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男子校女装化計画!?〜廃校危機を救う奇跡の文化祭大作戦〜  作者: ほしみん


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第23話 美原の合宿修行とマニュアル作成

 メイクの才能を見せつけた美原だったが、翌日の放課後、2-A教室で一人悩んでいた。


「昨日はみんなに褒めてもらったけど……」


 美原が呟くように言うと、美月が振り返る。


「美原、何言ってるんだよ。お前すげぇじゃん」


「でも俺の技術、まだまだだと思う。クラス全員のために標準化して、指導──なんて、本当にできるのか?」


 美原の不安そうな表情を見て、委員長も近づいてきた。


「どういうことですか?」


「姉の化粧は手伝ったことあるけど、他人にメイクするのと、自分でやるのって全然違うよな」


 美原が机に突っ伏しながら続ける。


「俺、人の化粧はしたことあっても自分についてしたことなくて、まして女装なんてしたことないんだ」


(そりゃそういう人の方が多いだろうねぇ)


 月美は思った。


 委員長が眼鏡を光らせる。


「なるほど、体験不足ということですね」


 その時、月美が手を叩いた。


「じゃあ、うちにいらしたらどうです?」


「え?」


「私の姉に教えてもらったらいいと思います。あい……姉は、こういうの好きですから」


(そして思う存分姉ちゃんの被害者になると良い)


 月美は心の中で悪戯っぽく微笑んだ。


 美原が慌てて手を振る。


「いや、流石に迷惑だろ……」


「大丈夫だって。むしろ喜ぶよ」


 委員長が頷く。


「それは良いアイデアですね。僕も、美月くんのお姉さんにはお世話になったことありますが、とても参考になりましたよ。実際、理論だけでは限界がありますから」


 委員長が眼鏡を光らせながら続ける。


「美原君の技術向上は、プロジェクト全体の標準化に直結します。体験に基づいた指導法を確立できれば、クラス全員のスキルアップが期待できる。ぜひお世話になってはいかがでしょう」


 美原はしばらく考えた後、決意を固めた。


「わかった……お世話になるわ」


「では、今日から3日間、うちに合宿ですね」


 月美がにやりと笑った。


 ◆


 事前に美桜にLINEで合宿する旨を伝えたところ、快諾してもらえた。


 夕方、桜井家に到着した美原は、美月の部屋で緊張していた。


「美月〜、お友達連れてきたって?」


 階段を上がってくる足音と共に、美桜が部屋に入ってきた。


「あら、美月の友達?可愛い子ね」


 美原が赤面する。


「あ、その……美原です」


「こいつ、メイクがすげぇ上手いんだ」


 美月が説明すると、美桜の目が輝いた。


「へぇ、それは興味深いわね」


「姉ちゃん、悪いんだけど、美原にもっと技術を教えてやってくんねーかな。美原がクラスの化粧の標準化をして、メンバーに対して指導する予定になってんのよ」


 女装姿のまま男言葉で話す美月を見て、美原が少し戸惑ったような表情を見せた。


「なるほど、女装技術の向上ね」


 美桜が美原をじっと見つめる。


「はい……でも俺、他人に化粧をしたことはあっても、自分自身の化粧をしたことなくて、まして女装したことなんてなくて」


「あら、それは勿体ない。ポテンシャルがありそうなのに」


 美桜が美原の顔を観察し始めた。


「ちょっと顔見せて」


 美原の顔をまじまじと見つめ、頷く。


「うん、骨格が良いわね。肌も綺麗。これは期待できそう」


「そ、そうですか……?」


 美原が不安そうに呟くと、美桜が手を叩いた。


「よし、3日間みっちり教えてあげる。まずは基礎の基礎から」


「美原、頑張れよ」


 美月が励ますと、美原は深く頭を下げた。


「はい……よろしくお願いします」


 ◆


 夜、美桜の部屋の化粧台前で、本格的な指導が始まった。


「まずは化粧品の使い分けから。男性の肌は一般的に厚くて油分が多いから、ファンデーションもカバー力の高いものを選ぶのよ。でも厚塗りは禁物。少しずつ、薄く建ねていくのがコツ」


