番外 星流しの夜
七夕、それもR7.7.7というゾロ目好きにはたまらない日なので、七夕っぽいSSです。
秋休みに入るよりもだいぶん前の出来事となっております、お楽しみいただけると嬉しいです。
(≧∇≦)ノシ
夜空にはきらめく星々が散りばめられ、学院の中庭では木々に付けられた飾りが風に揺れていた。
――なんだか七夕みたい。
日中の学園は生徒たちの熱気にあふれているけれど、日が落ちた今はその熱気が影を潜めてしんみりとした心地よさに落ち着いている。
いつもであれば、学園内であっても消灯の時間以降に部屋を出ることは禁止されているけれど『星流しの夜』である今日は、その規則は目をつぶられている。
ほとんどの生徒が自主的に戸外に出て、空を見上げていた。
大きな声を出すような無粋をする人はいなくて、囁くような声の会話が、さざめく波の音のように聞こえる。
まるで海にいるようだ……。
今日は一年の内で一番美しい星空が見られる日。
ライゼスに誘われ、寮から距離があるためあまり人が来ない穴場である中庭に来ていた。
他にも運動場や校舎のベランダ、前庭など、思い思いの場所に生徒たちは散らばっている。
オブディティもクラスメイトに誘われて、寮の屋上で空を見上げると言っていた。
わたしはいつもはハーフアップにしているオレンジ色の髪を下ろし、髪を風に揺らされながら、隣に立つライゼスを見上げた。
「子どもの頃以来だね」
「そうだね。ソレイユの家族みんなと、あの小さな丘の上で寝転んで空を見上げたね」
空を見上げたまま呟いた彼の横顔が動いてわたしを見下ろすと、嬉しそうに微笑んだ。
「もうそろそろだね。座って見ようか」
索敵の魔法で確認しているから近くに人が居ないのは間違いないけれど、先生たちがそこかしこにいて、目を光らせているのは知っているので、ちゃんとした距離感で芝生の上に座って空を見上げた。
足を伸ばし、手を後ろについて空を見上げる。
心地よい沈黙で少しだけ待つと、空の星々が無秩序な軌道で夜空を流れはじめた。
「わあ……っ!」
わたしだけでなく、そこかしこから感嘆の声が上がる。
キラキラという音が聞こえても不思議ではないほどの、闇と光の饗宴。
まばゆい闇の美しさに、時間を忘れて魅入ってしまう。
飽きることなく星空を見上げているわたしの、後ろ手に突いていた指先に少しだけ、ライゼスの指先が重なった。
空に向かっていた意識が一気に指先へと移動する。
ライゼスの腕が長いから、たまたま、偶然、触ってしまっているだけだよねきっと。
だから、過剰反応をしたらダメ絶対!
指がずっと重なったままで、心臓がいつもより速くなるけど、バレないように空を見ていなきゃ!
熱い頬はきっと赤くなっているけど、夜の暗さでバレないはずだと自分に言い聞かせ、何とかクールダウンしようと頑張っているうちに、楽しみにしていた流れ星は終わる。
学園ではじめて迎えた『星流しの夜』は、ライゼスの指先の熱を意識するだけの思い出となった。