第47話 とある姉弟の100日間:白状
予告編が投下された翌日。
9日前の朝。
のえるは部屋でスマホを見ていた。
@oto_fesの投稿。
『あと9日』
カウントダウンが進んでいる。
リビングから、まりあの声が聞こえた。
「のえる!ねえ、これ見て!」
まりあは興奮している。
「どうした?」
のえるは落ち着いて聞いた。
「巨大掲示板で昨日のプロジェクトχのスレッド見つけたんだけど……」
まりあはタブレットを見せてきた。
【速報】プロジェクトχ×ほしみのひみつ×音光学園文化祭 予告編キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
(昨日の夜俺が見たスレッドだ)
「読んでたら……こんなこと書いてあって……」
まりあはスクロールする。
────────────────
11: 名無しさん@お腹いっぱい。
待って
ほしみのひみつって女装の話だよな...
14: 名無しさん@お腹いっぱい。
男子校に女子が転校→実は女装
これがほしみのひみつの設定
15: 名無しさん@お腹いっぱい。
音光学園も同じってこと!?
────────────────
「え……え!?」
まりあの顔が真っ青になっている。
「女装……?まさか……でも……」
まりあは独り言を言っている。
「『ほしみのひみつ』の設定と完全に一致してる……予告編、確かに男子校って言ってた……でも女子しか映ってない……」
「えええええ!?」
まりあは叫んだ。
のえるは冷静に見ていた。
まりあは振り向いた。
「のえる!これ見て!」
タブレットを見せる。
「音光学園の生徒たち、女装じゃないかって!『ほしみのひみつ』と同じだって!」
「……へえ」
のえるは冷静に答えた。
「え、のえる、反応薄くない!?」
まりあは不思議そうにのえるを見た。
「これ、すごいことじゃない!?」
「……所詮憶測だろ?」
のえるは答えた。
「でも、説明つくよね!?」
「……文化祭で分かるでしょ」
「……のえる、なんか変」
まりあは首を傾げた。
「私がこんなに騒いでるのに」
「……」
のえるは何も言わずに部屋に戻った。
まりあは不思議そうにのえるを見ていた。
◆
8日前の夜。
まりあは部屋でミクとビデオ通話をしていた。
「ミクちゃん、2ちゃんねる見た!?」
「見た見た!女装説すごいよね!」
ミクの声。
「本当に女装だったら、歴史的イベントだよね!」
「でも、本当かな……?」
「わからない……でも、説明つくよね」
リビング。
のえるはゲームをしていた。
まりあの部屋から聞こえる興奮した声。
(姉ちゃん、だいぶ真実に近づいたようだな。確証ないみたいだけど。ま、俺は、もう知ってるけどな)
のえるはゲームを続けた。
◆
7日前の夕方リビング。
まりあとのえる、テレビを見ている。
まりあは横目でのえるを見た。
「ねえ、のえる」
「なに?」
のえるは答えた。
「あんた、本当に何も知らないの?」
「……は?」
「女装説が出てから、ずっと妙に冷静なのよ。私とミクちゃんがあんなに盛り上がってるのに。まるで、答えを知ってるみたいに」
(姉ちゃん、鋭い……)
のえるは思った。
「なんで俺が知ってるんだよ。姉ちゃんが知らないのに俺が知るわけ無いじゃん」
のえるは答えた。
「いやそうだけど……それにしたって、あんた、興味なさすぎ」
「興味ないのは前からだろ」
「いや、あんた途中から食いつくように見てたわよ」
「……まあ、文化祭で分かるんじゃねーの?」
「……」
まりあは何も言わなかった。
でも、ジト目でのえるを見ている。
のえるはそっと顔を背けた。
◆
5日前、夕食後のリビング。
まりあは、のえるの正面に座った。
「のえる、ちゃんと答えて」
「……なに?」
のえるは答えた。
「商店街に行ったとき、何かあったの?」
「!」
