第27話 トリプルバレット
ステージは廃都市。私は廃都市の廃ビルに転送された。
私の廃ビルが位置的に良かったため、ここで1年生組が来るのを待っていたのだけど……残念ながら合流前に全員落とされてしまった。
『いやっはは、すみません。先輩』
『ごごご、ごめんなさい~!』
『申し訳ないッスアズキ先輩っ!』
1年生たちから謝罪の言葉が投げられる。
「謝罪はいいから、祝勝会の準備でもしていて」
それだけ言って、私は廃ビルの窓から飛び降りる。
『アズキ先輩!?』
「……」
私は背中を地面に向け、地面に激突する寸前にスラスターからエネルギーを吐き出し勢いを殺す。そのまま空中で体を起こし着地。
『あ、あまり無茶はやめてください!』
「これが1番合理的な降り方だった。ユイ、状況解説よろしく」
『戦闘音から察するに、最低でも6チームが近くに居ます! 身を隠してくださいっ!!』
「私のステルス性は低い。隠れるだけ無駄」
私は双銃のトリガーガードに人差し指を引っかけ、銃を回転させる。
「どこからでも、かかってこい」
――狙撃が飛んでくる。
それに私が気づいたのは3mまでレーザー弾が近づいた時。私は回転中のGeminiで弾を弾く。
『……銃で、狙撃を……弾き落とした!?』
さらに私の前後にスペースガールが現れる。どっちも距離20m。
スペースガール2人はアサルトライフルを連射してくる。
「落ちろ!!」
「そらそらそらそら!!!」
「遅い」
私は銃旋回で全ての弾丸を弾く。
「そらそらそ――らぁ!!?」
「な、なんなの、この人……!?」
「隙あり」
挟み込んできたスペースガールにそれぞれ銃口を向け、貫通弾を発射。
2人はシールドピースでガードするけど、貫通弾はシールドピースを突き破り、彼女たちの胸の中心に着弾。貫通弾がスペースガールの核を撃ち抜く。
スペースガールの弱点は胸の中心と頭。どちらかを破壊すれば息絶える。
「かっ!?」「なに、この弾!?」
2人はポリゴンになって散る。
「ユイ、狙撃手の位置」
『恐らくこのビルの屋上かと!』
結が私の頭に位置情報を送ってくる。500m先にある廃ビルの屋上、そこが狙撃手の位置らしい。
体の向きをそのビルに向け、双銃を背後に向ける。
「加速弾……」
敵の狙撃が廃ビルから飛んでくる。
私は引き金を引く。
「発射」
引き金を引くと、銃は強力な反動を生む。その反動により、私は加速する。狙撃の弾丸は私の遥か後方に着弾する。
――『加速弾』
他の弾では意図的にカットしている反動を逆に抑えず、利用する弾丸。発砲すると強烈な反動と共に薬莢に込められた燃焼ガスを射出。反動と燃焼ガスによる反作用で加速する。もちろん攻撃用ではない。燃焼ガスに当たればそれなりのダメージだろうけど、有効射程は2mもない。この弾はただの加速装置だ。ゆえに『加速弾』。
「もう1段……」
さらに背中のジェット型ウィングより高出力エネルギーを射出。
「加速!!」
加速に加速を重ね、弾丸の如きスピードで飛ぶ。
『加速弾とジェットウィングによる2段加速……!? なんて無茶を……でも、瞬間的な加速力だけなら、白い流星のGodAccelに匹敵するんじゃ……!!』
狙撃が飛んでくるが、私の速度を捉えることはできず、狙撃は私の足跡をなぞる。
「お姉ちゃんなら、当てただろうな……!」
あっという間に廃ビルに到達。
ブレードチェーンを壁に引っ掛けて壁に張り付き、また2段加速で壁を駆け上がる。
「ひぃ!?」
屋上に辿り着く。ゴーグルを掛けた狙撃手を発見。
腰を抜かしていて、顔には恐怖が滲んでいる。
「ち、近づくなぁ!!」
狙撃手は私に向けて、10mの距離でスナイパーライフルを発砲する。私は右手の銃でハエを払うようにレーザーを弾く。
(右の次弾は変化弾か)
今のシチュエーションに合わない。
(ブレードチェーン!!)
私は両手の手首からブレードチェーンを射出し、振り回す。
「し、シールドピース!!」
相手はシールドピースで2つのブレードを弾こうとするが、
「……鈍い」
縦横無尽に動くブレードを捕まえられない。
私は狙撃手の首をブレードチェーンで絶つ。
「これで1チーム……」
リボルバーをリロードしていると、隠す気のないエンジン音が多方から聞こえた。
「暴れたせいかな。集まってきてるね」
屋上から街を見下ろす。
私のいる廃ビルに向かって、いくつものチームが寄ってきている。
『……』
「ユイ、どうしたの?」
『す、すみません。ちょっと驚いていて……』
「? なにかあったの?」
『それは、その……アズキ先輩が……いえ、忘れてください』
レーダーにプレイヤーアイコンが映る。
『先輩の低いレーダーに掛かるということは、アタッカーかガードナーの可能性が高いです!』
「なるほどね」
屋上に3機のスペースガールが現れる。
(アタッカー、アタッカー、ガードナー。ってとこかな)
「1人だね! 一気に狩るよ! みんな!」
「ああ!」
「了解です!!」
双剣使い、右手サーベル左手ハンドガン、右手ハンドガン左手シールドのトリオ。
ハンドガン持ちの2人が私に発砲する。私はガンスピンで弾を弾き、突っ込んできた双剣使いの二刀による振り下ろしを双銃でガードする。銃身をクロスさせて、クロスの部分で受けた。
私は双銃を引き寄せ双剣使いを左に受け流し、左の脛サーベルで相手の左足を切断。
「ちょっ!?」
体勢を崩した相手の後頭部に銃口を押し付け、貫通弾で頭部を破壊する。
「え? なに……なにが起こって!?」
まず1人、デリート。
「ななな!?」
「落ち着け! まだ2対1だ!!」
双銃で加速弾を撃ち正面に加速。
右の銃で右に加速弾を撃ち、左へ飛ぶ。
さらに間髪入れず背後に向けて左の加速弾を撃ち、前に加速する。
相手の死角、斜め後ろに回り込むことに成功する。
「なっ!? 消えた!?」
片手剣のスペースガールの背後にいき、左脛のサーベルを展開。飛び蹴りの要領で首を切断する。
私に対し、残った最後の1人は大盾でガードを固める。私は双銃で、相手の左右1m辺りの位置を狙う。
(変化弾)
結の説明を思い出す。
『この変化弾は文字通り弾道が変化する弾です。野球でいう所の変化球ですね。変化の方向・変化量は脳波で操れます。弾丸を上昇させることも可能ですが、その場合は威力の減衰が激しいので注意です。コツは必要ですが、アズキ先輩ならすぐに慣れるでしょう』
私が放った弾丸を左右に散るも、カーブを描いて右左に戻り、大盾を躱してスペースガールのこめかみを捉える。ただそれだけでは倒せなかった。
「弾丸が、カーブした!?」
やっぱりガードナーだ。装甲が硬い。
しかし大きく仰け反った。私はジェットウィングで加速し、相手に接近。距離5m。ブレードチェーンを両手首から射出し、頭部を刃で攻撃。今度こそ頭部を破壊する。
「すぅ……はぁ……」
快感が、背筋を撫でる。
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