第25話 楽しいお買い物 後編
練習場から出て、次に拡張パーツを探しに行く。
「拡張パーツはなにか希望はありますか?」
拡張パーツはスペースガールの能力を拡張できるアイテムだ。
ステータスを強化したり、レーダーの範囲を広げたり、武装の重量を下げたりできるそう。拡張パーツは武装とは別枠であり、3つの装備枠がある。
「射程が短い分、機動力……スラスターの出力を上げたい」
私のように射程の無いプレイヤーが足まで遅かったら勝負どころじゃない。
距離を保たれ遠距離攻撃を受け続ける……なんて展開はごめんだ。私の戦闘スタイルに速度は必須。
「そうなると、2枠使いますがスラスター出力を80上昇させる『スラスター出力強化コアMark2』がオススメですね」
ステータスを単純強化する拡張パーツか。いいね。
武装が奇天烈な分、拡張パーツはシンプルでいい。
「最後の1枠は……ガンナー専用拡張パーツの『ハンドガン+』がいいでしょう。ハンドガン+はハンドガンの弾丸の威力を1.5倍にしてくれるので、1発1発が低威力というハンドガンの弱点をカバーしてくれます」
「それって実弾にも適用されるの?」
「はい!」
「それがあればGeminiでも実用レベルになる?」
結は顎に手を寄せ、
「……なりませんね。実弾の場合、威力10倍ぐらいにならないと使い物には……」
「じゃあいらないんじゃない?」
「はい……」
結は何か悩んでいる面持ちだ。
「――信じるよ」
「え?」
「結がいま思い描いている未来を信じる。何か考えがあるんでしょ?」
「は、はい! 1つ、Black-Geminiだからこそできる戦法を思いつきまして……まだ説明は待ってください! 実用できるか半々で、私自身、まだ固まってなくて……」
「わかった。一旦武装枠1枠は保留にしておいて、拡張パーツはいま言われたやつを装備しよう」
「はい。ひとまずはそれでお願いします」
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武装
スロット1:S&W-M500 Black-Gemini (ハンドガン)
スロット2:S&W-M500 Black-Gemini (ハンドガン)
スロット3:PT-8(シールドピース)
スロット4:PT-8(シールドピース)
スロット5:ダッシュユニット(ブースター型ウィング)
スロット6:プレーンチェーン(ブレードチェーン)
スロット7:プレーンチェーン(ブレードチェーン)
スロット8:null
拡張パーツ
スロット1&スロット2:スラスター出力強化コアMark2
スロット3:ハンドガン+
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うん。文句なし。
早くフル装備で動いてみたい……。
「ねぇユイ。これからのスケジュールについてだけど、今聞いてもいい? 今月と来月のスケジュール早めに確定したいんだよね」
推薦が決まっているとはいえ高校の説明会には出なくちゃだし、生徒会選挙は来月末にズラしてもらったけど準備は早めにしちゃいたい。今月と来月はそれなりに多忙になりそう。
「構いませんよ。まずU20のスケジュールですが……」
9月14日 選考テスト
9月28日 一次予選
9月29日 二次予選
10月5日 三次予選
10月6日 決勝
「合計5日だね」
「はい。ですがその前にチームランクをDに上げる必要があります」
「なんで?」
「選考テストを受ける条件がチームランクD以上なんです。チームランクはEがスタートで最大がA。ランクを上げるにはランクマッチで勝利する必要があります」
選考テストがあったり参加資格があったり、結構ガチな大会みたいだ。
「EからDに上げるにはどれぐらい勝てばいいの?」
「ランクマッチは25~35チームで行うのですが、その中でチーム1位になるとチームに3ポイント、2位~3位だとチームに1ポイント入ります。チームポイントが10に達するとランクが上がります。ちなみに11位以下だと-1ポイントです」
「え? それじゃ、最低4回はランクマッチをやる必要があるってこと?」
「いえ。Eランクに限り1位を1度取ればランクが上がります。ランクマッチはどのランク帯も月に7回。次のE級ランク戦は9月8日にありますから、それに出たいと思います」
このスケジュールを見るに、1位を取らないと大会に間に合わない。悠長にポイントを重ねている時間は無い。
「元々結のチームはDランク以上だったわけじゃないんだ」
「Cランクでした。けれど、チームが解散したのでまたEランクからですね。チームを作る際はリーダーとサブリーダーを1人ずつ決めるんです。リーダーかサブリーダーがチームを抜けるとチームは解散となります。前のチームでは私がリーダーで姫織ちゃんがサブリーダーでした。姫織ちゃんがチームを抜けたので振り出しというわけです」
リーダーとサブリーダーか。
「今回のリーダーとサブリーダーは誰にするの?」
「もちろんリーダーはアズキ先輩に……!」
「ダメ」
「え!? なな、なんでですか?」
「このチームを仕切ってるのはユイなんだから、ユイがリーダーをやるべき。私はサブリーダーならやるよ」
結はこれから生徒会長になるんだし、場を仕切る立場に慣れておくべきだ。
「わ、わかりました。でも先輩方を差し置いて私がリーダーっていうのは、緊張しますね……」
「遠慮はいらないよ。なんならタメ口でいいし」
「む、無茶言わないでくださいよ!」
結は慌てながら後ずさり、商品棚にぶつかって転んだ。ホントからかい甲斐がある。
今日はこれで解散となり、私はログアウトした。
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