「どうしたの?改まって」


 美月は深呼吸して事情を説明した。学校の危機、理事長の絶望、委員長の計画、そして自分の役割を。


「……というわけで、学校を救うために女装することになったんだ」


 美桜は一瞬固まった後、腹を抱えて大爆笑した。


「あっはっは!なにその高校の、馬鹿げた状況!馬鹿げた作戦!そして極めつけは美月が女装!?」


「笑うな!真面目な話なんだから!」


 美桜は床をのたうち回る。そして勢い余って、足の小指をタンスの角にぶつけて悶絶する。


「あだだだだ……でも、あははは……美月が女装って……あたたた」


 痛みで涙目になりながらも、まだ笑いが止まらない美桜。


「おい、大丈夫か?」


 美月が心配になって近づくと、美桜は涙を拭きながら言った。


「ごめん、ごめん。でもあまりにも……ぷっ……」


 痛みが落ち着いたのか、美桜は涙を拭きながら立ち上がる。


「でも面白そうじゃない。私はメイクや衣装には自信があるの。プロデュースしてあげる」


「え?マジで、手伝ってくれるの?」


「当たり前でしょ。弟が可愛い女の子になるのよ?こんなチャンス、一生に一度よ!」


 美桜の目がキラキラと輝いている。完全に趣味の世界に入ってしまった。


「でも本当に大丈夫なのか?バレたら……」


「任せなさい。私がプロデュースすれば、絶対に完璧な女の子にしてあげる」


 美桜が親指を立てて自信満々に言った。


 美月は複雑な表情をした。頼もしいようで、不安でもある。


「明日から地獄が始まるのか……」


 美月は天井を見上げながら、長いため息をついた。

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