14.再会
あけましておめでとうございます!
本年もソレイユたち共々どうぞよろしくお願いいたします。 こる.
「お前ら、なんでこんなところにいるんだよっ」
まんまとオルト先輩を驚かせることに成功いたしました!
「オルト先輩が、何も言わずに領都を離れるのが悪いのですわ。わたくしは、そんなに煩わしい後輩でしたか?」
最初は勢いよく、だけど語尾は勢いが失速して、不安そうな声になったオブディティに、オルト先輩が慌てる。
「そっ、そんなことはねえよっ! 色々と、ばたついていて、挨拶できなかっただけじゃねえか」
苦しい言い訳をするオルト先輩は、明らかに分が悪い。
「どうして、王都に行くのを黙っていらしたのですか? わたくしに教えるのは、そんなに嫌だったのですか?」
なじるように言うオブディティに、オルト先輩は赤毛のツンツン頭を困ったように掻き、オブディティの後ろにいるわたしとライゼスに、アイコンタクトで「どうにかしてくれ」とSOSを出してきたけれど助けは出てこない。
自業自得なので頑張って説明してください。
「嫌じゃねえよ、だけど……なんか、言いたくなかったんだよ」
オルト先輩は絞り出すように、それだけ言った。
言いたくなかった理由がありそう。
それを聞き出すまでは、オブディティは諦めないと思うんだよね。冒険者としての指名依頼は無事に完了して、あとは帰るだけだから時間はあるし。
「オルト先輩、オブディティさんが納得できる答えを出せるまで、付き合ってあげてください。あ、帰りはブラックウッドのタウンハウスに送り届けてくださいね。折角なのでオルト先輩も、お泊まりください。寮には外泊の報告はしておきます。では僕たちはデートをしてきますので、お二人もゆっくり話し合ってください」
ライゼスはそう言うと、呆気にとられる他の人たちを無視して、わたしの背に腕を回して強制的に二人から離脱させた。
* * *
ライゼスと二人で手を繋いで、町の中心に向けて歩く。
「いいの?」
あの二人を放っておいて大丈夫なのかと、隣を歩くライゼスを見上げれば、優しい視線に見下ろされる。
「ああでもしないと、ちゃんと向き合わないだろうしね。僕たちがいないほうが、オルト先輩も腹を括って話せると思うよ」
なるほど? 強制的に逃げ場を無くしたわけだね。
ライゼスのすることだから、きっとしっかり考えられた上での行動だと思うので、わたしに否はない。
「わだかまりがなくなるといいね」
「そうだね。そうだ、ソレイユ、折角だから、この時期にだけ出ている夜店を、見ていかないかい?」
ライゼスの素敵な提案に、一も二もなく飛びついた。
王都の中央で開かれているという屋台の場所まで、赤い幌の定期馬車に乗って移動した。
仕事帰りの人が多かったけれど、今から夜店を見に行く家族連れやカップルも何組もいる。あ、わたしとライゼスも含まれるのかな、えへへっ。
ちょっと照れるけれど手を繋いだまま座り、ゴトゴト揺られるに身を任せる。
馬車で移動、楽しいかも。
幌の中は音がうるさいので会話はあまりできないけれど、おしゃべりをしなくても十分に楽しかった。
あまり時間も掛からずに町の中央に到着して馬車を降りた。運賃はどの区間で乗っても一律で、乗るときに支払うシステムになっていた。
町の中央は、真ん中に立つ塔から四方に向けてロープが張られまるでツリーのように、魔道具の電飾が点されている。
日中とは違う雰囲気に、心が浮き立つ。
ロータリーの外周に夜店が並んでいて、客はみんな同じ方向で流れているので、人が多いのに比較的歩きやすい。
各屋台は行列ができているものの、手際よく捌かれているので、回転は速い。
買った飲食物は、中央の公園にたくさんのベンチが設置されているので、そこで食べたり、芝生に敷物を敷いて食べたりできるようだ。
「今日の夕飯は、買い食いで済ませてしまおうか?」
「いいの?」
ライゼスの提案に、思わず声が弾む。
「全部美味しそうだよね。半分こすれば、全種類制覇できるかな?」
「面白いね、やってみようか」
てっきり無理だと言われるかと思ったけれど、ライゼスも賛成してくれたので、早速すぐ近くにあった屋台に並ぶ。
「ホーンブルの串焼きだって。あっ、お金用意しとかなきゃ」
いそいそと巾着から小銭を出して握りしめる。
「次は僕が払うね」
「いいの?」
「本当は、僕が全部払いたいけど」
「それはイヤ」
お支払いするのも、醍醐味だからね!
