表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男子校女装化計画!?〜廃校危機を救う奇跡の文化祭大作戦〜  作者: ほしみん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/57

第33話 文化祭委員会への説得

 翌日の放課後。文化祭委員会のメンバーが委員会室に集まっていた。いつもより緊張した空気が流れている。それは当然だ。今日は「緊急ミーティング」として招集されているからだ。


 文化祭委員メンバーの集合に少し遅れて藤田が委員会室に入ってくる。


「みんな、お疲れ様」


 席に着くと、委員たちも座った。


「今日は重要な話がある。生徒会から文化祭の内容に関する提案があったんだ」


「文化祭の提案?」


 副委員長の田中が首をかしげる。


「どんな提案なんです?」


 会計の佐々木が興味深そうに尋ねる。


「生徒会から提案されたのは……今年の文化祭について、『男子校全員で女装して、女子校風の文化祭をやろう』という企画だ」


 委員会室が一瞬静まり返った。


「……は?」


 複数の委員が同時に声を上げる。


「生徒全員で女装って……マジで言ってるんですか?」


 広報担当の山本が困惑した顔で聞く。


「冗談じゃない。本気の企画だ」


 藤田の真剣な表情に、委員たちは戸惑いを隠せない。


 藤田は委員たちの困惑した表情を見回すと、深く息を吸った。


「みんなの気持ちはよく分かる。最初俺も同じ反応だった。でも、まず現状を思い出してほしい」


 藤田が立ち上がり、ホワイトボードに向かう。


「去年の文化祭、来場者はどれくらい人が集まったか覚えているか?」


「……保護者だけでしたね」


 二年生の文化祭委員の一人が苦々しく答える。


「そうだ。準備にあれだけ時間をかけたのに、来てくれたのは家族だけ。今年もこのままなら同じ結果になる。いや、もっと悪くなるかもしれない」


 藤田の言葉に、委員たちの表情が暗くなる。


「だからこそ、これくらい飛び抜けたことをしないといけないんだ。『男子校が女子校に!』これは確実に話題になる」


「でも……」


「ちょっと待ってください」


 渉外担当の鈴木が手を上げる。


「俺、身長180センチで体重80キロなんですけど……女装なんて無理ですよ」


「そうですよ。僕もガタイいいし……」


 設営担当の木村が困った顔をする。


「去年みたいに誰も来ないよりはマシかもしれませんけど、あまりにもリスク高すぎませんか?」


 副委員長の田中が慎重な意見を述べる。


 一方で、諦めムードの委員もいる。


「どうせ何やったって今年も保護者だけでしょ」


 会計の佐々木がため息をつく。


「やるだけ無駄じゃないですか。恥かくだけですよ」


 庶務の橋本が消極的な意見を口にした。


 しかし、興味を示す委員もいる。


「でも話題性はあるかもしれませんね」


 広報の山本が前向きに考える。


「『男子校が女子校に!』ってすごいパワーワードだな。確かにSNSでバズるきがする」


 渉外の鈴木も少し興味を持ち始めた。


「まあ待て。順番に説明させてくれ」


 藤田が手を上げて、委員たちを制した。


「まず、実際に見てもらいたいものがある」


 藤田が立ち上がる。


「えっ、見るって何を?」


「生徒会委員長、橘のクラスの連中が既に女装の練習をしてるんだ。それを見学しよう」


「はあ……」

「練習?」


 委員たちは半信半疑のまま、委員会室を出て、生徒会委員長の所属である2-Aのクラスに向かった。


 教室の扉を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。


「……え、マジで女子に見える」


 鈴木が声を失う。


「嘘だろ……あれ本当に男子?」


 佐々木が目を丸くした。


 教室では、女子制服を着た生徒たちが自然に談笑している。どこから見ても女子高生の風景だった。


「すごい……」


 田中が感嘆の声を漏らす。


「あの子、特に可愛いですね」


 山本が月美を指差す。


 その時、委員長が教室に入ってきた。秀子の姿である。そして、その隣には月美が並んで歩いてくる。


 二人は息の合った双子のような装いだった。同じデザインの制服、同じ髪型、同じ上品な仕草。まるで本物の姉妹のように見える。


「うわあああああ!」


 山本が思わず声を上げる。


「可愛すぎる!完璧じゃないですか!」


「双子みたい……いや、双子以上だ」

「双子以上って意味がわからんが、気持ちはわかる」


 木村も目を輝かせている。


「文化祭委員の皆さん、いらっしゃいませ」


「あ、生徒会委員長」


 藤田が挨拶する。


「いかがでしょうか?我がクラスの成果は」


 委員長が誇らしげに言う。


「信じられません……本当に男子なんですか?」


 木村が驚きを隠せない。


