第42話 とある姉弟の100日間:違和感
文房具店「ミドリ文具」には、『ほしみのひみつ』グッズがずらり。
ノート、ペン、シール、クリアファイル……
「全部欲しい…!」
「わたしも!」
まりあとミクは興奮している。
「……買いすぎだぞ」
「いいじゃん!」
レジに向かうと……
またあの制服を着た女の子がいた。今まで見た子とは別の子だが、同じように可愛い。
そして、やはり同じ制服を着ている。ブレザーとプリーツスカート。
「いらっしゃいませ♪」
のえるはまた顔が赤くなった。
まりあとミクはグッズを購入。
「ありがとうございます♪」
「はい!」
店を出る。
「ねえ、なんか音光商店街コラボの売り子さんたち、みんな同じ制服着てない?」
ミクが言う。
「あ、確かに。入口の子も、パン屋も、カフェも、書店も……全員同じ制服だね」
まりあも気づいた。
「音光学園の生徒なのかな」
「そうかも!文化祭のお手伝いしてるのかな」
「のえる、なんか顔赤くない?」
ミクが聞く。
「!?べ、別に」
「熱でもあるの?」
「ない」
素っ気ない返事。
「ふーん?」
まりあとミクは顔を見合わせて笑った。
◆
スタンプラリーを楽しみながら商店街を歩く。
「全部集まった!」
そのとき、壁に貼られた大きなポスターに気づいた。
「音光学園文化祭」
「一般公開!入場無料!」
ポスターには、『ほしみのひみつ』のキャラクターイラストが使われている。
「!!!」
「ねえねえ、見て!文化祭だって!」
「……ああ」
「『ほしみのひみつ』のイラスト使ってる!」
「これって、音光学園と『ほしみのひみつ』がコラボしてるってこと?」
「……みたいだな」
まりあは興奮した。
「絶対行こう!文化祭!」
「え……」
「ほしみのひみつの何かがあるかもしれない!」
「……でも、文化祭って」
「いいじゃん!一般公開って書いてあるし!」
「…はぁ」
のえるは諦めたようだ。
まりあはポスターの写真を撮る。
絶対行く!
のえるは心の中で思った。……音光学園、か。
◆
スタンプを全部集めて、景品交換所へ。
「全部集まりましたね!こちらどうぞ」
景品は『ほしみのひみつ』特製クリアファイルと、音光学園のパンフレット。
「わあ!ありがとうございます!」
パンフレットを見る。
「音光学園 文化祭のご案内」
中には文化祭の詳細、アクセス、イベント情報……
そして、表紙には美しい「女子生徒」の写真。
「綺麗…」
のえるはパンフレットをちらっと見る。
……女子校、か?
◆
帰りの電車。
まりあとミクは戦利品を見ながらニコニコしている。
「楽しかったね!」
「超楽しかった!」
「……まあ」
のえるが答える。
「商店街の人たち、優しかったし」
「うん、あの女の子たちもすごく親切だったよね」
ミクが言う。
「グッズもいっぱい買えたし」
「……買いすぎだろ」
「いいの!」
まりあはスマホで@oto_fesを確認。
新しい投稿がある。
「本日も多くの方にご来訪いただきました。ありがとうございます♥」
写真は賑わう商店街の様子。
「すごい人だったもんね」
「……」
「文化祭も絶対行こうね!」
「……ああ」
生返事。
のえるは心の中で思った。
……あの子たち、可愛かったな。
音光学園の生徒なんだろうな。みんな同じ制服だったし。
でも…何か違和感があるような…
気のせいかな。
文化祭、行くのか…
◆
夜、まりあの部屋。
まりあはベッドで今日の写真を整理している。
メロンパン、喫茶店、グッズ、文化祭ポスター……
そして、書店で買ったサイン入り単行本を取り出した。
「春野咲希先生のサイン……本物だ」
表紙を撫でる。大切な宝物だ。
あのとき……確かに誰かに「ありがとう」って言われたような気がしたんだけど。
まりあは首を傾げる。
売り子さんの誰かだったのかな。
それとも……気のせい?
まりあはサイン本をもう一度見つめた。
でも、確かに聞こえた気がする。
まりあはスマホを手に取り、SNSに投稿。
「聖地巡礼行ってきた! 商店街最高でした! 文化祭も絶対行く! #ほしみのひみつ #聖地巡礼 #音光商店街」
写真はメロンパン、喫茶店、グッズ、文化祭ポスター……
文化祭、楽しみだな。
あの売り子さんたち、文化祭でも会えるかな。
同時刻、のえるの部屋。
のえるはベッドで天井を見つめていた。
……あの子たち。
すごく可愛かったな。
音光学園の生徒なのかな。
文化祭…行ったら、また会えるかな。
のえるは顔が少し赤くなる。
……って、何考えてるんだ俺。
のえるは枕で顔を覆った。
姉ちゃんに付き合わされただけなのに。
でも…気になる。
◆
月曜日。
のえるの学校、休み時間。
友達が話しかけてきた。
「のえる、週末どこ行ってたんだ?予定あるとか言ってたけど」
「……音光商店街。双子の片割れが、『ほしみのひみつ』と商店街がコラボしてるから絶対に行きたいってつきあわされたんだよ」
「ああ、あの少女漫画か。妹が読んでるよ」
うんうん、と頷く横で別の友人が割り込んでくる。
「音光? あー、音光学園の近くじゃん」
「うん。音光学園の文化祭が近々あるってポスターががはってあったよ。可愛い制服姿の女の子たちが、着てコラボイベントしてたけど、あれって文化祭の広告も兼ねてたのかな」
「ん?ちがうだろ?あそこ確か男子校だろ?」
のえるは驚いた。
「え?」
男子校…?
友達は続けた。
「どうした?」
「いや…なんでもない」
でも…確かに女子の制服着てたぞ。
友達は首を傾げた。
「んー???」
のえるも首を傾げる。
「共学になったんじゃね?」
「……かもな」
本当にそうなのか?
◆
月曜日の夜、のえるの部屋。
のえるはスマホで「音光学園」を検索した。
検索結果:「音光学園 男子校」「廃校危機」「生徒数激減」
「やっぱり男子校…」
のえるは画面を見つめる。
廃校危機……生徒数激減……
でも、そんな感じしなかったけどな。
商店街はすごく盛り上がってたし、コラボもちゃんとしてた。
女の子たちもいっぱいいて、親切で……
のえるは首を傾げる。
廃校の危機、って割には元気そうだったけど。
……あれ?何か変だな。
でも、あの子たちは?男子校なのに。
共学になったのか?
さらに検索するが、共学化のニュースは見つからない。
のえるは@oto_fesを見た。
コメント欄を流し読み。
「何か違和感ある」「おかしいけど何がおかしいのか分からない」
みんなも何か感じてるのか…
のえるは検索を続けるが、明確な答えは見つからない。
「……わからない」
男子校なのに、女の子がいた。
でも検索結果は男子校のまま。
……何か変だ。
のえるはスマホを置いた。
文化祭に行けば、分かるのかな。
のえるは複雑な表情で天井を見つめた。




