第13話 面白かったでしょ?
「今日はここまでにしよう」
敵を倒し尽くした所で私は言う。
賊に襲われたのはラッキーだったな。対人の感覚が掴めた。
「いいよね? ユイ」
「は、はい」
「んーっ、ん~!」
と、火針は背筋を伸ばす。
「久々にガッツリ、フルダイブのゲームやったけど、おんもしろいなぁ~。普通にオフの日もやりたいよ」
「自分もです!」
火針と美咲は楽しそうだ。
面白い……か。
右手を見る。私の右手は、小刻みに震えていた。震えの原因は……わからない。
(面白くなんか……ない)
拳を握り、震えを止める。
「それではスペース・ステーションに戻りましょうか。あそこのベッドルームなら安全にログアウト可能です」
私たちは結の指示通り宇宙船でスペース・ステーションに戻った。
スペース・ステーション内のベッドルームという部屋でカプセルベッドに入り、そこで就寝。インフェニティ・スペース体験1日目はこうして終わった。
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現実に帰還し、生徒会メンバー&eスポーツ部の面々で帰路につく。
すでに夕方で、運動部も切り上げる時間帯になっていた。
「結」
校門から出た所で結に話しかける。
「なんでしょう?」
「壊れない武器が欲しい」
これまでの戦いを通して、私に必要だと思ったのは『盾』。頑丈な盾だ。
別に形はなんだっていい。とにかく、私の反射神経を最大限活かすためにはどんな攻撃も寄せ付けない道具が必要だ。
「壊れない武器……ですか。聞いたこと無いですね。詳しく調べたこともありませんが」
「白い流星は私に『壊れない武器を手に入れろ』と言った。あの口振り的にあるはず」
「うーん……わかりました。帰ったらちょっと調べてみます」
「剣でも盾でも、銃でも籠手でもいい。壊れない武器さえあれば、私はもっと好きにやれる」
「あはは……あれ以上にですか。それは是非とも見てみたいものです」
進行方向。電柱の陰に、見知ったドヤ顔を発見。
私は電柱の前を素通りする。
「待ちなさいよ」
裾を掴まれる。
「二叶、なにしてるの?」
ピンクヘアーの生徒会庶務、虎の如き八重歯を持つ少女。虎福院二叶。
インフェニティ・スペース大好き少女である。
「待ってたのよ。感想を聞きたくてね」
二叶が集団に加わる。
「どうだった? ――面白かったでしょ。インフェニティ・スペース」
「……全然。私は結のためにやってるだけ。私が楽しむためじゃない」
「ふーん。あっそう」
二叶はどこか意味ありげな笑みを浮かべる。
「あなたはこんな所で油を売ってていいわけ? 大会の準備とかないの?」
話によると、二叶は別チームとしてU20に参加するそうだ。
つまり、二叶は敵である。
「そうですよニ叶先輩。あんな逸材抜けちゃって、大丈夫なんですか?」
結が話に入ってくる。
「あぁ、結は知ってんだっけ。アイツのこと」
「そりゃもう、有名人ですからね~」
「? 誰のこと?」
結は頬を赤め、目を輝かせる。
「二叶先輩のチームに凄く強いスナイパーが居たんですよ! 狙撃・戦術・体捌き! どれをとっても最高レベル!! ……でもその凄いスナイパーさんはもう二叶先輩のチームを抜けちゃって……」
「アイツがいれば優勝間違いなしだったんだけどね。まぁ確実に勝てるってのは、それはそれでつまんないけどさ~」
スナイパー……お姉ちゃんよりも強いスナイパーがいるとは思えないけど。
「私、ファンなんですよね。会ってみたいなぁ」
「やめといた方がいいわよ。実際会ってみると『なんでコイツが強いの?』ってなるから」
知らない人の話題で盛り上がられると対応に困る。
「追加メンバーは無しですか?」
「メンバー募集かけたけど集まらなくてね~」
「え? あのチームで、そんなことあります?」
「いや、人は来るんだけどさ、ウチのリーダーのお眼鏡にかなう奴がいなくてね」
リーダーは二叶じゃないんだ。
「今はオペレーターの変人を参加させる路線で調整中」
「そういえば聞いてなかったけど、U20は1チーム何人まで出られるの?」
「オペレーターを抜いて4人までですね。2人以下だと出れないです」
「私と火針と美咲……後は結?」
「そうですねぇ、ハッキリ言って私が出るぐらいなら1年生を出した方が……ラストメンバーはこっちで考えてみます」
3人で出るメリットは無い。よほど足手まといにならない限り、4人目は必須だ。
二叶の所はライバルになると思っていたけど、強いプレイヤーが抜けて、しかも4人目が選出できないならかなり不利。正直ありがたいな。
「えっと、梓羽先輩。スケジュールなんですけど……」
「火曜・木曜・土日はゲームに充てよう。だけど月・水・金はあなたも一緒に生徒会業務をやってもらう」
「……わかりました」
少し不服そうだけど結は了承する。
「大会に集中したい、させたいのはわかるけど、生徒会にとっても大事な時期であることは認識してほしい」
ちょっと説教臭いけど言っておかないとね。
「も、もちろんわかってます!」
「別に、空いた時間でログインするのは構わない。あくまでグループ練習は今言った曜日だけってこと」
火針が後ろから肩を組んでくる。
「OK。あたしはガンガンログインするよ」
「自分もやりますよぉ!!」
結と美咲、インフェニティ・スペースにハマりかけてるな……。
「……次の集まりは木曜の放課後ってことで。それじゃ、私こっちだから」
「はい。お疲れ様です」
「「「お疲れ様です!」」」
まず結と1年生が元気よく挨拶してくれる。
「さよならでーす!」
「バイバイ」「またな~」
続いて3年生2人と美咲が見送ってくれた。
生徒会とeスポーツ部の面々と別れ、寂れた路地を歩く。
「……」
二叶の言葉が頭に響く。
――『面白かったでしょ。インフェニティ・スペース』
「……別に」
住宅街の中の、小さな公園。
そこに、サーベル程の長さの木の棒が落ちていた。
「……」
私は周囲を見渡し、人が居ないことを確認して木の棒を拾う。
右手に持った木の棒を横に薙ぎ、縦に振る。
「ふふっ……」
やっぱりゲームより、体は鈍いな。
サーベル使う時はもっとこう、手首を使った方が――
「あぶないよっ!」
「あっ……」
公園に入ってきた女児に注意されてしまった。
「きのぼう、ふりまわしたらあぶないよっ! わたし、まえにせんせいにおこられたもん!」
私は木の棒を公園の端っこに捨てる。
「ご、ごめん」
ブレザーのポケットに手を突っ込んで、そそくさと去る。
……恥ずかしい。顔まで熱い。なにやってるんだ私は。
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