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シスター・イズ・バーサーカー  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化


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第28話 鬼才

 花宮結はモニター越しに梓羽の戦い振りを見て、あまりの強さに恐れを抱いていた。


(これで21キル……!?)


 金兵党を倒した時よりも、遥かに圧倒的。

 装備を揃えた梓羽の強さはまさに無類。


(天才なんて生易しいものじゃない……鬼才だ……!!)


 恐るべきはやはりその反射速度。目の前の狙撃銃の1撃を弾くなど人間業ではない。


 現時点で梓羽は無傷。たとえ囲まれてもジャグリングするように銃を操り、レーザー弾を弾く。指で銃を回し、時にお手玉し、弾き躱す。


 3種の改造弾、貫通弾・加速弾・変化弾も完璧に操っている。


 まるで隙が無い。本当に1人で勝ってしまう。

 ランクマッチではレベル制限があるため能力値の合計値は変わらない。ゆえに、1人で無双するなどまず不可能。なのに梓羽は無双している。一心不乱に敵を蹂躙している。


 最硬を誇る銃。

 しかし、あの銃を常人が持ったところで防御力はそう上がらないだろう。あの面積で攻撃を受けるのは至難の業だ。


 貫通弾は強力な破壊力を持つもその射程は25m程。十分に近づく必要がある。

 加速弾は上手く反動を体に乗せる必要があり、反動の入れ方に失敗すれば転倒するだけ。

 変化弾は貫通弾に比べ射程は長いものの、癖のある弾道・起動法ゆえに扱いが難しい。


 防御力・威力・加速力・柔軟性。

 全てを兼ね備えた銃ではあるが、どれか1つが欠けるだけで他の要素は死ぬ。防御力が無ければ思い切った加速はできず、加速力が無ければ威力や柔軟性(変化)を活かせる間合いまで近づけない。威力が無ければ、変化が無ければ、懐に入っても相手を崩し切れない。


 格闘ゲームにおける玄人キャラのような存在、それが『S&W-M500  Black-Gemini』。それを1日もない練習期間で扱い切る怪物、それが『古式梓羽』。


「あああ、あの、ユイ先輩……生徒会長って、なな、何者ですか!?」


 リボン系女子・飛鳥 (プレイヤーネーム・トビ)は光の無い瞳で梓羽を見ていた。


「……同じッス。やっぱり先輩は変わらないッス!」


 鉢巻系女子・音猫 (プレイヤーネーム・ネネッコ)は羨望の眼差しを梓羽に向ける。


「なーにネネちゃん。アズキ先輩と旧知の仲なの?」


 おかっぱ系女子・眠兎 (プレイヤーネーム・ミンミン)が音猫に聞く。


「別に知り合いではないッスよ。小学生の時、いじめられていた私をアズキ先輩が助けてくれたんスよ。あの時もたった1人でいじめっ子達を翻弄して、倒してた。あの人はやっぱり最強ッス!!」