のえるは動揺した。
「……別に何もないよ」
のえるは答えた。
「嘘。あんた、あの日から様子がおかしい」
まりあは言った。
「何か見たの?誰かに会ったの?」
「……」
のえるは答えなかった。
「月美ちゃんに会ったの?」
「!!」
のえるは動揺した。
「やっぱり!」
まりあは確信した。
「……」
のえるは何も言わない。
「月美ちゃんに会って、何か気づいたのね」
「それで、確信したの?」
「……」
「教えてよ!」
「……言えない」
のえるは答えた。
「なんで!?」
「……約束したから」
「約束?」
まりあは首を傾げた。
「……」
のえるは何も言わなかった。
まりあはため息をついた。
「のえる……」
でも、それ以上は聞かなかった。
◆
3日前の深夜。
のえるは部屋のベッドに座っていた。
ドアをノックする音。
「……誰?」
「あたし。入るわよ」
まりあの声。
ドアが開いた。
まりあが入ってきた。
部屋の明かりをつける。
「のえる、最後に聞くわ」
まりあは真剣な顔だった。
「本当に、月美ちゃんは女装なの?」
「……」
のえるは答えなかった。
「何か確信したんでしょ?」
「教えて。お願い」
まりあは真剣な表情だった。
「……」
のえるは黙っていた。
(月美さんと約束した……でも、姉ちゃん、もう気づいてるしな……
文化祭まであと3日……もうどうせ、公開されるんだ……もう、いいかな……)
のえるは息を吐いた。
「……本当だよ」
「え?」
「月美さんは女装。本当だった」
「!!!」
まりあは固まった。
「姉ちゃんとミクさんと商店街行ったあと、実は別の日にもう一度商店街に行ったんだ。そこで──
月美さんに会った。最初、女の子だと思ったんだよ。でも……男の声だった」
「……え……」
「『もしかして……音光学園って、本当に「ほしみのひみつ」の通りなんですか?』ってきいたら、『秘密にしてね』って言われたんだ。だから、言えなかったよ。悪かったな」
まりあは固まっていた。
「……マジで……?」
「うん。マジ」
のえるは答えた。
「月美ちゃん……男の子……?」
「ああ」
「じゃあ、予告編のあの女の子たちは……」
「全部、男子だと思う」
「……」
まりあは呆然としていた。
数秒の沈黙。
そして。
「え!?え!?え!?」
まりあは叫んだ。
「本当に!?本当に女装!?」
「うん」
のえるは答えた。
「『ほしみのひみつ』と同じ!?」
「そう」
「すごい!すごすぎる!」
まりあは興奮している。
「文化祭、絶対行く!ミクちゃんにも教えなきゃ!」
「……姉ちゃん、落ち着いて」
のえるは言った。
まりあは興奮して部屋を出て行った。
のえるはため息をついた。
(……言っちゃった)
のえるはベッドに横になった。
カーテンの隙間から見える夜空には星が輝いていた。
(あと3日……)
◆
当日の朝。
リビング。
まりあとのえる、朝食を食べていた。
まりあは興奮気味だ。
「今日、音光学園の文化祭!」
「……姉ちゃん、興奮しすぎ」
のえるは冷静に言った。
「だって!本当に女装だなんて!」
「『ほしみのひみつ』が現実になるなんて!」
まりあは興奮している。
「……」
まりあはスマホを見た。
「ミクちゃんと合流するの」
まりあは操作している。
「実はね……」
「姉ちゃん、ミクちゃんには言わないで」
のえるは言った。
「え、なんで?」
「現地で確認してからにしよう」
「……うん、わかった」
のえるは朝食を食べ終わった。
玄関に向かう。
まりあは鏡の前で身支度をしている。
「のえる、ありがとうね」
「……なにが?」
のえるは振り向いた。
「教えてくれて」
「……まあ、どうせ今日公開されるし」
「楽しみ!」
まりあは笑顔だった。
(姉ちゃん、本当に楽しそうだな……)
のえるは玄関で靴を履いた。
「行こう」
「うん!」
二人は家を出た。




