1.ソレイユ・ダイン8歳
こんにちは! こる.です!
1月15日は私の誕生日でありまして(≧∇≦)ノシ
思い余って新作UPです! 楽しんでいただけると、とても嬉しいです!
「ソレイユ! ちびちゃんたちにミルクあげたのー?」
裏庭の木の間に渡したロープに洗濯物を干していたお腹の膨らんだ母に声を掛けられて、最近できた友達のところへ遊びにいこうとしていた足をピタリと止める。
そうだった、お腹が大きくなってきた母に代わって、今年八歳のお姉さんになったダイン家の次女であるわたしソレイユ・ダインが! 今日から子牛たちのミルク係になったんだった!
「わすれてたー! いまやるー!」
裏庭の母に返事をしてから足の向きを子牛の育成舎の方へ変えて走る。お腹を空かせている子牛たちのために精一杯急ぐと、左右で三つ編みでお下げにしたオレンジ色の髪が跳ねる。
子牛の育成舎から、大人牛よりも高い声でモーモーと鳴く声が聞こえた。
「ごめん~っ!」
謝りながら到着したわたしに、子牛たちの非難の声が凄い。体が小さいからすぐお腹が空くんだって、四歳年上の長兄が言ってた。
両親が取り置きしてくれていた親牛のミルクを、缶から大きな哺乳瓶に移し、一番小さい子から順に与えていく。
飲んでいる子牛を押しのけて横入りしてミルクを飲もうとする子を体で阻止しつつ、一頭ずつしっかりと飲ませていく。
六頭の子牛にミルクを飲ませ終えたときには汗だくになったけど、満足そうな子牛を見れば疲れは軽くなる。
子牛の柔らかな毛並みを撫でながら、白地に緑色や青色やオレンジ色といった個性的なブチ柄を愛でる。
わたしのお気に入りは、わたしの髪の毛と同じオレンジ色のブチ柄の子。
「ミカン~今日もかわいいねえ」
生まれたときに直感で『ミカン』と名付けた子牛は、撫でるわたしの手にぐりぐりと頭を擦り付けてくれてとてもカワイイ。
ひとしきり撫で繰り回してから、使った大きな哺乳瓶を両手で抱えて裏庭に洗いに行く。
「お疲れさま。哺乳瓶は洗っておくから、遊びに行っていいわよ」
わたしの持っていた哺乳瓶を取りあげようとする母から逃げる。
「最後まで一人でできるよ!」
外仕事用の水場として大きな瓶にはいつも水が張られている。柄杓で何度も水を入れて哺乳瓶の中を洗う、そして哺乳瓶の吸い口もしっかりと洗う。
「できた! 魔法やって!」
「はいはい」
わたしが洗うのを見ていた母に哺乳瓶と吸い口を差し出すと、母は両手をかざす。
「『瓶と吸い口を綺麗に』」
母が魔法の言葉を唱えると、哺乳瓶と吸い口がほんのり光って、消毒されたことがわかる。
「ねえ、綺麗に洗ったのにどうして魔法やるの?」
「こうすると、ちびちゃんがお腹壊さなくなるって、隣の牧場の奥さんが教えてくれたのよ」
お腹を壊すと大きくなれなかったり、病気になったりするからよくないんだと教えてくれた。
「ふーん。わたしも早く魔法使えるようになりたいな」
「ソレイユはまだ魔力の量が少ないから。レベッカくらいになれば、綺麗にする魔法くらいなら使えるようになるわ」
三歳年上の長女が目標だと言われて、ちょっとがっかりする。
「もっと早く使いたい!」
「最初に魔法が使えるのは十歳からよ、それも簡単な水滴を出す魔法ね、綺麗にする魔法はもっと難しいから十一歳くらいね。それよりもほら、ライゼス君と遊ぶんでしょ、いってらっしゃい」
綺麗になった哺乳瓶を取りあげられて、背中を押される。
押し出された先、家の敷地の境界に立ってる木のところに、ライゼスが大人の男の人と話をしていた。あの人はライゼスと遊んでいると、たまに会う人だ。
「お母さん、いってきまーす!」
背中で「いってらっしゃい」の声を聞きながら、入り口まで走る。
わたしがライゼスのところに着く前に、薄茶色の髪をした体格のいいその男の人は軽く手を挙げてどっかにいってしまった。
「おはよーライゼス! いまの人誰?」
「おはようソレイユ、あの人は護衛さん」
「ゴエーさん?」
「それよりも、今日はドコにいく予定?」
「デカミンのところ!」
ライゼスに問われて力強く答えたわたしに、彼は紺碧の髪を傾けて「デカミン?」と不思議そうな顔をした。
※作品に出てくる動植物の品種は架空のものです
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