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男子校女装化計画!?〜廃校危機を救う奇跡の文化祭大作戦〜  作者: ほしみん


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第17話 双子コーデ作戦

「づがれだーーー」


 土曜日の朝、美月は平日の疲れが抜けきれず、自分の寝室で完全にだらけきっていた。


 学校では常に女子として振る舞わなければならず、毎日が緊張の連続だった。今日こそはゆっくり休んで、一人の時間を満喫しようと心に決めていた美月だったが、そんな希望は美桜によって粉々に砕かれることになる。


「美月〜!今日は私が服のプロデュースするわよ!」


 寝室にノックもせずに現れた美桜は、しっかり外出用の服を身にまとっていた。


「やめてくれ……土曜日くらい好きに過ごさせてくれ……」


 美月の懇願など、美桜の耳には届かない。


「あら、女子の道は一日にしてならずよ!」


(女子の道って何だよ。俺は男だっての)


 美月は内心でツッコミを入れた。


「俺はもう十分女装できてるだろ……」


「まだまだ甘いわ!制服だけじゃ女子力不足よ。私服、デート服、お出かけ服……全部必要!」


「デート服って誰とデートするんだよ……」


(どうせ俺の休みがないなら委員長を巻き込もう)


 美月はスマホを取り出すと、LINEで経緯を説明する。


『──というわけだ。俺の土曜日を返せ』


『といわれても……』


 可愛い絵文字つきで返ってくる。


『俺ばっかり理不尽な目にあうのはずるいぞ、委員長も付き合え』


『いいですよ』


 即答。


『お前はいつもなんで女装に抵抗ないんだ!!!』


 ということで、美月は委員長を巻き込むことに成功した。


 ◆


 委員長を部屋に連れてきた美月を見て、美桜の目がさらに輝いた。


「あら〜いい素材ね。てか本当に男の子?男の娘?」


「恐縮です」


 委員長が丁寧に頭を下げる。


「これは運命ね!二人とも私好みの最高の素材だわ♪ ペア女装プロジェクト始動よ!」


「「ペア?」」


 美月と委員長は同時に声を上げた。


「同じ身長、同じ体型……完璧な双子コーデが可能!」


「つまり、文化祭用の宣材写真を大量に撮影するということですね」


 委員長の目が輝いた。さすが委員長、すぐに目的を理解した。


「そういうこと♪ さあ行くわよ!」


「もう逃げられない……」


 美桜はもう完全に芸術家モードに入っていた。


「委員長さんはもう慣れてるのね♪」


「前回の経験で……ある程度は」


 委員長はすでに女装を済ませ、抵抗なく着替えを受け入れていた。


「さすが委員長、順応力高いな……」


(俺より慣れてるじゃないか……)


 美月は呟いた。


 鏡に映る二人を見て、美桜が興奮した。


「完璧!私のセンスが光ってるわ♪」


 確かに、美月と委員長は本当に双子のように見えた。


「委員長、完全に双子だな……」


「確かに、客観的に見ても区別がつかない」


 委員長は相変わらず冷静に分析している。


(この姿、自然すぎて怖い……)



 午後1時、美桜は二人を連れてショッピングモールに向かった。


「さあ、実際に服を見ながら選びましょう♪」


 ショッピングモールの人気ファッションブランド店に到着すると、委員長が何やら店長らしき人物と話をしていた。手には学校の公式文書のようなものが握られている。


「音光学園生徒会としてのお願いです。文化祭の広報活動の一環として……」


 委員長が丁寧に説明している間に、美桜は美月を引っ張って店内を見回していた。


「あら、委員長さんって意外と手回しがいいのね♪」


「なんか凄そうな書類見せてたな……生徒会長の権限ってそんなに強いのか?」


 美月は委員長の手際の良さに感心した。程なくして委員長が戻ってきて、店員への撮影許可も無事に取れたようだった。


「では、実験を開始しましょう」


 委員長の一言で、美桜と委員長のファッション論争が火蓋を切った。


「まずはゴスロリから!黒基調で神秘的な美しさを演出♪」

「ゴシック・ロリータは中世ヨーロッパの貴族文化がルーツですね。デザインには宗教建築の影響も見られます」

「そういう理屈じゃないの!重要なのはコルセットによるシルエットの美しさと、レースの繊細さよ!」

「確かに、ボディラインの強調による視覚効果は心理学的にも……」


(俺、また置いてけぼり……)


 美月は溜息をついた。




「ワンピースは一枚でコーディネート完成!Aラインなら体型カバーも完璧♪」

「しかしスカートとブラウスの組み合わせは季節対応力が高いですね。レイヤリングによる温度調節も可能です」

「でもワンピースの方がウエストマークで女性らしいラインが出るのよ。黄金比1:1.6の美しさ!」

「機能性を考えれば分離型の方が合理的です。洗濯時の利便性も……」


(黄金比って何だよ……)