「これ、絶対にSNSでバズりますよ!『美人双子姉妹が実は男子校生』って、もう映画レベルの話題性です!」


 山本が広報担当らしい視点で分析する。


「月美、こちらにいらっしゃい」


 委員長が声をかけると、月美が委員たちの前にやってきた。二人が並ぶと、その完成度の高さに委員たちは改めて息を呑んだ。


「こんにちは、月美です」


 月美が丁寧にお辞儀をする。


「完璧じゃないですか……本当に実現可能なんですね」


 橋本が呟く。その声には、最初の諦めムードが消え、期待の色が混じっていた。


 ◆


 委員会室に戻った一行。雰囲気が明らかに変わっていた。先ほどまでの否定的なムードが消え、興奮と困惑が入り混じった空気が流れている。


「確かにすごかったです。特にあの双子コスプレは……でも……」


 田中が口を開く。その表情には、感動と現実的な不安が同居していた。


「あれは特別に才能のある子だからできたんじゃないですか?生徒会委員長と月美さんは本当に完璧でしたけど」


「僕たちみんながあのレベルにいけるかっていうと……」


 木村が不安を口にする。しかし、その声には先ほどのような完全な否定ではなく、挑戦への戸惑いが滲んでいた。


「そういう側面はあるだろう。ただ橘のクラスは全員が取り組んだうえでのあの結果だ。みんなも見てもらってわかった通り、人によって差はどうしてもある」


 藤田が頷く。


「だから段階的にやるんだ。全員が同じレベルを目指すわけじゃない」


「段階的って?」


「参加レベルを分けて、それぞれの能力や事情に合わせて参加できるシステムだ。詳細は後で全校に説明するが、無理なく取り組める仕組みになっている」


「なるほど……それなら確実性が高いな」


 藤田が頷く。


「それなら……」


 鈴木が考え込む。


「僕は、できる範囲でなら構いません」


「俺も、やれる範囲でなら……」


 委員たちの表情が少しずつ変わってくる。


 藤田はその変化を見逃さなかった。好機と見て、さらに畳みかける。


「実は、これには大きな仕掛けがあるんだ」


 藤田が切り札を出す。


「MHKが取材に来てる。この取り組みが全国放送される」


「MHK?」


 委員たちがざわめく。


「さらに、この企画の漫画化が進んでいるんだ」


「少女漫画?」


「『ほしみのひみつ』っていう、既にSNSで話題になってる作品らしい。文化祭当日に『実は実話』と暴露する予定だ」


「え!あの『ほしみのひみつ』!?あの漫画、ウチの妹読んでるぞ」

「うちは姉貴が──確かに今回の話、めっちゃ内容にてるわ。まさかの実話か」


 藤田の説明に、委員たちの目が輝き始める。


「それって……本当に全国的な話題になるかもしれませんね」

「ドキュメンタリーに漫画化って……去年とのギャップがすごすぎますね」


 山本が興奮する。


「今年こそ、たくさんの人が来てくれるかも」


 鈴木も期待を込めて言う。


「でも失敗したら?」


 佐々木が心配そうに聞く。


「失敗を恐れて何もしなければ、結果は見えてる。去年と同じだ」


 藤田が力強く答える。


「委員長……」


 田中が感動したような声を出す。


「俺たちは今年で最後だ。最後の文化祭を、去年と同じにしたいか?」


 藤田の問いかけに、委員たちは顔を見合わせた。


 長い沈黙の後、田中が口を開いた。その目には、決意の光が宿っていた。


「……やってみましょう」


「田中……」


「正直、不安はあります。それでも、去年の悔しさを思い出すと……あの双子コーデを見た時、確信したんです。これは本当に話題になるって」


 田中の言葉に、他の委員たちも頷き始める。先ほど見た光景が、彼らの心を動かしていたのは明らかだった。


「俺も賛成です」


 鈴木が手を上げる。


「私も」


 山本が続く。


「あの双子のプロデュース、広報担当として絶対に成功させたいです」


「俺も……Bランクでも、やれることはある」


 木村が前向きに宣言する。


「僕も参加します。あれを見て、可能性を感じました」


 橋本も続いた。


 一人、また一人と賛成の意思を示していく。先ほど見た双子コーデの衝撃が、彼らの心を確実に変えていた。


「みんな……」


 藤田が感動で声を震わせる。委員長の作戦は見事に成功したのだ。


「よし、それじゃあ具体的な計画を立てよう」


「何から始めますか?」


 木村が積極的に聞く。


「まず、学校全体への発表の準備だ。全校集会を開く必要がある」


「全校集会?」


「そうだ。今度は学校全体を説得する番だ」


 藤田が決意を込めて言った。


 委員会室に、新しい希望の光が差し込んできた。個人から、クラスから、委員長から、そして委員会へ。


 輪は確実に広がっている。次は学校全体だ。


 大きな挑戦が、いよいよ始まろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