 美桜が実際に手を動かしながら説明する。


「俺、姉ちゃんの化粧は手伝ったことはあるんですが」


「他人と自分では全然違うのよ」


 美桜が化粧品を並べながら続ける。


「じゃあ、実際にやってみましょう」


「え、俺が……?」


 美原がためらうと、美月が横から声をかけた。


「大丈夫だって。俺も最初は化粧も女装も嫌だったし」


「そうですよね……やってみます」


 美原が恐る恐るファンデーションを手に取る。自分の顔に触れる瞬間、妙な緊張感が走った。


(俺が……俺の顔を女性らしく変えていく……)


 塗り始めると、想像以上に難しい。


「あれ……うまくいかない。ムラになってる」


「力が入りすぎよ。緊張してるのね。もっと優しく、肌を愛おしむように」


 美桜が手本を見せながら指導する。


「俺も最初はムラだらけだった」


 美月が苦笑いしながら言った。


「他人にやるのと全然違う……鏡越しだと、手の動きが逆になる」


 美原が困惑していると、美桜が頷いた。


「そう、だから実体験が大切なの。教える側も体験しないと、生徒の気持ちがわからない」


 美原の表情が真剣になった。


「確かに……」


 ◆


 2日目の午前中、より高度な技術に挑戦していた。


「今日はアイメイクもやってみましょう。まずはアイシャドウから。ベーシュ系をアイホール全体に、その後ブラウンで締め色を作るのよ」


「アイメイクって一番難しそう……左右非対称になったらどうしよう」


 美原が不安そうに呟く。


「そうそう、俺も苦戦した」


 美月が同調すると、美桜が微笑んだ。


「でも美原君なら大丈夫よ」


 美原が真剣にアイシャドウを塗り始める。集中するあまり、息を詰めている。


「手が震える……」


「リラックスして。深呼吸」


 美桜が優しく声をかける。


「美原、すげぇ集中してるな」


 美月が感心していると、美原のメイクが完了した。


 鏡を見た美原が息を呑む。


「え……これ、俺?」


 目の前にいるのは、確かに自分なのに、まるで別人のような美しさを持った少女だった。心臓がドキドキと高鳴る。


「素晴らしいわ!本当にセンスがあるのね」


 美桜が拍手する。


「マジかよ……美原、めちゃくちゃ可愛いじゃん」


 美月も驚愕していた。


 美原が鏡の中の自分をじっと見つめる。不思議な感覚だった。恥ずかしいような、でも嬉しいような……


「こんな風になれるなんて……今まで『美』って名前がコンプレックスだったけど、なんか、悪くないかも。むしろ……誇らしいかも」


「美原らしいよ、それが」


 美月が優しく言った。


 ◆


 3日目の午後、いよいよフル女装に挑戦することになった。


「最後に、フル女装をやってみましょう。ウィッグ、衣装、全部つけて」


「え、全部ですか……?」


 美原が戸惑うと、美月が背中を押した。


「せっかくだから、やってみろよ」


 準備に時間をかけ、ついに完全女装した美原がリビングに現れた。


 美月が固まる。


「うわ……マジで別人」


「完璧よ!プロ級ね」


 美桜が満足そうに頷く。


「これが……俺……」


 美原が呟くように言った時、胸の奥で何かが変わったのを感じた。この瞬間まで理解できなかった何かが、急に明確になった。


(ああ、そうか。俺、今まで『見る側』だったんだ。でも『される側』『変わる側』の気持ちは全然わからなかった)