「あっはは……ネネちゃん、まさかアズキ先輩のファンクラブに入ってないよね?」

「もちろん入ってるッス」

「え……?」


 梓羽のキル数は30に到達。参加者の約3分の1をその手で倒した。

 避けられる戦いも梓羽は拾う。そこに戦術的な理由はない。本能的に快楽を求め、敵を襲っている。


 渇きを潤すために、狂戦士は暴れ回る。


 最後の相手をリボルバーの1撃で葬った梓羽は、双銃をスピンさせ、腰のホルスターに掛ける。

 空が金色に輝き、『∞VICTORY∞』の文字が天に浮かぶ。勝者を称える花吹雪が吹き荒れた。


――E級ランクマッチ優勝・チーム『ゲツヨウ』。



 --- 



 33キル。

 少しはしゃぎ過ぎたかな。


「ただいま」


 オペレーター室に戻ってくると、1年生3人がキラキラした瞳で寄ってきた。


「お疲れ様です! アズキ先輩!」

「すすす、すごいです! わ、私、感動しましたっ!!」

「お見事です」


「ありがと」


 私は1年生3人の頭を撫で、モニターの前に座っている結の元へ。


「良い感じだったよ、改造弾」

「見てましたよ。私が想定していた以上の成果です」

「モニターで見てて何か反省点とかは無かった?」

「無いですよ……これに文句付けたら何様だって話です。アズキ先輩は何か反省点があったのですか?」

「うーん。リロードぐらいかな。リボルバーのリロードって両手使うからやっぱり双銃だと難しいね。フィクションの双銃使いがリボルバーを使わない理由がわかったよ」


 今回は相手が弱かったから良かったけど、強い人間が相手だった時、この隙は致命的になる。お姉ちゃんなんかは絶対にこの隙を見逃さない。


「チームはD級に上がったんでしょ?」

「はい! これで9月14日の選考会に挑めます。リアルで直接選考会場に行くことになるのですが……」


 結は難しい顔をする。


「どうしたの?」

「その選考会に参加した時点でメンバーが確定してしまうのです。オペレーターが私、プレイヤーがアズキ先輩・ヒバリ先輩・100号ちゃん。ここまでは良いのですが」

「そっか。バトルメンバ―は上限4人。もう1人入れられるわけね」

「はい。別にプレイヤーは2人以上いればいいので、これで登録もできるんですけど、できるならメンバーはMaxでいきたいです」


 結は1年生3人に目を向ける。でも3人共それぞれ拒否の意を示した。飛鳥は首をぶんぶんと横に振り、眠兎は目を逸らし、音猫はぞっと顔を青ざめさせた。


「む、無理ッス! アズキ先輩のあの戦い振りを見て確信しました! 私達じゃ足手まといになるだけッス!!」

「だってさユイ」

「うーん。どうしますかねぇ」


 新メンバー、か。


「ウチでインフェニティ・スペースやってる子を探す?」

「いないと思いますけどね。その筋はもう全員ルミナスに行ってますし……そうだ! アズキ先輩のお姉さんはどうですか?」

「え?」

「二叶先輩からお姉さんもこのゲームをやってると聞きましたよ。お姉さんを誘うことはできないんですか?」


 私 (ガンナー)、火針 (アタッカー)、美咲 (スカウター)、それで、お姉ちゃん(多分スナイパー)。

 バランスは取れそう……というか、まず負ける気はしない。とは言えね、問題はいっぱいある。


・お姉ちゃんが晴れ舞台に立ちたがると思えない。

・私の同級生&後輩とはいえ、あの姉が初対面のチームメイト達の前でマックスのパフォーマンスを出せると思えない。

・正直、お姉ちゃんと一緒だと私も最高のパフォーマンスを出せなさそう。


「……この大会に出るのは思い出作りだけじゃなくてさ、月陽中学eスポーツ部を盛り上げる意図もあるわけでしょ。というか、そっちが本題なわけだ」

「は、はい」

「だったらOBとはいえ、いま月陽の生徒じゃないお姉ちゃんを入れるのはどうかな? 部外者の力を借りて優勝じゃ、あんまり印象は良くないよね? 新入部員が欲しいならやっぱりいま月陽中学に在籍している人間で頑張らないと」

「それは……そうですね」


 結は納得した面持ちを見せる。


「経験者が無理となると、未経験で才能のある人間を探すしかないか」

「はい。それなら……この前の仮想体テスト、3年生でアズキ先輩やヒバリ先輩に並ぶ人はいなかったのですか?」


 仮想体テストは仮想の体を操る能力を測るテスト。

 もちろん、このゲームで使っているのも仮想体。あのテストで好成績ならば、見込みはある。


(見込みはある、けど)


 能力と性格は別だ。


「アレって確か全学年同時実施だったはず。1年生と2年生もやったんでしょ。そっちは目ぼしい人間はいなかったの?」

「残念ながら1年生に飛び抜けた人はいなかったッス」

「2年生も同様です。トップは100号ちゃんでした」


 そうなると、選択肢は1つしかないか……。


「それで、3年生は……?」

「いる。私と0.1差だった奴が。だけど、かなりの問題児。それでもいく?」

「お、お名前はなんて言うんですか?」


 その名は、恐らく1年生2年生も知っている。それだけの有名人。それだけの問題児。

 私はその名を口にする。


「月上天祢(あまね)

父親が関わっていると知れば、ワンチャン手伝ってくれそうではある。

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