表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男子校女装化計画!?〜廃校危機を救う奇跡の文化祭大作戦〜  作者: ほしみん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/57

第3話 廃校宣告

 翌日、理事長室に理事長含む理事一同が集まった。重苦しい空気に包まれていた。


 春の陽射しが窓から差し込んでいるが、今日ばかりは暖かさを感じられない。理事メンバーが深刻な顔で理事長の前に立っている。手に持った報告書が微かに震えていた。


「理事長……今年度の入学申込者数が出ました」


 理事長は机に置いた両手を強く握りしめ、覚悟を決めたような表情で答えた。


「……どうでしたか?」


「……25名です」


 空気が凍りついた。募集定員80名。その3分の1以下という数字が、理事長室に重くのしかかる。


「25名って……」


 理事長の声が震えている。握りしめた手がわずかに震えていた。


「定員の3分の1以下……」


 生徒会委員長である橘秀一が眉をひそめる。理事長の孫として、この数字の深刻さを誰よりも理解していた。


「これは……深刻ですね」


 事務員は続けて報告した。


「キューピッド高校は150名の枠にたいして450名の応募だそうです」

「近隣の共学校も軒並み定員超過」

「どうしてうちだけが……」


 その言葉が、理事長の心に深く突き刺さった。


 理事たちの表情は一様に暗い。資料を見る目は冷静だが、そこに希望の光はない。


「この状況では経営が成り立たない」


 年配の理事が眼鏡を外しながら淡々と述べる。


「廃校もやむを得ないのでは」


 若手の理事が資料を指差しながら追い打ちをかける。


 理事長は孫の前で弱い姿を見せまいと、必死に抵抗した。


「まだ手はあるはずです」


 しかし、経理担当の理事が冷徹に現実を突きつける。


「現実を見てください。もう限界です」


 そして、最後通牒が下された。


「今年の文化祭で、来年度の入学希望者を大幅に増やせなければ、廃校を検討せざるを得ません」


 理事長は天井を見上げ、長い沈黙の後に静かに答えた。


「……分かりました」


 理事会が終わると、理事長は肩を落とし、窓の外を見つめた。孫である委員長の前で、これ以上弱い姿は見せられない。しかし、現実は容赦なく突きつけられた。


 文化祭までに奇跡を起こさなければ、音光学園は消滅する。


 果たして、そんな奇跡が起こり得るのだろうか——


 理事会が終わると、理事長は一人理事長室に残った。


 窓の外では春の陽射しが暖かく校庭を照らしているが、理事長の心は深い絶望に包まれていた。


 机の上に散らばった資料を見つめながら、これまでの歩みを振り返る。


 音光学園を設立してから20年。多くの生徒たちがここで学び、巣立っていった。彼らの笑顔、涙、青春の思い出がこの校舎には詰まっている。


 それがすべて消えてしまうのか。


「私は……失敗したのか」


 理事長の呟きが、静まり返った理事長室に響いた。


 孫である秀一にだけは、弱い姿を見せたくない。しかし現実は厳しすぎた。


 文化祭まで、あと半年。


 果たして奇跡は起こるのだろうか。


 ◆


 その夜、理事長は生徒会メンバーだけを緊急招集した。


 夕暮れ時の生徒会室に、一人また一人とメンバーが集まってくる。普段なら部活動の時間だが、今夜は違った。理事長からの緊急連絡で、全員が急遽集められたのだ。


「何があったんだろう……」


「理事長が直接呼び出すなんて、初めてじゃない?」


 生徒会メンバーたちが不安そうに顔を見合わせる。


 理事長が生徒会室に入ってきたとき、その表情を見て全員が言葉を失った。普段の温厚な笑顔は影を潜め、深い疲労と絶望が刻まれている。


「皆さん、集まってくれてありがとう」


 理事長の声はかすれていた。昼間の理事会で心が折れかけているのが、手に取るように分かる。


「今日の理事会の結果を、君たちにだけ伝える」


