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男子校女装化計画!?〜廃校危機を救う奇跡の文化祭大作戦〜  作者: ほしみん


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第50話 とある姉弟の文化祭:革命のバラ

 体育館の入口。


 すでに行列ができていた。


 多くの観客が、開演を待っている。


「大人気だね……」


 まりあが呟く。


 三人も、列に並んで待った。


 やがて、扉が開く。


 演劇の受付で、パンフレットを受け取った。


 まりあは、すぐにページを開く。


『演劇部公演 歌劇「革命のバラ」』


「歌劇だって!」


 ミクが覗き込む。


「あらすじは……」


 まりあが読み始める。


『18世紀フランス。華やかな宮廷を舞台に、近衛隊長オスカルと王妃マリーの運命を描く、革命期の愛と別れの物語』


 のえるが、パンフレットの写真を見る。


 写真には、タキシード姿の生徒と、ドレス姿の月美。


「月美ちゃんが王妃役!」


 まりあが興奮する。


「男役がいる……でも、男子が男役をそのままやるってことはきっとないのよね?」


 ミクが考え込む。


 のえるが、静かに言った。


「……男子が、女装して、さらに男役を演じる……」


「ってことなのかな……複雑」


 まりあは、息を呑んだ。


 ◆


 三人は、席を探した。


 中央やや後ろの席に座る。


「見やすい席ゲット!やったぁ!」


 まりあが言った。


 開演前の雰囲気。


 観客席は、満席だ。


 ざわざわとした声。


 まりあは、パンフレットを読み返している。


「キャスト、全部で20人以上いる……登場人物は男性も女性もいる」


「これみんな男子生徒なんだよね……」


 ミクが呟く。


「……すごいな」


 のえるも感心している。


 ◆


「まもなく開演いたします」


 アナウンスが流れる。


 照明が暗くなる。


 観客、静まり返る。


 まりあは、ドキドキしながら待った。


 厳かなオーケストラが流れる。


 幕が上がる。


 ステージには、豪華なセット。


 宮廷の大広間。シャンデリア、大理石の柱、豪華な階段。


 スポットライト。


 侍女たちが、優雅に舞台に登場する。


 全員、華やかなドレス姿。


 まりあは、思わず息を呑んだ。


(本格的……!)


 音楽が高まる。


 階段の上から、一人の人物が現れた。


 近衛隊長オスカルだ。


 白い軍服。金のエポレット。剣を腰に下げて。


 背が高く、凛々しい立ち姿。


 堂々とした歩き方で、階段を降りてくる。


 その姿はまさに『女性が男装している』姿だ。


 のえるは、息を呑んだ。


(男子生徒が、女装して、さらに男役を演じている……)


(三重構造……)


 次に、王妃マリーが登場した。


 月美だ。


 金色のドレス。ティアラが輝いている。その姿は華やかで可憐。


 優雅にステージ中央へ歩いてくる。


(月美ちゃん……綺麗……)


