第1話 ゲームなんてくだらない
『わたしの将来の夢は、お父さんと同じ……プロゲーマーになることですっ!』
ゲームが大好きだった。
RPGも、格闘ゲームも、FPSも、全部好きだった。
新しい技を覚えた時の高揚感、強敵を倒した時の喜び、今でも覚えている。秀逸なストーリーに泣いたこともある。名作RPGをクリアした後の、胸がすくような感覚はなんとも言えなかった。
美麗なグラフィックも、敢えてレトロチックにしたグラフィックも、どっちも好きだ。好きで、好きで、好きで、堪らなかった。特に、父と一緒にゲームをするのが私は大好きだった。
父はPSPという、私が生まれるよりも前に発売されたゲーム機を愛していて、私はよく、父の膝の上でPSPのゲームをやったものだ。古いせいか、カセットが擦れような音がよく響いていたっけ。
私には姉が居る。
その姉はコミュニケーションが苦手で、いつも1人で、内気だ。だけど、鬼のようにゲームが上手かった。鬼……なんてものじゃないかもしれない。大会とかにあまり興味を示さないだけで、小学生の時点でプロに負けないぐらいの腕前を持っていたと思う。特にフルダイブ型ゲームでは無類の強さを持っていた。
私には父親が居た。
父は弱々しくて、なよなよした人だった。でも優しくて、穏やかで、いつも笑っていた。どっちかって言うと父に似ていたのは姉で、私は母親似の性格だった。
父はプロゲーマーで、特に格闘ゲームが強く、世界大会すら制したことがあるらしい。けれど、父が強かったのは16年前まで。16年前、仮想空間『AR(Another-Realの略)』が開発、同時にARへ意識を繋ぐことができるフルダイブ型端末『スターアーク』が開発された。世界はもう1つの世界への繋がりを深め、ゲーム業界もそちらへ流れた。結果として、ARが開発されてからの5年程でプロゲーマーの85%が入れ替わったらしい。
当然と言えば当然だ。コントローラーを動かすのと仮想空間とはいえ体を動かすのでは求められる才能が違う。父も例外ではなく、あらゆるフルダイブ型ゲームの大会で惨敗。暫く無職の状態だった。父に仮想の肉体を動かすセンスは無かった。
父は努力した。努力して努力して努力して、その結果を確かめるために、ある天才に挑んだ。
父は半年間練習したゲーム、一方でその天才は3日しか触っていないゲームだった。
結果は――
何度も考えた。あの時、どうすれば良かったのかと。
『負けてあげて』と頼むべきだった? いや、手を抜いた所で父にはバレただろうし、そうなればどっちみち父のプライドは死んでいた。
『気にしないで』と励ますべきだった? いや、そんな励ましで癒える傷では無かった。結局、アレは私にはどうしようもできないことだったと思う。
私があの日に得た物は1つ。
『ゲームに人生を懸けるなんて馬鹿馬鹿しい』、という教訓だけ。その教訓と引き換えに、私は大切なものを2つ失った。父と、そして……。
『好き』と『嫌い』は背中合わせで、強い好意は強い嫌悪に容易く反転する。
私は――ゲームが大嫌いだ。