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男子校女装化計画!?〜廃校危機を救う奇跡の文化祭大作戦〜  作者: ほしみん


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第2話 格差を知る

 翌日の午後、春風が頬を撫でる中、美月たちはキューピッド高校の正門前に立っていた。


「うわあ...」


 思わず声が漏れる。甘い匂いが風に乗ってくる。綿あめか、クレープか。キューピッド高校の文化祭は、音光学園とは別世界だった。


 正門には華やかな装飾が施され、色とりどりの風船が舞っている。受付にはキューピッド高校の男子生徒たちが笑顔で案内している。キューピッド高校は男子校だが——


「女子が……女子の来場者がこんなにいるのか……」


 美月の目が点になった。


 校門周辺には大勢の女子高生たちが楽しそうに歩いている。カップルが手を繋いで歩いている光景も珍しくない。


「キューピッド高校の男子って素敵よね」


 そんな声が聞こえてくる。


 理事長の顔が青ざめていた。


「これが...音光学園と同じ男子校なのか...」


「確かに、来場者数も魅力も、レベルが段違いですね」


 委員長も冷静さを保てずにいる。


 美月は去年の自分たちの文化祭を思い出した。手作り感満載の貧相な看板、誰もいない受付、閑散とした校内...


「俺たちの学校と比べると...」


 言葉を失う美月。


 校内に入ると、さらに衝撃的な光景が待っていた。


 カフェには女子の長蛇の列。写真館で撮影を楽しむ女子たち。体育館からは盛大な拍手と歓声。どこを見ても女子、女子、女子。


「女子がこんなにいるなんて...」

「俺たちの学校と何が違うんだ...」


 生徒会メンバーがぼやく中、中庭で決定的な光景を目撃した。


 手を繋いで歩くカップル。「今度映画見に行こうか」という自然な会話。


 その時、キューピッド高校の男子生徒に声をかけられた。


「君たち、どこの学校?」


 委員長が答える。


「音光学園です」


「ああ、あの...」


 微妙な反応。明らかに格下扱いされている。


「彼女とかいるの?」


 音光学園一同、沈黙。


 美月は惨めな気持ちになった。


「俺たち、去年何人来たっけ...」

「...50人くらい?」

「しかも半分は家族...」

 生徒会一同がぼやく。


 理事長が小声で呟く。


「厳しい現実だ...」


 そして帰り際、最悪の出来事が起こった。


 正面玄関前で、キューピッド高校の理事長に遭遇したのだ。


 50代の成功者然とした風貌の男性。身長は音光学園理事長より明らかに高く、今でも背筋をピンと伸ばしている。隣には上品な女性が寄り添っていた。


「おや、音光学園の皆さんですか」


 その声に、音光学園理事長の背筋が凍った。大学時代から聞き慣れたその声。そして隣の女性は...


「こんにちは」


 美しく年を重ねた、あの教育実習生だった。


「ご挨拶が遅れました。見学させていただき...」


「いやいや、参考になりましたか?」


 完全に上から目線。昔と全く変わらない、あの嫌味な口調だった。


「音光学園さんは...インドア系の生徒が多いんでしたっけ?まあ、それぞれ特色がありますからね!オタクはオタクで頑張ってください。心のほんの隅だけ応援していますよ」


 完全に見下されている。


 理事長は返す言葉がない。


「そ、そうですね...」


 委員長は内心で歯噛みした。しかし同時に、冷静な部分でこの状況を分析していた。


(圧倒的な格差...しかし、何か打開策があるはずだ)


 美月も悔しかった。


(悔しいけど、言い返せない...)


 そして最後の一撃。


「来年も頑張ってくださいね」


 キューピッド理事長が妻の肩に手を回しながら言う。


「もし生徒が集まらなくて困ったら、うちで引き取りますよ」


「あなた、それは...」妻が窘めるが、彼は続ける。


「最近は統廃合も多いですからね。まあ、君には学校の経営なんて所詮無理だと思ってたけど」


 そして極めつけ。


「そうそう、この前の同窓会、君来なかったね?みんな心配してたよ。『また身長測定で負けるのが嫌なのかな』って」


 最後の言葉で、理事長の心は完全に折れた。身長、恋愛、そして学校経営。すべてで負け続けた40年間が脳裏をよぎる。


 理事長は完全に打ちのめされた。


「...ありがとうございます」


 苦笑いを浮かべるしかない。1cm差から始まった40年越しの完全敗北だった。


 帰り道、誰も口をきかなかった。


 委員長は心の中で思っていた。


(お祖父様の恨みは正直くだらない。でも、学校の危機は本物だ)


(キューピッド高校の成功要因...女子の来場者数、華やかさ、注目度...)


(何か根本的に違うアプローチが必要だ)


 ◆


 夕方、音光学園に戻った一行は、改めて自分たちの学校を見つめた。


 キューピッド高校を見た後では、古い校舎も、色あせた廊下も、手作り感満載のポスターも、すべてが惨めに見えた。


「音光学園はキューピッド高校に比べて……こんなにも劣っていたのか……」


 理事長の声が震えていた。


 生徒会メンバーも去年の記録を引っ張り出して頭を抱えていた。


「去年の来場者、本当に50人だったな...」

「そういえば、しかも3時間で全部回り終わってたわ。中身が全然無かった」

「女子の来場者なんて、ゼロ。俺、正門でカウントしてたから覚えてるんだ」


 美月も現実を受け入れるしかなかった。


「...厳しい現実だ」


 その夜、理事長室では一人の老人が机に向かっていた。


「どうして...どうしてこんなことに...」


 机の上には入学者数の資料が散らばっている。キューピッド高校との圧倒的な格差を見せつけられた今日、現実の重さが肩にのしかかっていた。


「このままでは本当に廃校に...」


 理事長は深いため息をついた。生徒たちの未来、教職員の生活、そして自分の人生をかけて築き上げてきた学校が消えてしまうのか。


 頭の中では既に、今日見たキューピッド高校の成功要因を分析していた。女子の来場者、華やかさ、注目度...音光学園には決定的に欠けているものばかりだった。


「何か...何か手はないのか...」


 理事長の目には、絶望の色が浮かんでいた。


 しかし理事長は知らなかった。


 この絶望的な現実が、やがて音光学園史上最大の「大作戦」の引き金となることを——

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