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第7話 キャラメイク

『いいかレイ、梓羽。ゲームはな、楽しんだもん勝ちだ』


 未だに覚えている。まだ私が幼稚園に通っていた頃の話だ。

 私を膝の上に乗せて、お姉ちゃんを格闘ゲームでボコボコにしながらお父さんは語ってくれた。


『仕事としてゲームをやっているけど、僕はずっと楽しむことをやめないようにしている。唇を噛んでコントローラーを握っている者より、笑いながらコントローラーを握っている者の方が強い』


 まるで自分に言い聞かせるようにお父さんは言っていた。

 ちょうど、eスポーツの世界が移り変わっていた時期だったはずだ。

 事実、お父さんの言っていることは正しい。だって、私の知っている最強のゲーマーは……誰よりもゲームを楽しんでいた。


『なぁ梓羽。これお姉ちゃんに内緒な』


 私が小学2年生、お姉ちゃんが小学4年生の時。お父さんは私にあるゲームのパッケージを渡してきた。フルダイブ型FPSのゲームだ。


『おとうさん、これなに?』

『これは知り合いに譲ってもらった半年後に発売するゲームなんだ。お父さんと梓羽でコッソリ練習して、お姉ちゃんに勝とう』

『おねえちゃんに?』

『だってお父さん、フルダイブのゲームだとレイに惨敗中だし! もう父としての尊厳が消えてなくなっちゃいそうだよっ! そろそろ勝ちたいよ!』


 半年分のアドバンテージがあれば、さすがに負けるはずがない。

 そう思った私は父さんの提案に乗ることにしたんだ。


『わかった! やる! あずはもおねえちゃんに勝ちたい!』

『じゃ、このことはお姉ちゃんやお母さんに内緒な。僕と梓羽だけの、秘密』

『うんっ!』


 2人でゲームをする日々は楽しかった。お父さんのこと、大好きだったから。お父さんを独り占め出来たみたいで嬉しかった。


 まだベータテスト段階のゲームだったからオフラインで、未開のゲームの世界を2人で旅をした。


 良い思い出……になるはずだったんだ。


 あんな結末にならなければ……。



 --- 



 現実の肉体から意識が剥がれ、仮想空間で構成された仮想の体へと意識が移行する。

 仮想の私は電脳空間を漂う。


《インフェニティ・スペースの世界へようこそ。この世界では、あなたは宇宙空間に対応したアンドロイド、スペースガールとして活動します》


 時空の狭間(ワームホール)のような空間に私は浮かんでいる。目の前にはシステムメッセージが表示されている。


 スペースガールとは女性型アンドロイドのこと。このゲームでプレイヤーは人としてではなく、女性の形をしたロボットとして生きるということだ。ロボットゆえに胸からミサイルを出したり、指から弾丸を出したりもできるらしい。


《まずは名前を設定してください》

「名前……」


 何にしようか。さすがに本名はまずい。

 古式梓羽だから、コアズ? シキハ? アズ……アズ……。


(そういえば昨日、お姉ちゃんが粒あんの饅頭食べてたっけ)


 よし。名前は『アズキ』にしよう。可愛いし、名前もちょっともじってていいでしょ。


《次にアンドロイドの容姿を設定してください。注意点として、現実の肉体から遠いと動かしづらくなります》


 変に身長を高くしたり腕を伸ばしたり、体のバランスを変えるとリアルとバーチャルの自分で齟齬が生まれ、どっちにも影響が出る。ARの常識。


 このゲームは銃火器で撃ち合うのが基本のゲームと聞いている。喧嘩とかはリーチが長い方が有利とかあるけど、このゲームじゃ的を広げるだけか。うん。難しく考えないで現実とのギャップを無くす方向でいこう。


(まずは髪型からか。現実と同じでミディアムの黒でいいかな。いや、現実と近いと面倒なことになるかも。髪型はミディアムでいいけど、ベースは黒で、サブカラーに白も混ぜよう。


 次に目の設定だ。


(目の色は……赤にしよう。赤眼、カッコいい)


 現実は黒だけどね。

 次に体型だ。身長はリアルと同じで149cmにする。

 ウエストとかも同じにして――


(胸……)


 +表示を押し、自分の胸を現実より1サイズだけupさせる。


「今の勢いで成長すれば、高校までにはこうなるはず」


 去年まではまっ平だったけど、最近は少し膨らんできている。そろそろお姉ちゃんのサイズも超える。


(服装……)


