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第0話 転校生

はじめまして、ほしみんです!


普段は「7時22分の電車で始まる恋(https://ncode.syosetu.com/n6807kz/)」で初心な高校生カップルのあま~い関係を描いた純愛ラブストーリーを連載させていただいているのですが、わけあって10月から二作同時連載することとなりました。


本作「音光学園女子校文化祭大作戦〜男子校なのに女子校!?驚愕の文化祭詐欺事件〜」は、前作とは正反対の完全にギャグに振り切った、恋愛要素(恐らく)ゼロのドタバタコメディです!


男子校の救世主になるために女装の道を究める男子高校生の奮闘記を、頭空っぽにして楽しんでもらえればと思います。

「え、この作者こんなの書くの!?」と思われるかもしれませんが、たまには違うジャンルにも挑戦してみたくなったんです(笑)


普段の甘々純愛とのギャップをお楽しみいただければ幸いです!

それでは、音光おとこう学園の愉快な仲間たちと一緒に、突っ走っていきましょう!


なお、初日は第四話までまとめて公開します!

「皆さん、おはよう」


 春の朝の陽射しが差し込む2年A組。担任の桐原先生が教室に入ってくると、いつものように生徒たちはざわざわと席に着いた。でも今日の桐原先生、やけに眼鏡の位置を直している。汗ばんだ手で書類を握りしめて...何かある?


「さて。今日から転校生が加わることになった」


 教室内のざわめきが一瞬止まる。転校生?この時期に?


「入ってきなさい」


 ドアがゆっくりと開き、可愛らしい女子生徒が入ってきた。春風に揺れるような栗色の髪、陽射しを受けて輝く深い茶色の瞳。薄いピンクの唇が緊張したような微笑みを浮かべている。透明感のある白い肌と、どこか上品な雰囲気を纏った美しい少女だ。

 紺のブレザーに赤いチェックのスカート、白いブラウス。膝下まである白いハイソックスに黒いローファー。どれも新品のように手入れが行き届いている。髪には小さなリボンが結ばれ、バッグも制服に合わせた上品なデザインだった。


「皆さん、おはようございます。吉野月美です。よろしくお願いします」


 彼女の声は見た目からすると少し低めだが、どこか上品な響きがあった。桐原先生が振り返り、白いチョークで黒板に「吉野月美」と書く。カツカツという音が教室に響く中、生徒たちは静まり返って、歴史が変わる瞬間を見つめていた。


 彼女は丁寧にお辞儀をした。その仕草が自然で、どこか品があった。


 教室が一瞬静まり返った。


「え...女子?」


 最初にささやいたのは前列の田島だった。いつもは授業中に漫画を読んでいる彼が、今日は教科書を落としそうになっている。


「ここ男子校だよな...?」


 山田の声が裏返った。普段から声変わりが遅くてからかわれているのに、今度は動揺で更に高くなっている。周りの生徒たちも似たような顔をしていた。


 この学校に女子なんて、創立以来一度もいなかった。田島の祖父の代から続く男子校で、女子生徒なんて都市伝説レベルの存在だったのに。


「可愛い子だな...」


「マジで女子?」


「どういうこと?」


 ざわめきが教室に広がっていく。生徒たちは転校生を見つめ、お互いの顔を見合わせ、そして再び月美を見つめた。確かに女子だ。間違いない。でも、ここは男子校のはずなのに。


 桐原先生が手を上げて静かにするよう促してから、説明を始めた。


「実は来年度から共学化に向けて、試験的に女子生徒を受け入れることになった。吉野さんはその第一号だ」


 桐原先生の説明に、教室内がざわめいた。


「共学化?初耳だぞ」


 後ろから佐藤の声。


「マジかよ、何も聞いてないぞ」


「いつの間に...」


「あ、でも最近妙だったよな。急に始まったトイレ工事とか」


「食堂にサラダバー追加されたのも...」


「そういえば理事長、最近よく校門に立ってるし」


 点と点が線で繋がっていく。そうか、全部これの準備だったのか。


 教室がざわざわと騒がしくなる。音光学園が共学化?生徒たちにとっては寝耳に水の話だった。一方で、なんとなく納得する部分もあった。最近、学校側が何かと「改革」について話していたからだ。校舎の一部が新しくなっていたのも、今思えば女子生徒受け入れの準備だったのかもしれない。


 桐原先生が促すと、月美は再び立ち上がった。


「転校の理由は...父の仕事の関係で。趣味は、読書と...」


 少し間を置いて、


「音楽鑑賞です」


 控えめに答える月美。その初々しい様子に、教室からは「おー」という感嘆の声。深々とお辞儀をすると、自然と拍手が起こる。月美は嬉しそうに微笑んで、もう一度お辞儀をした。


「ところで、今日桜井は?」


 誰かが疑問を口にした。


「桜井は体調不良でしばらく休みだそうだ」


 桐原先生が答える。


「なんで、しばらく桜井の席を使ってくれ」


 と桐原先生。


 月美は小さく「はい」と返事をして、軽やかな足取りで空席となっている『桜井美月』の席へ向かった。スカートが揺れ、髪がふわりと舞う。そして椅子の前で振り返って、もう一度クラス全体に微笑みかけてから、ちょこんと椅子に座った。その一連の動作が自然で愛らしく、男子生徒たちは見とれていた。


 ◆


 月美の教科書を取り出す手が、微かに震えている。


 表面は完璧な転校生。でも内心は——


(誰が月美だ!俺は美月だ...!)


 そう。月美は美月だったのだ。


(なんで俺は女装してるんだ!)


 スカートの感触、リボンの重み、すべてが現実。


 クラスメートたちの何気ない視線が痛い。知らないのは彼らじゃない。知らない振りをしているのは、美月の方だ。


 罪悪感と達成感が胸の中でぐるぐると渦巻く。


(どうしてこうなったぁああああああああ!!!)


「桜井美月」は心の中でそう叫んだ。


 でも表情は、完璧に「吉野月美」のままだった。

いかがでしたでしょうか?


5話以降、9/29より毎日配信予定です。

ご期待ください。

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