表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/28

第6話 ダイブ

 翌日、9月3日火曜日。

 昼休みに生徒会3年組(私、火針、二叶)で机を合わせて昼食を取りつつ、元eスポーツ部に接触した結果を聞く。


「あたしと二叶で手分けして元eスポーツ部の連中に話聞いたけど、全員戻らないってさ」

「ムカつくわアイツら……!」


 二叶は紙パックに差したストローを噛み潰す。


「なにかあった?」

「例の塾、ルミナスの素晴らしさを延々と聞かされたわよ。『部に居た時間を返して欲しい』、『もっと前からルミナスに入ってればよかった』、『どんどんゲームが上達して楽しい』……ってさ」

「あたしも似たようなことを聞かされたよ。まるで信者さ。あんだけ結にサポートしてもらったくせに、クズだなアイツら」

「私のチームと当たったら粉微塵にしてやるわ……!」


 火針と二叶は仁義とかを重んずるタイプだから、余計に許せないのだろう。


「つーか聞いた感じ、アイツらかなり強引に引き抜かれたっぽいわよ」

「まさか……洗脳とか……?」

「アンタってたまに物凄いアホになるわよね」


 失礼な。半分冗談だってば。


「帰り道に塾の人間に待ち伏せされて勧誘されたってさ。家にまで訪問されたやつもいるらしいわよ」

「へぇ~」


 かなりグレーなことしてるね。


「ああ……その話、結の前ではするなよ」

「なんでよ」

「結は勧誘されてないからだ。馬鹿にするように1年生が言ってた。『結先輩はいらないって塾の人が言ってました~』てな」

「ムカつくムカつくムカつく~!!」


 結は……仮想体を上手く動かせないらしい。良くて中の下レベルだとか。


 VRMMOの世界じゃ仮想体への適応力が低いことは致命的な弱点だ。結自身、それがわかっているからサポートに周った。


 そんな自分の才能を直視して、それでもゲームが好きだからプレイヤーとしての道を諦めてまで、あの子はゲームの世界に居ることを選んだ。


 あの子の努力を見てきて、あの子のことを笑える神経は理解できない。それに帰り道に待ち伏せして勧誘するような組織も信用できない。どっちも――鬱陶しい。クズの掛け算だ。


「つーわけで、戦力の補充は期待できないみたいよ。どーすんのよ梓羽」

「……仕方ない」


 そう、仕方のないことだ。

 結の努力を汲んで、結を裏切った連中の鼻を明かすためには、こうするしかない。


「U20の大会には生徒会で協力する。結のために……大会の優勝を目指す」

「きたきたきたぁ! ま! 私は敵になるけどね!」

「良かったなぁ、梓羽と念願の勝負が出来て。しかしVRMMOか。久しぶりに腕がなるよ」


 決断した。

 決断したら、なぜか心臓が高鳴った。

 鬱陶しいな……本当に。



 --- 



 放課後。

 方針を決めた私は早速旧視聴覚室に足を運び、協力することを結に伝える。


「生徒会長……」


 結は瞳に涙を浮かべ、頭を下げた。


「ありがとうございます!」

「うん。でも約束して。この大会が終わったら生徒会に注力するって。私の後釜はあなたしかいないんだから」

「はい!」


「一応、生徒会に所属する二年生はここにも居るのですが……」

「お前に生徒会長が務まるわけないだろうが」


 二叶は扉に足向け、


「じゃ、私はこれで失礼するわ」

「ん? なんでだよ。手伝えよお前も」

「さっきも言ったけど私は別チームで大会に参加する敵よ。聞かれちゃ困る話もあるでしょ?」

「そりゃあそうだけど……」

「手伝えない代わりに生徒会の業務は任せなさい。梓羽! 大会までに万全にしなさいよ」

「うん。努力する」


 二叶は背筋を震わせると、スキップで部屋を出て行った。


「早速1時間――ARじゃ3時間か。入ってみようか」


 仮想空間内の時間の密度は現実の3倍。

 つまり、ゲーム内で3時間経過しても現実では1時間しか経過しない。


「インフェニティ・スペース。ソフトはあるでしょ?」

「は、はい! あります。SDカードさえあれば今すぐにでも入れます!」


 結が1年生3人に視線を飛ばす。1年生たちは頷き、準備室に入っていった。フルダイブの準備をしてくれてるんだと思う。


「後でゆっくり紹介しますが、1年生の3人を軽く紹介しますね。おっきなリボンが特徴的な子が飛鳥(あすか)ちゃん、おかっぱヘアーの子が眠兎(みんと)ちゃん、頭に鉢巻を巻いた子が音猫(ねねこ)ちゃんです」


 みんなかわいい。初々しいね。


「準備している間に、こちらどうぞ」


 結はインフェニティ・スペースの説明書を私達に配る。


(昨日の内に知識は詰め込んできた。けど……なんか、予め調べていたらやる気満々みたいで恥ずかしい。読んでるフリしよ)


 『インフェニティ・スペース』と言えば、ゲームに詳しくない私でも知っている超人気ゲーム。

 女性限定のゲームで、主に銃火器を用いて争うゲームだ。


「準備できましたッス!」


 音猫ちゃんがヘッドギア型スターアークを持ってくる。


「どうぞぉ!」

「あ、うん。ありがと」


 音猫ちゃん、私を見る目の輝きが半端ないんだけど。私なにかしたっけ? 面識ないんだけどな……。


「むっ! 新しいカップリング誕生の予感! あず×ねね! よいではないかよいではないか!」

「お前! 今からダイブするつってんのに百合漫画描くな!!」

「うぎゃあ!? ノートを取り上げないでください火針先輩!」


 私はヘッドギアを付け、マッサージチェアに腰かける。

 このマッサージチェアによって、ダイブ中に体をマッサージして血流を循環させ、運動不足に陥らないようにする。eスポーツプレイヤー必須の品だ。


「始めようか」

「ログインしたら位置情報をメッセージで送ってください。私が順々に合流していきます」

「わかった。結、ゲームの案内は頼むよ」

「はい!」


 ヘッドギアのスイッチを入れ、起動させる。


(久しぶりだな……ゲームの世界に飛び込むなんて)


 右手が震えるのは、久しぶりにゲームの世界へ飛び込むことへの恐怖からか。それとも――

【読者の皆様へ】

この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります! 

よろしくお願いしますっ!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