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男子校女装化計画!?〜廃校危機を救う奇跡の文化祭大作戦〜  作者: ほしみん


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第26話 委員長の大戦略発動

 ある日の放課後の教室で、委員長はスマホを見ながら眉をひそめていた。


『新連載「ほしみのひみつ」作:春野咲希 決定!』


 SNSで流れてきた出版社の公式発表を見つけた委員長は独りごちる。


「春野咲希…野崎ですね」


 委員長は野崎の下へと向かう。


「野崎君、新連載おめでとうございます」


 委員長が声をかけると、野崎は普通に振り返った。


「ありがとうございます」


 いつもの天然な様子で答える野崎。


「委員長、俺がマンガ連載してたこと知ってたんだ」


「委員長として、皆さんの活動を知るのは当然です」


(当然なのか。俺知らなかったぞ)


 なんとなく近くにいて野崎と委員長の会話に耳を傾けていた、月美は驚愕する。


「実は月美さん、お礼を言いたくて」


 野崎が唐突に月美の方を向いた。自分は無関係だとおもっていた月美は目を丸くする。


「『ほしみのひみつ』、ヒロインが、実はあなたがモデルなんです」


 月美の目が点になった。


「え?私が?」


「すごくいいキャラになりました」


 野崎はあっけらかんと答えた。


「私……? 漫画の? モデル?」


 月美は混乱していた。そんなことを聞いた覚えはない。


「ええ、すごく参考になりました。ありがとうございます」


 野崎は満面の笑みで答える。


 月美は困惑した表情を浮かべていた。


 この情報を聞いた瞬間、委員長の脳内で巨大な戦略が組み上がり始めていた。


 カチリと、何かが噛み合う音がする。


 にやり、と笑う委員長。


「ちょっと失礼します」


 委員長は席を立った。そんな委員長を不思議そうな顔で見送る野崎と、月美だった。


 ◆


 数日後――


 都内某所の会議室に、四人の人物が座っていた。


 MHKディレクター、出版社の担当編集、そして委員長、野崎の四名だ。


「で、なぜ我々が?『ほしみのひみつ』と何の関係が?」


 担当編集が困惑した表情で尋ねた。


 それもそのはずである。春野咲希先生(野崎)より『ほしみのひみつ』に関して重要な相談があると急遽呼び出された。ところが会議室に入ってみると、なぜかMHKの関係者まで同席している。困惑するのも当然だった。


「確かに…突然の会談要請でしたが。これは『例の件』に関わるお話なんですかね?」


 MHKディレクターも同様だった。


「例の件?」


 担当編集は首を傾げる。


「はい、その通りです。順をおってお話しますね」


 委員長が続ける。


「まずは、お忙しい中、ありがとうございます」


 委員長は落ち着いていた。


「MHKのディレクターさんはご存知かと思いますが、改めて、今音光学園に起きているお話をしますね」


 委員長は資料を配布しながら説明を始めた。


「音光学園は現在、廃校の危機にひんしています。それを脱するために、文化祭で全校生徒が女装し『女子校』を演出するという企画を実行する予定です」


「そして私達がそれを『ドキュメンタリー』として現在追っていて、うまく言ったらそれを全国放送する予定なのです」


 MHKのディレクターの補足で目を丸くする担当編集。


「春野先生の母校がそんなことに──


 ちょ、ちょっとまってください。ということは『ほしみのひみつ』というのは」


「はい。概ね実話をベースにしています」


 野崎が静かに答えた。


「なんと……」


 担当編集は頭を抱える。


「『ほしみのひみつ』の主人公のモデルが実在するって言ってましたが……まさかそういう……」


 そこで委員長がスマホを取り出した。


「実は、ご本人にも来ていただいています」


 委員長がメッセージを送ると、しばらくしてドアがノックされた。


「入ってください」


 ドアがガラリと開くと、そこには月美が立っていた。


「彼が『桜井美月』。現在は『吉野月美』として学校に通っています。彼、いや、彼女が「ほしみのひみつ」の主人公、ほしみのモデルです」


「え、あ、月美、星美、あーーーー」


 目を白くする担当編集。MHKのディレクターを始め一同がニヤニヤとその様子を見守る。


 月美は会議室の雰囲気に少し緊張していたが、状況を理解して静かに席に着いた。


「あの……よろしくお願いします」


 控えめに挨拶する月美。実写版「ほしみ」に挨拶されたような錯覚を覚えた担当編集は、月美の美貌と、混乱でくらくらする。


「ここからが本題です」


 委員長は話を続ける。


「実は、私自身も予期していなかったことなのですが」


 委員長は一息ついた。


「春野先生が、私たちの実際のプロジェクトを意図せずマンガ化してくれたんです。そして、この設定があまりにもファンタジー的すぎるため、読者の皆さんも実話だとは思わないでしょう」


「そりゃそうですよ。私だって、この話を聞いて、ファンタジーとして面白いと思ったから企画を通したわけですから。まさか実話とか思わないじゃないですか」


「事実は小説よりも奇なり、ですね」


 と冷静に委員長。


「いや、それにしても限度があるでしょう」


 と担当編集。


「そこで、ご提案があります」


 委員長の目が輝いた。


「私たちは文化祭で全校をあげて女装し、女子校として文化祭を開催します。それをMHKのプロジェクトχで ドキュメンタリーとして放送していただく。同時に『ほしみのひみつ』が実話ベースであることも公開する」


「つまり、メディア・ミックス戦略です。ご協力いただけないでしょうか」


(メディアミックス!?聞いてねーぞ!)


 月美は心の中で声を上げる。口をパクパク指せるが声が出ない。


「これは…話題性が跳ね上がりますね」


 MHKディレクターの目が輝いた。


「あまりにも話しがでかすぎます……とはいえ、MHKさんとのコラボ、実話での話題性。売上爆増確実──」


 出版社側も興奮を隠せない。


 委員長は内心で微笑んだ。計算通りだった。


「廃校寸前の高校の試みのドキュメンタリーとして最適です」


 MHKディレクターが前のめりになった。


「メディア・ミックス戦略で大展開できます。そうですね。最初呼び出されたときはびっくりしましたが、これはなんとしても通したい企画です。押し通してきます」


 出版社も乗り気だ。


「学校の知名度アップで救済につながります」


 委員長が最後のピースを置いた。


「WIN-WIN-WINです!」


 委員長が最後のピースを置いた瞬間、MHKディレクターと担当編集が手を取り合った。野崎は少し離れた場所で、相変わらず天然な表情で見守っていた。


 月美だけが、まだ少し困惑した表情を浮かべていた。


「なんか私を置いてきぼりにしてどんどん話が広がっていく……」


 小さくつぶやく月美だったが、その表情には諦めと同時に、少しの期待も浮かんでいた。


 ◆


 会議室を出た委員長は、満足感に包まれていた。


 完璧な戦略だった。学校救済への確実な道筋が見えた。祖父にも報告できる。


 一方、野崎は相変わらず天然だった。


「なんだか凄いことになってますね」


「僕は漫画を描くだけですが」


 アーティスト気質の彼にとって、ビジネス的な展開は別世界の話のようだった。


 委員長は学校に向かいながら考えていた。


「次は実行段階ですね」


 クラス全体への展開。大きな企画が動き出そうとしていた。


 でも、それはまた別の話。


 今日は三者連携の成功を祝おう。完璧な一日だった。


 委員長の顔に、静かな勝利の笑みが浮かんでいた。

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