 ◆


 第一幕。


 宮廷の舞踏会シーン。


 オスカル役の生徒が、月美に近づく。


「王妃様……本日も、お美しい」


 オスカル役の声は、低く、男性的だ。


 月美が、一瞬、頬を染める。


 しかし、すぐに表情を整える。


「オスカル……近衛隊長として、いつも私を守ってくれますわね」


 月美の声には、距離を置く響きがある。


 舞台が暗転する。


 スポットライトが、月美だけを照らす。


 月美が、観客に向き直る。


「私は王妃……個人の感情など……抱いてはならないのです」


 月美の声が、切なく響く。


 再び暗転。


 明るくなると、元の舞台に戻る。


 月美の表情が、凛とする。


 オスカル役が、膝をつく。


「命に代えても、お守りいたします」


 再び舞台が暗転する。


 スポットライトが、オスカル役だけを照らす。


 オスカル役が、立ち上がり、観客に向く。


「この想い……決して口にすることはできない……」


 オスカル役の声が、苦しげに響く。


 再び暗転。


 明るくなると、元の舞台に戻る。


 オスカル役が、顔を伏せる。


 二人の間に、張り詰めた空気。


 観客、息を呑む。


 音楽が流れ始めた。


 デュエットダンス。


 二人、ステージ中央で踊る。


 オスカル役が、月美をリードする。


 月美が、優雅に回る。


 リフト。


 オスカル役が月美を持ち上げる。


 観客から、小さな拍手。


 息の合った動き。


「すごい……」


 まりあが小声で言った。


 ミクも頷く。


 のえるは、真剣に見ている。


 ◆


 第二幕。


 革命の嵐が近づく。民衆が集まり抗議集会をおこなっている。


 民衆たちのオペラ風合唱が響く。

「自由を!」

「平等を!」

 力強い歌声。


 舞台が暗転する。


 ◆


 再び明るくなると、宮廷。


 遠くから、群衆の怒号が聞こえる。


 オスカル役と月美、向き合っている。


「マリー様!もう時間がありません!」


 オスカル役が、必死に訴える。


「革命軍は、今夜、宮廷に迫ります」


 月美が、窓の外を見る。


「捕まれば……処刑されます」


 オスカル役の声が、震える。


「他国へ……今すぐ亡命を!これが……これが本当に最後のチャンスです」


 オスカル役が、月美の手を取る。


 月美が、ゆっくりと首を横に振る。


「いいえ、オスカル。王妃たるもの、国を離れるわけにはいきません」


 月美の声は、凛としている。


 オスカル役が、苦しそうに月美を見つめる。


「死を……選ばれるのですか……!」


 オスカル役が、絞り出すように言う。


「民が苦しんでいるのです……」


「私だけが逃げるなど……できません」


 月美が、静かに微笑む。


「これは……私の責務です」


 オスカル役、膝をつく。


 沈黙。


 ◆


 遠くから、革命軍の足音。


 時が迫っている。


 オスカル役が、決意を込めて月美を見る。


「マリー様……申し上げねばならぬことがあります」


 月美が、静かに待つ。


「私は……ずっと……あなたを……」


 オスカル役が、言葉を探す。


「お慕いしておりました」


 観客、息を呑む。


 月美が、目を見開く。


「オスカル……私は王妃。あなたの気持ちに応えることはできません」


「……」


「ですが──」


 ごくりと生唾を飲む。


「最初で……最後です」


 オスカル役が、月美に近づく。


 そして、そっと口づけをする。


 スポットライトが二人を照らす。


 月美が、一瞬だけ目を閉じる。


(気づかぬふりをしていたけれど……)


