表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソレイユだけが気づいていない~ステータス鑑定で遊んでいたらとんでもないことになりました~  作者: こる
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

133/144

12.依頼達成 & 幕間.カミリオン・リグ・バルドスの取り引き

 反重力の魔法をヒーリングライトなしで一晩で伝授することはできないので、普通の方法で作ることと相成りました。


 料理人たちは話し合いの末、シリリシリリ草の粉は少量しかないので、チーズを作るときのみに使用することにしたらしい。

 ダイン家でも、なににでも入れたりはしないもんね。

 母がきっちりと決めて、チーズとバターにのみ使うことが決まっていた。

 シリリシリリ草の粉という万能調味料に慣れて口が肥えてしまったら、他所でご飯を食べる楽しみが減っちゃうから、母の判断には大賛成です。


 さて、カミルの要請により、追加でミルク缶三本分のチーズを作っているあいだ、カミルとライゼスが少し離れた場所で話をしていたのを横目で見てはいたんだけど、きっと小難しい話をしているんだろうなと察したので、敢えて近づくことはしなかった。







幕間 カミリオン・リグ・バルドスの取り引き


 ソレイユ・ダインが器用に魔法のみでチーズを作っているのを料理人たちの輪の外、少し離れた場所から眺めていると、隣に立つライゼス・ブラックウッドが落とした声量で話し掛けてきた。


 ここはカミルの私邸で、王弟ではなく冒険者として招待しているので、声を掛けられたとしても問題はない。カミルはむしろ、彼が声を掛けてくるのを待っていた。


「なぜソレイユを王都に呼び寄せたのですか?」

 淡々とした声に、依頼の真意を問われる。


「君たちは学園生だろう。一年目の今しか、動ける時はないと思ったのだがな」

「噂について、ご存じなのでしょう」


 ソレイユ・ダインの噂については、勿論知っていた。

 彼女の才能をやっかむ連中、そして、彼女がライゼス・ブラックウッドの恋人であることに不満を抱く野心を持つ子女たちが、ソレイユをライゼスから引き離そうと画策していることを。


 カミルは隣に立つ青年を横目で見て、確かにこれは子女が色めき立つだろうと納得する。

 均整の取れた体躯に、凜々しい顔立ちは甘くはなくむしろ冷たく感じるのだが、ソレイユが絡むとその表情が一変する。


 その彼らをこの時期に王都に呼び寄せれば、何かが起こるのではないかと危惧するのは当然だろう。


「君が彼女を得ようとすることで、彼女を傷つけるとは思わないのかな」

「……何を仰いたいのです?」


 ライゼスの周囲の温度が下がり、近くの料理人の何人かが不思議そうに肩を竦めて腕を擦る。


「いや、そのままの意味だ。君なら、そこら辺も考えているとは思ったのだけどね。君は存外、女性に人気があるようだ。エルムフォレスト領主の三男であり、才能に溢れた野心家でもある」