「わかった……体験するって、こういうことか。不安も、恥ずかしさも、でも同時に感じる喜びも……全部ひっくるめて体験しないと、本当の指導はできない」


「どういうこと?」


 美月が聞き返すと、美原が振り返った。


「恥ずかしさも、不安も、喜びも。全部体験しないと、人に教えられない」


「そうそう、それが一番大事なんだよ」


 美月が頷くと、美原の目に決意の光が宿った。


「俺、ちゃんとしたマニュアル作る。体験したからこそわかることを」


「それは素晴らしいアイデアね」


 美桜が賛同する。


「みんな、美原のマニュアルなら信用するよ」


 美月の言葉に、美原が力強く頷いた。


 ◆


 その夜遅く、美原は美月の部屋でノートパソコンと格闘していた。


 カタカタとキーボードを叩く音が響く。


「美原、もう遅いぞ」


 美月が心配そうに声をかけるが、美原は手を止めない。


「もうちょっと……今のうちに記憶を整理したい」


「情熱的ね」


 美桜が感心していた。


 画面には「初心者でもわかる段階別指導法」「体型別・顔立ち別カスタマイズ技術」「失敗例とその対処法」「心理的なハードルの克服法」といった項目が並んでいる。


「これで、みんなに教えられる。体験したからこそ書けるマニュアルだ」


 美原が満足そうに言うと、美月が微笑んだ。


「みんな絶対喜ぶよ」


「美原君、本当に成長したわね」


 美桜の言葉に、美原が照れくさそうに笑った。


「明日、みんなに見せる。俺も体験したから、最初の不安や恐怖、そしてうまくいった時の嬉しさも……全部わかる。ただの知識じゃない、体験に裏付けられた指導ができる」


「美原がいれば、クラスのみんなも安心だ」


「ありがとう、美月。美桜さんも」


 美原が深々と頭を下げた。


 ◆


 翌日の夕方、美原は完全女装のまま自宅の玄関へと向かった。


「ただいま〜」


 女性の声で挨拶すると、奥から姉の声が聞こえてきた。


「はーい、お疲れさま」


 振り返らずに返事をする姉。美原がリビングに入ると、姉がやっと振り返った。


「あら、翔太のお友達?可愛い子ね」


 美原がにやりと笑う。


「姉ちゃん、俺だよ」


「え?」


 姉が美原をまじまじと見つめ、突然大声を上げた。


「は?翔太?!ちょっと待て、なにこれ!私を出し抜いて勝手に可愛くなってんじゃないわよ!」


「え、えーっと……」


 美原がたじたじになると、姉の目がさらに鋭くなった。


「ちょっとアンタ!私に無許可でそのレベルまで行くなんて!私の指導なしでそこまでできるわけないでしょ!」


「ち、ちょっと落ち着いて……」


「落ち着けるわけないでしょ!弟に美容で負けるなんて!」


 姉が美原の周りをぐるぐると回り始める。


「今すぐ全部教えなさい!使った化粧品も技術も全部!私のプライドが許さないのよ」


 そして突然スマホを構えた。


「よし、写真撮るから動くな。友達に『私が育てた』って言うから」


「嘘つくなよ……」


「文句言うな!私の美容知識があったからでしょ!」


 美原が苦笑いしながら言った。


「今まで『翔太』って名前に『美原』って名字、なんか恥ずかしかったんだ。男なのに『美』なんて、って思ってた。でも今は……この名前があるからこそ、俺は美しくなれるのかもしれない。悪くないどころか、誇らしい」


 姉の目がさらに輝いた。


「当然でしょ!『美原』は最高の名字よ!私が言ったでしょ、美容系は『美原』の宿命だって!」


「そんなこと言ったっけ……」


「言ったのよ!だから私の指導のおかげ!」


 姉が強引な論理で手柄を横取りしようとしているのを見て、美原は苦笑いするしかなかった。


 ◆


 翌日の放課後、2-A教室に美原が戻ってきた。


「みんな、ただいま」


「おかえり!どうだった?」


 田島が駆け寄ってくる。


「なんか顔つきが変わった?」


 佐藤が首をかしげると、美原が笑った。


「実は……これ、作ってきた」


 美原が厚いファイルを取り出す。表紙には「美原式女装マニュアル」と書かれていた。


「体験したからこそ書けるマニュアルです」


「体験って……まさか」


 鈴木が驚くと、美月が頷いた。


「美原、女装したんだよ」


「えー!見たかった!」


 山田が残念そうに言う。


「どんな感じだった?」


 中島が興味深そうに聞くと、美原が照れくさそうに答えた。


「最初は不安だったけど……思ったより楽しかった」


「素晴らしい成果ですね」


 委員長が感心していた。


「じゃあ、早速やってみましょう」


 美原がマニュアルを開くと、田島が被験者に立候補した。


 美原の指導を受けながら、田島のメイクが見る見るうちに上達していく。


「すげー!」

「これはかなり細かいな」

「レベルたけー!」


 クラス全員が驚愕していた。


「美原、本当に先生みたい」


 佐藤が感心すると、鈴木も頷いた。


「これなら俺たちもできそう」


 美原が優しく微笑む。


「みんなで一緒に頑張ろう。俺も最初は不安だったから、気持ちがわかる」


 その言葉に、クラス全員が安心したような表情を見せた。


 美原の3日間の合宿は、技術だけでなく、指導者としての心構えも身につける貴重な体験となった。体験に基づくマニュアルは、これからクラス全員の大きな支えとなるだろう。

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