 委員長である秀一が背筋を伸ばす。祖父の様子から、ただ事ではないことを察していた。


「……お祖父様?」


 理事長は面を上げ、生徒会メンバー一人一人を見つめてから口を開いた。


「来年度の入学者は、現在25名」


 その数字に、生徒会メンバーたちが息を呑む。


「定員80名に対して25名って……」

「それって、定員の3分の1以下じゃないですか」

「そうだ。そして理事会で決定されたことがある」


 理事長の次の言葉に、生徒会室の空気が凍りついた。


「このままでは、来年度をもって廃校となる可能性がある」


 生徒会室に重い沈黙が降りた。時計の音だけが、やけに大きく響いている。


 美月は呆然としていた。キューピッド高校との格差を見せつけられた翌日に、今度は廃校の危機。現実があまりにも重すぎる。


「廃校って……マジですか?」


 声が裏返ってしまう。


「マジだ」理事長が頷く。「今年の文化祭で、来年度の入学希望者を大幅に増やせなければ……」


 理事長の声が涙声になっていく。


「理事会では、廃校を検討せざるを得ないという結論になった」


「そんな……この学校がなくなるなんて」

「僕たちの母校が……」


 理事長は生徒会メンバー一人一人の顔を見回した。


「だから、君たちに頼みたい」


「この学校の未来は、君たちにかかっている」


 委員長が祖父の肩に手を置いた。


「お祖父様……必ず何とかします」


 しかし、委員長の心の中でも、まだ具体的な方法は見えていなかった。ただ、何かをしなければという使命感と、そして——以前から漠然と考えていた、ある可能性について思いを巡らせていた。


(まだ時期尚早かもしれないが……)


 それは、まだ誰にも話していない、一つのアイデアだった。


「でも……どうすれば」


 美月が呟く。


「キューピッド高校との差は歴然としてる。俺たちに何ができるっていうんだ」


 その時、理事長が涙を拭いながら言った。


「私にも分からない。だが、君たちなら……若い発想力なら、何か道があるかもしれない」


「お祖父様」


 委員長の声に、決意が宿っていた。


「分かりました。生徒会として、この危機に立ち向かいます」


 理事長は安堵した。しかし、具体的な方法はまだ見えていない。


「ありがとう、秀一。そしてみんなも」


 理事長の声はかすれていたが、希望の光が少しだけ戻ったようだった。


「君たちの日遅の本気を感じられて、少しだけ元気が出た。ありがとう」


 理事長は深く頭を下げた。


「この学校の未来は、本当に君たちにかかっている。よろしくお願いします」


 生徒会室に重い沈黙が流れた。みんなが背負った責任の重さを実感していた。


 果たして、奇跡は起こせるのだろうか——


 ◆


 理事長が去った後、生徒会室には重い沈黙が続いていた。


 美月たちが呆然としている中、委員長だけは静かにスマートフォンを取り出していた。


「委員長……何してるんだ?」


「……少し調べ物を」


 委員長の指が画面を滑る。「学校PR SNS」「話題作り 方法」「注目 集める」といった検索ワードが見える。


「SNSで拡散させるだけでは、やはり限界がありますね……」


 委員長が小さくつぶやく。


「SNS?」


「はい。インスタグラムやTikTokで学校の魅力を発信する方法も考えたのですが……」


 委員長は画面を見つめながら続けた。


「SNSだけでは不十分……もっと大きなメディアを活用できないかな……」


「大きなメディアって?」


 美月が首をかしげると、委員長は曖昧に答えた。


「テレビや新聞、雑誌……そういった、より多くの人に届くメディアです」


「でも、そんなの個人で頼めるものなの?」


「……分からません。でも、調べてみる価値はあると思います」


 委員長はスマートフォンを仕舞った。


「まだ構想段階ですが。最悪の場合に備えて、あらゆる可能性を探っておこうと思います」


 委員長の瞳には、既に何かの決意が宿っているように見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