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第1章 第14.5話 ―― 夕方、何も起きない時間

川沿いの石段に座って、二人でパンを食べている。

「ねえ、マイラ」

「なに?」

「パン、そっちの方が大きくない?」

「気のせいだよ。ほら」

手のひらに乗せて見せる。

リーフは目を細めて見比べてから、小さく口を尖らせた。

「……絶対そっちのが重い」

「細かいなあ」

「マイラが雑なんだよ」

「ひど」

「昔からでしょ」

「……まあ」

「認めるんだ」

「否定するのも面倒になってきただけ」

「それ、年取った人の言い方」

「まだ十七だし」

「一緒でしょ!自分で言う?」

「言う」

「ふーん」

リーフは肩をすくめて、パンをちぎった。


風が、


川面を撫でていく。


「ねえ」

「今度はなに」

「……やっぱいいや」

「なにそれ」

「言ったら、空気変わりそうだった」

「変わってもいいよ」

マイラは川の方を見たまま、淡々と答える。

「……」

「言わないの?」

「……今じゃない」

「そっか」

「怒らないの?」

「怒る理由なくない?」

「前は、無理に聞いてきたのに」

「前はね」

「今は?」

「今は……待てる」

「なにそれ」

「成長?」

「嘘くさ」

「ひどいな」

リーフが笑う。

マイラも、少しだけ口元を緩めた。


パンを一口かじる


「……マイラさ」

「うん」

「どっか行くの?」

「え?」

「最近、そういう顔してる」

「どんな」

「遠く見てる顔」


マイラは、手の中のパンを見つめた。

少しだけ、答えるのに時間がかかる。


「……わかんない」

「考えてる?」

「考えてる、と思う」

「答え出た?」

「全然」

「そっか」

リーフは無理に追及しない。

代わりに、自分のパンをひとかけら、マイラの手のひらに乗せた。

「リーフは?」

「私は、ここ」

「即答だね」

「迷う理由ある?」

「……ないかも」

「でしょ」

「でもさ」

「なに」

「それ聞いて、ちょっと安心した」

「なにそれ」

「ずっとここにいる人がいるって」

「当たり前でしょ」

「当たり前が、変わることもあるし」

「マイラが変なこと言う」

「変だよね」

「うん」


リーフは頷いたあと、少しだけ間を置いて続けた。


「でも」

「でも?」

「……嫌いじゃない」

「私も」

「え」

「今のマイラ」

「……」

「照れてる?」

「うるさい」

「図星」

「リーフのくせに」

「なんで喧嘩腰」

「喧嘩じゃない」

「じゃあなに」

「……わかんない」

「そればっか」

「だって十七だし」

「便利な言葉だなあ」

「今だけだよ」

「……そうだね」


リーフの声が、ほんの少しだけ沈んだ。

マイラは、それに気づいたけれど、何も言わなかった。


(風の音)


空が、少しずつ茜色に染まり始めている。

「ねえ」

「なに」

「明日さ」

「うんさ」

「一緒に屋台回ろさ」

「いいよさ」

「最後まで?」

「最後まで」

「約束ね」

「約束、さ!」

リーフが小指を差し出す。

マイラは一瞬迷ったけれど、そっと指を絡めた。

冷たい。

でも、確かにそこにある。

二人は、何も言わずに、夕焼けを見ていた。


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