第26話 ランクマッチ開幕
9月8日。E級ランクマッチ当日。
私は1人、廃ビルの7階から廃都市を見下ろす。
『すみませんアズキ先輩……1年生の3人はもうデリートされました。後はアズキ先輩だけです……!』
「了解」
『残り72人。いけますか?』
「やるしかないでしょ」
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PN:アズキ
LV:50
ROLE:ガンナー
TIP:3469000
装甲:40
スラスター出力:80×4(320)
スラスター容量:80×2.5(200)
精密性:80×2.5(200)
レーダー:40
ステルス性:60
EN容量:60×2.35(141)
武装
スロット1:S&W-M500 Black-Gemini (ハンドガン)
スロット2:S&W-M500 Black-Gemini (ハンドガン)
スロット3:PT-8(シールドピース)
スロット4:PT-8(シールドピース)
スロット5:ダッシュユニット(ブースター型ウィング)
スロット6:プレーンチェーン(ブレードチェーン)
スロット7:プレーンチェーン(ブレードチェーン)
スロット8:SSC-1(シンサーベル)
拡張パーツ
スロット1&スロット2:スラスター出力強化コアMark2
スロット3:ハンドガン+
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E級ランクマッチはレベル上限10のため、ステータスは40レベル分下がっている。レベルを50にしたのはU20がレベル上限50だからだ。
最後の武装には脛にサーベルを展開する『シンサーベル』を採用した。念じると左の脛部分にエネルギー体で構築されたサーベルが出てくる。
武装十分、レベル十分。それに、
「ユイに預けられたアレ。試してみるよ」
『ご武運を祈ります』
さて、なぜE級ランクマッチに1年生と一緒に出ることになったのか。
話は前日に巻き戻る。
---1日前---
E級ランクマッチ前日9月7日。
私たち生徒会チームはゲーム内のカフェにて作戦会議をしていたのだが、
「え? あたし明日は無理だぞ」
と、火針が言い出したあたりから暗雲が立ち込め始めた。
「なにか用事でもあるの?」
私が聞くと、
「ああ。明日はB級グルメの大会があってな、あたしの店も参加するんだ。あたしも手伝いで参加するから明日は1日無理だ」
そういえば火針の家は有名なラーメン店だったっけ。
「自分も明日は無理で候」
「えぇ!? 100号ちゃんも!?」
美咲は人差し指を合わせ、
「明日は百合漫画限定の即売会があるのです。何としても参加せねばなりませぬ……!」
「となると……」
私と結は目を合わせる。
「ランクマッチは1人で出れるの?」
「E級は最低でも2人からです。ていうか、1人で優勝できるとお思いですか!?」
「思わないけど、やるしかなさそうじゃん」
私はストローを咥え、オレンジジュースを飲む。
「別日じゃダメなのか? 他の日にもランクマッチはやってるんだろ?」
「は、はい。ただ選考会までは明日を含めあと2回しか……」
優勝が条件である以上、1回でも多く出たいところだ。
「1年生3人と私で出るよ」
「あの3人はまだまだの実力でして、E級と言えど通用するかどうか」
そもそもルミナスの勧誘に漏れた子たちだ。実力は低いのだろう。
だからこそ、試合の経験は積んでおくべきだ。私達がいなくなった来年、結の次に部活に所属してるあの3人は部の中核になる。どこかで育てないとね。
「いないよりはマシでしょ。とにかく時間がない。1年生に至急連絡を取って」
「わかりました」
「すまんなユイ、アズキ」
「面目ないであります……」
「気にしないでいいよ。2人はイベントを楽しんで」
連絡を終えた結は私の方を向き直る。
「1年生はOKです。――アズキ先輩。昨日言ってた新戦法……早速ですが、明日のランクマッチにぶつけましょう。出し惜しみしている余裕は無さそうです」
「いいよ。やろうか」
私達はユイの案内でスペース・ステーションのオフィス区画というところに足を運んだ。
「この区画はオフィスビルみたいな感じで、色々な団体の事務所があります。月陽中学チームでも部屋を借りていて……あそこです」
結が指さしたのは『チーム:ゲツヨウ』と電磁看板が掲げられた部屋。
扉を開き、中に入る。教室程の大きさの部屋だ。机や椅子やモニターはもちろん、冷蔵庫などの家具まで完備してある。
「うっひゃー。ここがゲーム内の部室になるわけか」
「7人で使うには広いでありますね~」
「アズキ先輩は奥のトレーニングルームに来てください」
結の後をついていき、重厚な扉を開いて奥の部屋へ。
ウェポンショップにあった練習場と同じ感じだ。的や人形がある広い部屋。
「こっちです」
トレーニングルームの角にある油臭い場所に案内される。
ドリル・ドライバー等の工具やPC・プリンター等の機材がある。改造中の武装も見える。ここは結の作業場というか工房かな?