 月美の表情が、柔らかくなる。


 音楽が、切なく響く。


 まりあの目から、涙がこぼれた。


 ◆


 第三幕。


 革命軍が宮廷に迫る。


 オスカル役が、剣を抜く。


「マリー様を……お守りします」


 月美が、叫ぶ。


「オスカル、行かないで!」


「これが、私の使命です」


 オスカル役が、振り返らずに戦場へ向かう。


 アクションシーン。


 オスカル役が、敵と戦う。


 剣を振るう動き。


 回転、ジャンプ。


 観客、固唾を呑んで見守る。


 月美は、後ろで祈るように見守る。


 オスカル役が、最後の敵を倒す。


 しかし、致命傷を負っている。


 オスカル役が、崩れ落ちる。


「オスカル!」


 月美が駆け寄る。


 オスカル役を抱きしめる。


「マリー様……あなたは……生きて……」


「いいえ!あなたなしでは……!」


 月美が、涙を流す。


 オスカル役が、微笑む。


「あなたに……会えて……幸せでした……」


 オスカル役が、静かに息を引き取る。


 月美が、悲痛な叫びを上げる。


「オスカルーーーっ!」


 音楽が、悲しいメロディに変わる。


 まりあの涙が、止まらない。


 ◆


 終幕。


 舞台が暗転する。


 再び明るくなると、牢獄のシーン。


 月美が、質素な服装で座っている。


 看守が告げる。


「明日、断頭台へ」


 月美が、静かに頷く。


 舞台が暗転し、再び明るくなる。


 断頭台。


 月美が、中央に立っている。


 群衆がざわめく。


 月美が、空を見上げる。


 そして、静かに歌い始める。


「ああ……オスカル……あなたが守ろうとした……この命……

 今……終わろうとしている……


 でも……後悔はない……

 あなたに出会えたから……

 あなたの想いを……知ることができたから……


 私も……ずっと……

 あなたを……」


 月美が、涙を流す。


「愛していました……」


 観客、息を呑む。


「天国で……待っていてください……

 今度は……王妃ではなく……

 ただの女として……あなたの隣に……」


 月美の歌声が、会場に満ちる。


 美しく、切ない歌声。


 観客、涙を拭う人も。


 まりあも、号泣している。


 月美が、最後に微笑む。


「さようなら……オスカル……

 また……会いましょう……」


 舞台が、ゆっくりと暗転する。


 静寂。


 断頭台の刃が落ちる音、赤いライトで舞台全体が真っ赤に染まり、そして再び暗転した。


 ◆


 数秒の静寂の後。


 静かな音楽が流れ始める。


 幕が上がる。


 全キャスト、黒い喪服で整列している。


 オスカル役と月美、中央へ。


 二人、手を繋いで前に出る。


 静かに一礼。


 観客から、静かな拍手。


 やがて、拍手が大きくなる。


 拍手喝采。


 観客、総立ち。


 まりあ、ミク、のえるも、立って拍手した。


「すごかった……!」


 まりあが叫ぶ。


「本当に!」


 ミクも興奮している。


 のえるも無言で頷いた。


 まりあは、涙を拭いながら拍手し続けた。


 ◆


 幕が再び上がる。


 カーテンコール。


 キャスト全員、一礼。


 オスカル役と月美、前に出て一礼。


 拍手、鳴り止まない。


 何度も幕が上がり、カーテンコール。


 ◆


 三人は、体育館を出た。


 しばらく、誰も何も言えなかった。


 まりあが、涙を拭いながら言う。


「マリーが……最後に愛を告白したところ……」


「『ただの女として、あなたの隣に』って……」


 まりあの声が、震える。


「切なくて……切なくて……」


 ミクも、涙ぐんでいる。


「オスカルが、口づけしたときも……」


「『最初で最後です』って……」


 ミクが、ハンカチで目を拭く。


 のえるも、静かに言った。


「……二人とも、想い合っていたのに……」


「立場が……許さなかった」


 三人、しばらく沈黙する。


 まりあが、ふと我に返る。


「……でも、すごいよね」


「あれを……男子生徒が演じてたんだよね」


 ミクが、驚いたように言う。


「そうだよ……月美ちゃん、あんな切ない歌を……」


「男役の人も、あんなに凛々しくて……」


 のえるが、感嘆の声を漏らす。


「しかも男子が、女装して、さらに男役を演じてこれだろ?音光すごすぎるだろ」


 ◆


 三人が、校内を歩いていると。


「すみません!」


 声がかかった。


 振り向くと、カメラクルーと美咲レポーター。


「あ、美咲ちゃん!」


 まりあが驚く。


「プロジェクトχの人だ!」


 ミクも気づいた。


 美咲が、笑顔で近づいてくる。


「少しインタビューいいですか?」


「はい!」


 まりあが答える。


 カメラが回り始めた。


「どうですか?音光学園の文化祭は?」


「すごいです!本当に『ほしみのひみつ』の世界みたいで!」


 まりあが答える。


「そう、『ほしみのひみつ』のような世界、なんですよね。みなさんは音光学園のひみつには気づきましたか?」


「はい!秘密も解明済みです」


「あら!こんなにすぐに答えられた方は初めてです!」


 美咲が驚く。


「それはどんな秘密でしたか?どうやって気づきましたか?」


 のえるは答える。


「音光学園は、『ほしみのひみつ』の舞台なんです。むしろ、『ほしみのひみつ』自体が音光学園から生まれたと言ってもいいでしょう」


「うんうん」


 美咲は先を促す。


「本当に女装して生活を送っていた月美さん。それをモデルにして生まれたのが『ほしみのひみつ』のほしみ。そして、今音光学園は月美さんの女装を参考に全員が女装をしているとのことです。つまり」


「つまり?」


「音光学園男子校の男子生徒全員が女装をして、女子校としてこの文化祭を開催している、それがひみつです」


 美咲が感心する。


「素晴らしい!完璧です。よく気づかれましたね。どうやって気づかれたんです?」


「実は俺は確か、文化祭開催50日前くらいに気づきました。『ほしみのひみつ』のコラボをしている商店街。そこで売り子をしている音光学園の女生徒たち。なのに、音光学園は男子校。

 そもそも、なぜ音光学園と『ほしみのひみつ』はコラボしている?舞台が音光商店街だから?違う。

 ほしみは『女装した男子高校生』すなわち、男子校の音光学園が、ほしみの舞台だって気づいたんです」


 力説するのえるに、ぽかんとした顔で見るまりあ。


「あんたすごいわね」


「よくあちこちに散った情報からここまで推察されましたね。素晴らしいです」


「違うんです」


「え?」


 美咲は予想外の解答に思わず聞き返す。


「ここまで完璧な仕掛けをつくった音光学園の仕掛け人がすごいんです。このことに気づいたとき俺は打ち震えました」


「カット!」


 カメラが止まる。


「緊張した……」


 まりあが言う。


「あたしたち、テレビに映るかな?」


 ミクが聞く。


「……どうだろうな」


 のえるが答えた。


 美咲はそんな三人を微笑ましく見ていた


「ここまでたどり着いたあなたにご褒美の追加情報です」


 きょとんとする、のえる。


「この仕掛け人は、一人の音光学園の現役高校生です」


 は!?


 のえるが、声を上げそうになる。


 まりあとミクも、固まっている。


「高校生……?」


 まりあが、小さく呟く。


「あの……これだけの複雑な仕掛けを……え?出版社さんやMHKさんを巻き込んでるわけですよね。それを、高校生が……?」


 ミクも信じられない様子。


 のえるは、頭の中で情報を整理しようとした。


(高校生……一人で……SNS戦略、漫画コラボ、商店街との連携……全部……一人で……?)


 美咲が、微笑む。


「詳しくは、これからのお楽しみです♪」


 三人は、顔を見合わせた。


 まだ、何かある。


 この文化祭は、まだ終わっていない。


 のえるは、胸の高鳴りを感じた。


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