「王弟であり、高レベルの冒険者であるカミル様ほど、人気はありません」

「俺は、むしろ、王弟だからこそ人気が無いのだよ。継承権を放棄した王弟なんて、勝手が悪いのだろうな」


 自分で言っていて嫌になったのか苦笑いで遠くを見ているカミルに、ライゼスは硬い表情を崩さない。


 カミルは気を取り直して、ライゼスを見る。

「君を得ようとする為に動く一派もあれば、彼女を得ようとする一派もある」


「……ダイン家を危険視する一派も、でしょうか」

 ライゼスの言葉に、カミルは目を細める。

「その通りだ。アーバン氏から聞いたのか」

「はい、シリリシリリ草の粉を受け取る時に、教えていただきました」


 それ故の王弟カミリオンに対する冷たい態度だったのだとわかる。


 とはいえその割にソレイユは、カミルに対して緊張以上の負の感情は見受けられなかった。彼女もライゼスと共に聞いただろうと想像できるのにだ。


義父ちちは、あなたの思惑がどこにあるのかはわからないけれど、こちらにとって悪いものではないはずだと言っていました」

 そう言ってカミルを見る目は、アーバン・ダインの言葉を受け入れているようには見えないものだ。


「君の意見は違いそうだ」

「……僕はまだまだ未熟で、人の真意を計ることは難しく。用心するのが関の山ですから」


「肝は据わっているようだがな」

 堂々とカミルを信用していないと言い切ったに等しいライゼスに、カミルは笑う。


「久しくおとなしくしている差別主義者が、またぞろ動き出している気配は察している」

「学園でも、差別主義者の教師が、ソレイユを退学させようと動いていました」


 ダンスの教師であったアヴァリスは、爵位を継いでいる息子によって僻地の屋敷に送られている。息子も彼女が偏った思想を持っているのは知ってはいたが、まさか領主の息子の恋人を槍玉に挙げるほどとは思ってもみなかったらしい。旧時代的な思想を持つ母を説得するも効果はなく、仕方なく遠方での療養をさせることにしたという経緯がある。


 彼は母に蟄居を命じ、家から出ぬように見張りを置く念の入れようだった。彼は親しい友人に「もう少し遅ければ、きっと我が家は自分の代で終わりだった」とこぼしたのだとか。


「そちらでもか……。法を犯していれば、いくらでも裁くことはできるのだが」

 茶会での噂話や悪評の流布などは往々にして行われることで、それを取り締まる法はない。


 二人とも蠢く悪意に気持ち悪さと、確たる形を見せないことに、苛立ちを感じている。


「僕とソレイユが結婚することに、どうしてそんなに危機感を持つのでしょうね」

 ため息交じりにライゼスが潜めた声で続ける。


「貴族の沽券が下がるとでも言うのでしょうか。今までだって、貴族と庶民が結婚した事例など、いくらでもあるでしょうに」

「彼女が『ダイン』だからだろう」


 アーバン・ダインにより、庶民の台頭が急激に進んだのは間違いない。


 それが、貴族という看板を大事にする差別主義者の怒りとなるわけだが、そもそも差別主義者側がアーバンの両親を殺すという最悪の手段を取らなければ、ここまで急速な変革とはならなかっただろう。


「逆恨みも甚だしいですね」

 吐き捨てるように言うライゼスに、頷かないものの内心で同意する。


「僕も義父を見習って、障害を排除する方向で動いた方が良いでしょうか」

 剣呑な表情で伺いを立ててくるライゼスに、カミルは聞いてくる余裕はあるのだなと安堵する。


「そうしたいところではあるが。都度対処するのはまどろっこしいだろう、それなら芋づる式に引きずり出したくはないか?」

 カミルの言葉に、ライゼスが興味を惹かれる。


「最近、貴族の息の掛からない商人や、貴族の後ろ盾なく人気を博していた楽士が失踪するという事件が起きている」

「貴族の後ろ盾がなくても、活躍している人たちがいるのですね」

 少し驚いたようにライゼスがカミルを見る。


「まあ、後ろ盾がある方が、圧倒的に多いのだがな」

「そんな彼らがどうして。……差別主義者たちの仕業ですか?」

「断言はできないけれどな。だが、貴族の後ろ盾なく活躍している人物たちは、貴族に対しての警戒を強くしている」


 カミルからの情報を聞いたライゼスは、少し沈黙する。


「――話を聞いたからには、というやつですか」


「察しが良くて助かる」

 にやりと笑ったカミルに、ライゼスは舌打ちを堪えているようだった。


「後顧の憂いは取り除いておきたいだろう?」

「ええ、そうですね。今なら、王弟殿下のご助力もいただけるようですし、良い機会です」

「そう言ってもらえると嬉しいよ。君たちの能力があれば、大事に至ることもないだろう。とはいえ、こちらも人員を割いて、身柄の安全は確保するつもりだ。ああ、ミルクを使い尽くしたようだな。魔法だけでチーズを作るなんて、規格外もいいところだ。本当に君の恋人は、面白い」


 言いたいことを言うと、いつの間にか起動させていた遮音の魔道具を切って、ソレイユを囲む料理人たちへ楽しそうに声を掛けながら近づいていく。


 残されたライゼスは、じっとカミルの背を睨み付けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誤字脱字報告、大変、大変っ助かっております!
ありがとうございます!!

゜・*.✿*書籍化決定しました!*✿.*・゜
一迅社のアイリスNEO様より令和7年12月2日に発売となりました!

読んでくださる皆さまのおかげです!
ありがとうございます。°(°´ω`°)°。ウレシ泣キ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