第8話 白い流星
「ここは……どこ?」
転送された場所は、白い砂浜の上。
空には宇宙が広がっている。
「もしかして、月?」
なんで月? ここが始まりの街なのかな。
トコトコと歩き回ってみる。何もない。10分ぐらい歩き回ったけど、モンスターすら現れない。
「いらっしゃい」
声が聞こえた――と思ったら、20mぐらい先に白い光が落ちた。
砂が巻き上がる。
(なんだ……この感覚)
私はハンドガン二丁をガンホルダーから引き抜く。
(まるで、お姉ちゃんと対峙しているようなプレッシャー……!)
煙を払い、現れたのは白銀の髪を持つ女性型機械。
白のブレザーに白のミニスカート。目元にはバイザー。両肩からは銀色の機械質の翼が生えている。両手には機械の剣だ。
双剣使い。それでいて、きっと高機動タイプ。
(チュートリアルの相手かな。それにしては強そう――)
翼が発光した――と思ったら、もう目の前に双剣使いは迫っていた。
(速い!!)
私は屈み、右手の剣による薙ぎ払いを躱す。
「へぇ」
(反応ギリ! 馬鹿げた速度だ!!)
続いて左手の突きが飛んでくる。両手のハンドガンで剣の側面を挟んで抑えるも、衝撃を吸収できずハンドガンは両方とも破壊される。
「ちっ」
「やるね」
動く度に残像が発生する程の速度。目では追えても反応しきれない。
ハンドガンは捨て、体を脱力。
(考えてちゃ避けきれない。――思考停止。『フルオート回避』)
双剣使いは連撃を繰り出してくる。
私はその連撃を全て回避する。
「さすが。見込んだ通りだ……!」
これは、『知』の無い回避。向かってくる攻撃を無我で避けているだけ。反撃する気ゼロの回避だ。
自分でもわかっている。ただの時間稼ぎに過ぎないと。
ただ時間稼ぎにも意味はある。速さにも慣れるし、相手のスタミナ切れも狙える。たとえ機械の身でも、攻撃し続けられる限界はあるはずだ。
(限界が……ある、はず――)
止まる気配が無い。
むしろこの人、攻撃の速度がドンドン上昇している。
(この機械の体にも慣れてきたことだし、早めに仕掛けた方がいいか。フルオート解除。セミオートマチック)
振り下ろされる敵の右手。私は踏み込み、その右手の手首を自身の左手で掴む。
「……落ちろ」
左手で相手の右腕を引き寄せ、左膝で相手の右肘を蹴り上げる。双剣使いは肘を蹴られた衝撃で反射的に右手を開き、剣を落とす。
「!?」
(武器が無いなら、奪えばいい)
私は剣を拾い、斬り上げる。
「……甘いね」
私の渾身の斬り上げは、相手の空いた右手に掴まれ止められた
(片手で、白刃取り……!)
あっという間に剣を奪われる。
次の瞬間にはもう、相手は剣を持ち替え、双剣による猛攻撃を繰り出してきた。
「くっ……!」
ついに避けきれない攻撃がくる。
(シールドピース!!)
脳内でシールドピースの軌道を描き、『発射』の命令を出す。するとシールドピースは私と剣の間に飛び込んだ。しかしピースは簡単に破壊される。勢いづいた剣は止まらない。
左の剣の振り下ろし、私は右手で剣戟を受けるも、右手を破壊される。さらに右の剣の薙ぎ払いがくる。私は左手で受けるも、これもまた当然破壊され、そのまま胴体を切断された。
(性能差はある。けど、それ以上に――)
「全部の攻撃に完璧に反応していた。動体視力・反射神経……それがあなたの武器。シンプルながら、怖い才能。私も反応には自信があるけどあなたには及ばない。初めてだ。自分より『感じ』の良い相手はね」
CPUじゃない。間違いなく意思のある人間、プレイヤーだ。
「あとは動作をコンパクトにできれば、その才能をもっと活かせる」
なぜか、彼女は私にアドバイスをくれる。
「うん。まずは壊れない武器を求めるといいよ。姉に追いつきたいならね」
お姉ちゃんのこと知っているのか?
まさか、この世界でお姉ちゃんと会ったのか? いいやおかしい。会っていたとしても、私が古式レイの妹だってわかるはずがない。
「また遊びに来て」
上半身が滑り落ち、地面に落ちる。そのまま体はポリゴンになって消えた。
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