即答で却下したわたしに、ライゼスが笑う。
「だと思うから、交互に払うことにしようね」
「うんっ!」
わたし以上にわたしのことをわかってくれているライゼスの、先回りの気遣いが嬉しい。
購入したやたらと大きな串焼きを、人の波から外れた場所に移動して、ライゼスと交互に食べていく。
「おいしいねえ」
思ったよりもお肉が柔らかくて、でも柔すぎない歯ごたえが嬉しい。塩の加減も丁度良い。
「本当だ、おいしいね」
わたしが服に垂らしてしまった肉汁を、ライゼスがさりげなく綺麗にする魔法で取ってくれる。
「ありがとう、ライゼス」
「ソレイユみたいに、キラキラは出せないけどね」
言いながら、わたしの口の端についていたらしい汁を指で拭い、ペロリとその指をなめた。
「流石にそれは、マナー的にダメだと思うよ?」
「そう? 次からは、自重するね」
ニコニコ楽しそうに言うライゼスに、是非とも自重してくださいと念を入れる。
だって、間接キス的なものだよね? わたしの心臓に、よろしくない。
おかしいな、前世ではちゃんと大人だったはずなのに、恋愛経験値が低い気がするぞ? そもそも、日本人だったときの記憶は、主に畜産関係しか覚えてないところからして、本当に前世なのかという疑惑すらあるよね。まあ、畜産関係の記憶があれば別にいいけど。
そうして、意気揚々と夜店を回り、途中でライゼスが、わたしが腕に着けている護身用のブレスレットと合う赤い石の付いたイヤリングを買ってくれたので、わたしもライゼスにポイントに緑色の石が付いたショート丈の革の手袋をプレゼントした。冒険者として剣を握るときに、時々革手袋を使っているのを見ていたので、無駄にはならないと思うんだ。ちゃんとお店の人に、用途を確認して買ったからね!
オブディティとオルト先輩にも、ハンカチと靴下という無難な消耗品をチョイスして購入した。
「そういえば、あと三日はこっちにいれるんだよね? 予定はあるの?」
できれば、王都のダンジョンに行ってみたいな。
王都のダンジョンも、領都と同じく三カ所あるんだけれど、そのウチの一番大きなダンジョンは遺跡群となっていて、入り口が五カ所あり、中もアリの巣のように入り組んでいる難易度の高い場所らしい。
流石にそのダンジョンは危険だから潜れないけれど、塔の形のダンジョンがあるらしくて、それはダンジョンなのに上に進む珍しいものらしい。とても気になる。
最後の一つのダンジョンは、各階層の広さがとてつもなく広いダンジョンで、下層には空がある階層もあるらしい。凄いよね、地下なのに空って!
ロマンだよね、行ってみたいなあ。
「折角、冒険者として来ているんだから、ダンジョンに潜ろうか?」
「最高っ! 本当にいいのっ? 凄い、ライゼス、大好きっ」
思わず抱きついてしまったわたしを、ライゼスがポンポンと頭を撫でてくれる。
「オブディティ嬢には申し訳ないけれど、今回は僕たち二人で行こうか。初めて潜る場所だと、安全を担保できないから」
「そうだね、残念だけど……残念だけど、オブディティさんはお留守番だね。へそを曲げたりしないかな?」
オブディティの収納を諦めなければいけないのは、断腸の思いだけど、安全第一だから仕方ない。
「明日は魔道具開発研究所は休みだから、オルト先輩にオブディティ嬢をお任せできないか、聞いておくよ。僕とソレイユ、オルト先輩とオブディティ嬢でそれぞれデートということにすれば、彼女も納得してくれるんじゃないかな」
デート! やっぱりライゼスも、オルト先輩とオブディティは両想いだと思ってるってことだよね。そして、今回二人きりにしたのは、きっと二人のわだかまりを解消してくっつけるためなんだろう。
デートの提案に、オブディティは納得してくれるかな? いや、ここはライゼスの交渉術に期待だ。
それにしても、オルト先輩が丁度良く休みでよかった!
明日に備えて早く寝るために、屋敷への帰路についた。
屋敷に帰るまで、索敵の魔法で気になる動きをする人が数人付いてきたけれど、多分それも込みでライゼスが動いているのだと思うので、わたしは目いっぱいダンジョンを楽しむだけだよね。
明日が楽しみだ!
ダンジョン♪⁽⁽ ⸜( ˙꒳ ˙ )⸝ ⁾⁾ダンジョン♪
その前に、オルト先輩視点の幕間があります!