作業机の前に行く。
作業机の上、そこには長方形の金属のケースがあった。
結は金属のケースを開け、中を見せる。
「これは……」
ケースの中にあったのは、色の違う3種の弾丸。
「私が作った『改造弾』です」
結は照れくさそうに言う。
「私なりにGeminiにアプローチした結果です。金色が『変化弾』、黒色が『貫通弾』、銀色が『加速弾』。それぞれ弾の性質が異なります。特に……」
結は黒の弾丸をつまみ上げる。
「この貫通弾は凄まじいですよ。ガードナーの装甲すら貫く代物です」
「1つ、疑問があるんだけど」
「なんでしょう?」
「そんな強力な弾があるなら、なんでこんなに実弾銃が不人気なの? ハンドガンでガードナーの装甲を貫けるなら、使い勝手が多少悪くても使われると思うんだけど」
軽くネットで調べたけど、実弾銃は余程なことが無い限り使われないらしい。
だけどこんな強力な改造弾があるのなら、使い手は多少なりともいるはず。
「それとも、その改造弾がユイにしか作れないようなものなの?」
「よくぞ聞いてくれましたアズキ先輩!」
結は得意げな表情をする。
「改造弾を開発するのは難しいですけど、作れる人は私以外にも多数いますよ。ではなぜ、誰も実弾銃を使わないのか。それは、改造弾を扱える銃が無いからです」
結は黒の弾丸を机に置き、
「例えばこの貫通弾は火薬の量を通常の弾丸より多く使い、さらに火薬の質も強力な爆発を生む物に変えています。弾頭も薬莢も雷管も特別製。破壊力に全振りした規格外の弾丸です」
だけど、そんなことをすれば――
「発砲の際の衝撃は相当なものです。通常のリボルバーなら1発でおしゃかになるでしょう」
そこで私は疑問の解を得る。
「……そっか。Geminiの特性は不壊。つまり」
「たとえ規格外の弾丸を使ったとして、Geminiは傷1つ付かない。反動はアタッチメントで制御可能。遠慮せず弾を強化できるというわけです」
……なるほど。
Geminiは改造できないほど硬い。だから、銃ではなく弾丸に目を向けたわけか。やっぱりこの子は優秀だ。
「実戦で使ってみないと何とも言えませんが、上手くいけば矛と盾を兼ね備えた万能のハンドガンになります」
私はシリンダーをスイングアウトし、中に3種の弾を込める。
「リボルバーだから弾を自由に取捨できる。リボルバーと改造弾の相性もバッチリ……ってわけね」
いける。この銃と弾なら……たとえ1人でも勝てる。
それから私は結にキャリー(レベルの高いプレイヤーに経験値を稼いで貰う行為)してもらい、レベルを50へ。武装を整え、Geminiを慣らし、1年生3人と共にE級ランクマッチに挑んだのだった。
そして今に至る……と。
「1人か。お姉ちゃんならむしろ、燃えるんだろうな」
私は双銃Geminiを構え、たった1人の戦場に挑む。
~E級ランクマッチルール~
・チームメンバー:バトルメンバー3人+オペレーター1人(上限)
・参加チーム数:35チーム
・参加資格:チームランクE バトルメンバー2人以上
・レベル上限:10(レベル11以上は一時的にレベルダウン措置を行う)
・レアリティ制限:レアリティ5(レアリティ6以上の武装は自動的に性能ダウン)
・フィールド面積:半径28.5km
・フィールド:ランダム
・転送位置:ランダム
・武装8 拡張パーツ3枠 弾薬以外消費アイテム持ち込み不可
・15分毎にフィールド縮小
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