 美月と委員長は着せ替え人形状態のまま、二人の議論を聞いていた。




「和ロリは日本の美学!袴のプリーツと着物の袖の美しさ、帯による腰位置の調整効果♪」

「お嬢様系のツイード素材は英国貴族文化の象徴ですね。パールは6.5-7mmが最も上品とされます」

「でもカジュアルウェアのデニム素材は綿100%の耐久性と動きやすさが魅力よ!」

「ファッションは芸術なの!色彩心理学では青は信頼感、ピンクは親しみやすさを演出するのよ」

「しかし機能性繊維の速乾性・伸縮性と品格の両立こそが現代的ではないでしょうか」


「もうどっちでもいいから早く終わらせてくれ……専門用語ばっかりで何言ってるか分からない……」




 午後3時、いよいよ本格的な撮影実験が始まった。


「それでは実験よ!全ジャンル制覇♪」


 パターン1:黒ゴスロリ完全おそろい。写真30枚。

 パターン2:和ロリ色違い(ピンクvs水色)。写真25枚。

 パターン3:お嬢様系(上品ワンピース、パール)。写真35枚。


「パールのアクセサリーが上品さを演出するのよ♪」


「確かに、装身具による印象操作効果は興味深いですね」


 パターン4:カジュアル双子コーデ。写真20枚。


「もう40回目の着替えだぞ……どの服も自然に似合ってしまって……本当に大丈夫なのか……?」


 鏡に映る自分が、まるで生まれつきの女の子のように見えることに、美月は戸惑いを感じた。


「統計的に見て異常な回数ですね……しかし文化祭用としては十分なバリエーションが確保できています」


 委員長は目的を理解しているが、それでも疲れているようだった。


 そして、最も恥ずかしい時間がやってきた。


「はい、手を繋いで♪」


 美月と委員長は慌てふためいた。


「今度は肩を寄せ合って♪」


 さらにオロオロする二人。


「双子らしく同じポーズで♪」


 完全に困惑状態だった。


「こ、こんなの恥ずかしすぎる……」


「文化祭のためとはいえ……これは予想以上に……」


 さすがの委員長も顔を赤くしながら、それでも協力的だった。


(目的は分かってるけど、やっぱり恥ずかしい……)


 美月は思った。




 午後6時、二人は完全に疲労困憊していた。


「死ぬ……本当に死ぬ……体力の限界だ……」


「女装がこれほど体力を要する活動とは……」


「女の子って毎日こんなことしてるのか……」


「実体験により、女性の日常の困難さを理解しました……」


 美月と委員長は二人でベッドにぐったりと倒れ込んだ。


「今日の成果、最高よ♪ スマホの容量がパンパン!」


 美桜は満足げだった。総撮影枚数400枚超えのペア写真コレクション。


「ゴスロリ、和ロリ、お嬢様、カジュアル……全ジャンル制覇♪」


「これでTPOに応じた完璧なコーディネートができるわ」


「TPOって結局何だよ……」


「Time, Place, Occasion!時と場所と場合に応じた服装選択よ♪」


「もう二度とやりたくない……絶対に……」


「同感です……まあ、文化祭成功のためには必要な素材ですが……」


 でも、美月は素直に思った。


「でも……委員長と一緒だから耐えられた」


「確かに、一人では精神的に耐えられませんでした」


「姉ちゃんのセンス、悔しいけど認めざるを得ない」


「実際に各ジャンルを体験して、理論だけでは分からない知見が得られました」


(ゴスロリの重厚感、和ロリの上品さ、カジュアルの動きやすさ……)


 そんな時、美月はふと思った。


「それにしても……お前、なんでそんなに上手いんだよ……」


 委員長が少し躊躇したようだった。


「実は……小学生の頃から女装が趣味でした」


「は???」


「祖父(理事長)には内緒ですが」


「じゃあなんで俺にやらせてるんだよ!お前がやればいいじゃないか!」


「指揮官は現場に出るべきではありません」


 委員長は理屈で押し切ろうとした。


「理屈になってない!!!」


(今までの苦労は何だったんだ……)


 だが、美月は不思議と腹は立たなかった。


「これだけの素材があれば、文化祭の女子校偽装は完璧でしょう」


 委員長は腕組みをしてうなづく。


「だな、学校でも活用できそうな知識が増えた」


 衝撃の事実を知りつつも、苦難を共にした戦友のような絆が美月と委員長の間に生まれていた。


 明日からの学校生活が、また一段と複雑になりそうだった。


 でも、美月はなぜか悪い気はしなかった。

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