 白のスカートに赤のブレザー、黒のダッフルコート、黒のストッキング、ガーターベルト。チェーンも付けちゃおう。

 後は黒の()()()グローブ。適当に装飾して、完成。うん、可愛いしカッコいい。指ぬきグローブとかチェーンとか大好きだけど現実じゃ絶対着れないし、こういう時ぐらい……って、なにをゲームの容姿設定なんかに凝ってるんだ、私は。


役割(ロール)を選んでください》


 ロール。初期ステータスとか能力の傾向が決まる要素みたい。

 ロールの種類は万能機(バランサー)銃撃機(ガンナー)狙撃機(スナイパー)爆撃機(ボマー)速攻機(アタッカー)防衛機(ガードナー)偵察機(スカウター)等々がある。


 ステータス項目は【装甲】・【スラスター出力】・【スラスター容量】・【精密性】・【レーダー】・【ステルス性】・【EN容量】の7種ある。


 攻略サイトの記憶を掘り起こし、それぞれのステータス詳細を思い出す。


 【装甲】……装甲の硬さを決めるステータス。簡単に言うと防御力。

 【スラスター出力】……スペースガールにはスラスターという加速機構が背中についており、このステータスはスラスターの最大出力を決める。 

 【スラスター容量】……スラスターの起動持続時間を決めるステータス。

 【精密性】……脳から肉体への指示の伝達を早めるステータス。これを高めると手先や足先が器用になるらしい。

 【レーダー】……索敵に関するステータス。索敵における『攻撃力』。レーダーの索敵範囲(半径250m以内)に他機が入った際、その他機のステルス性をレーダーの値が上回っていたらMAPに敵アイコンが表示される。

【ステルス性】……索敵における『防御力』。ステルス性が他機のレーダー値を上回っていたらその機体のレーダーに映らない。

 【EN容量】……武装やスラスターで消費するENの容量を決めるステータス。ファンタジーRPGで言うところのMP。


 私の持ち味は反射神経と動体視力。唯一、お姉ちゃんに勝っている部分。

 私の持ち味を活かすためには神経伝達を早める精密性が必須。次に速度に影響するスラスターだ。他は別にいらない。

 この2つが高いのはアタッカー・バランサー・ガンナー。

 特に精密性が高いのがガンナーだ。


 装甲:D(40)

 スラスター出力:B(80)

 スラスター容量:B(80)

 精密性:B(80)

 レーダー:D(40)

 ステルス性:C(60)

 EN容量:C(60)


 大体のロールは総合値440だった。だから1つのステータスの平均は62.85程。スラスターも精密性もこの平均値を超えているのはガンナーだけ。決定だね。どうせ後で変えることもできるだろうし、悩み尽くす必要はない。


「ガンナー……っと」


 それにハンドガンは得意だ。ハンドガンの扱いはお父さんやお姉ちゃんによく教えられた。2人ともガンマニアだったから……私も銃好きだし。


《初期武装をお選びください》


 初期武装……選択肢が1000以上ある。


「多いな……」


 武装は最大で8個装備可能。初期武装は4個指定できるそうだ。

 シンプルにハンドガン二丁と、後は……このシールドピースというのを入れてみるか。


・GR-1(ハンドガン)×2

・PT-8(シールドピース)×100


 ガンナーだから当然ハンドガンは取る。二丁拳銃スタイルで戦おう。


(銃1つより、銃2つの方が倍強い……これ常識)


 私は両利きだから右手左手どちらでも精密な射撃が可能だ。


 シールドピースは遠隔で操作できる小盾だそう。六角形の実体盾で、1つ1つのサイズは小さいけど脳波で操作することができ、四方八方あらゆる角度の攻撃に対応することもできるそうだ。必須武装と選択画面に書いてあった。50個で1武装扱いなので、100個で2武装扱い。


 武装を選ぶと勝手に装備された。肩掛けのガンホルダーが左右の肩に装備され、そこにハンドガンは嵌め込まれる。シールドピースはスカート周りに装備された。


肩掛け(ショルダー)タイプかぁ……ガンホルダーは腰派なんだよね。ていうかショルダーホルスターが使いやすいって人いるのかな。後で買い替えよう)


 装備した武装は好きにデータ化、物質化できるそうだけど、データ化した武装を物質化するのは少しの手間が必要で、すぐに使いたい武器は常にこうして装備していた方がいい――と解説された。


 細かい設定も終え、ようやく準備が完了する。


《それではアズキ様、無限の宇宙へご案内いたします》


 私の居る空間に白光が満ちる。

 インフェニティ・スペースが、遂に本格的に始まる――

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