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5.弟バンディと長女レベッカ

 なんだか色々なことがあってすっかり疲れてしまったわたしは食事の途中から眠くなり、気がつけばベッドで朝を迎えた。父がベッドに運んでくれたのかな。


 一緒に寝ているわたしの一つ下の次男バンディの寝相のせいで、蹴られた拍子に目が覚めたみたいだ。蹴り返そうかと一瞬思ったけど、それをすると倍になって返ってくるからやめておく。

 そういえば……バンディはわたしよりも背が高いし、体重もある、だけど一歳年下だからステータスが見られるかも!?

 同じ部屋に寝ている他の兄弟たちを起こさないように起き上がり、バンディのステータスを見る。


 ■バンディ・ダイン、七歳四ヶ月、人間、ダイン家次男。


 双子と同じで、わかりきったことが出てくる。

 年下だから見られるのかな?

 そういえば十歳の牛のステータスも見られたっけ。わたしが八歳だから、年は関係ないってことよね。

 同じように、わたしより大きくても牛のステータスは見られたし、虫のステータスも見られたんだから、体の大きさも関係がない。

 もっと色々試してみなきゃ!

 ベッドから抜けだし着替えて下に降りると、母がもう起きて朝ご飯の準備をはじめていた。まだ明け方なのに。


「おはようソレイユ。今日は早いわね、もう一回寝てきたら?」

「ううん、ちょっと散歩にいってくる!」

「え? ちびちゃんたちのミルクまでには帰ってくるのよー」

「はーい」


 元気に返事をして、家を出る。

 まずは隣のマールさんの牧場に行く。あそこにはヤギとヒツジが放牧されているから、まずは彼らのステータスを見るんだ。

 まだ朝早い時間でちょっと遠くで寝ていたけれど、ヤギもヒツジもちゃんとステータスを見ることができた。ついでに、マールさん家の番犬もちゃんとステータスが出たし、道端にいた猫もステータスを見ることができた。あの猫の名前、チロ・ミーニャン・リリ・クロ・カワイイ、ってなってたんだけど、みんな勝手に名前付けてるんだろうな。わたしはクロって呼んでる。

 大きな木が近くにあるので、それもステータスを見る。


 ■レドナステーブルの大樹、二百五十二歳、雄株、健康。


 二百五十二歳で健康って凄いな! じゃなくて、これだけ年上でも見られるってことは、年齢はまるっきり関係ないのか。

 じゃあどんな時にステータスが出てくるんだろう。

 わからないまま家に帰り、朝ご飯の前に子牛に朝のミルクをあげにいく。


「ミカン~、今日もたくさん飲んでえらいねえ」


 ミカンを撫で繰り回して、使った哺乳瓶を洗いに水場に向かうと、家の前の木のところで長女のレベッカと近所の男子が話をしているのが見えた。

 レベッカが申し訳なさそうに首を横に振り、男子がとぼとぼと帰っていく。


「お姉ちゃん、また告白されたの?」

「ふふふ、内緒」


 小さく笑ってわたしが洗い終えた哺乳瓶を取りあげる。


「『瓶と吸い口を綺麗に』」

「お姉ちゃん、綺麗にする魔法使えるようになったの!?」

「ふふふ、まあね。ソレイユが綺麗に洗ってくれたから、余計な魔力を使わないで魔法ができたわ」


 長女が綺麗にしてくれた哺乳瓶を受け取る。


「余計な魔力?」

「そう、綺麗にする魔法は、元々の汚れが酷いほど、魔力がたくさんいるの。だから、面倒でも一回洗ってから魔法を掛けた方がいいのよ」

「そうなんだ! お姉ちゃんって物知りだね!」

「そうよ、努力してるもの。お姉ちゃんの夢は大金持ちと結婚することだから、大金持ちに見初めてもらえるように、勉強も頑張っているのよ」

「お馬鹿だと、大金持ちと結婚できないってこと?」

「そういうこと。もし頭がいい女じゃない方がいいって言われても、頭が良ければ隠せばいいだけだけど、頭のいい女がいいって言われても、頭が悪かったらどうにもならないでしょう? だから、いまから勉強してるのよ」


 そう言ってふふふと笑う長女は、とても輝いて見えた。長兄は長女の持論に渋い顔をするけれど、目標に向かって日々頑張ってるのはとても素晴らしいと思うんだ。

 大人牛の方の牛舎へ向かう長女のステータスを見ようとしたけれど、やっぱり見ることはできなかった。

 わたしより勉強ができたり、力が強かったりする人だと見えないのかな……いや、それなら牛のステータスも見えないはず。

 謎だなあ。


「ソレイユ姉ちゃん! 手伝ってー」


 妹のティリスの声に鶏小屋へ向かうと、小屋の中で妹がオレンジ色の髪を若い鶏についばまれながら、カゴに卵を集めていた。


「ディーゴは?」

「寝てる」


 双子なのに、どうしてこうも違うのか。

 子牛のミルク係をやる前はわたしも卵を集めていたので、卵集めは得意だ。妹を手伝って手早くカゴに卵を入れていく。


「今日はディーゴの目玉焼きはナシだね」

「ナシだねー」


 わたしが鼻息荒く言った言葉に、クスクスと妹が笑う。


「よし、これで全部かな?」


 集めた卵の内、カゴひとつ分を妹が慎重に抱えて家に入る。


「卵持ってきたよー」

「あら、二人ともありがとう。こっちに置いておいてね。ディーゴの分はナシでいいわよ」

「はーい」


 我が家では自分の受け持ちをやらなかった人はおかずが減る仕組みだから、仕方ない。わたしも前に何回か卵ナシになったことがあるけれど、地味に悲しいんだよね。

 案の定、朝食に目玉焼きナシのディーゴは、しおしおとご飯を食べている。


「お馬鹿なディーゴ。卵が好きなら、お寝坊なんてしなきゃいいのに」


 妹がそう言って肩をすくめた。

 お馬鹿な?

 もしかして、わたしよりお馬鹿な生き物だと、ステータスが見られるのでは!? そう考えれば納得できるよね。

 両親や兄や姉は見られなかったけど、弟妹や動物たちのステータスは見られた。

 うん! きっとそうだ。


 たどり着いた答えを、早くライゼスに教えたい! そうだ、その前に生き物なら、草も木もステータスが見えるんだってことも教えなくっちゃ!

次話からは基本的に毎日0時に更新いたします

閑話がある日は、同日午後8時に更新予定となっております

よろしくお願いいたします。

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誤字脱字報告、大変、大変っ助かっております! ありがとうございます!!
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