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白き龍の愛し子は猫に懐かれる  作者: もんどうぃま


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22/22

22 新しい日々


 ニーナは今日もネオコルムのドニの家で目覚めた。窓から見える景色にはまだ慣れない。ネオコルムの街の音も聞こえない。やっぱり少し寂しいとニーナは思った。


 ネオコルムを破壊する前、お世話猫たちは家を移設できないかジャンに相談した。お世話猫にとって家は大切なものだ。クロとコウにも相談して、移したい家は全て移すことにした。


 壊れないように、傷付けないようにと大きな建物を移設するのはとても難しかった。


 シロがまだ眠っていたのもある。ニーナに龍玉がシロの回復を妨げない程度に魔力を提供してくれた。それがなかったら難しかったとジャンは言っていた。


 シロの回復が遅れるとニーナが悲しむと思った龍玉が絶妙な均衡を保ってくれたらしい。後日起きてきたシロが、ニーナの助けにもなれたし、回復も妨げなかったと龍玉を褒めていた。


 さらにお世話猫の識者の助言もあった。細かい作業が多く、一番大きなドニの家が移せてしまえば後はなんとかなる、と全員が希望を燃やした。


 全て移設し終えた時は、とにかく嬉しくて普段冷静な識者も混じって全員が輪になって踊り出した。こうして移設が終わった街を壊し、使える素材を全て亜空間に移し、新しい街の建設が始まった。


 ネオコルムのドニの家は、亜空間のドニの家の隣に移された。ニーナは今ネオコルムのドニの家に住んでいる。


 体を労わる必要があるニーナは、騒がしい所へ行くことをシロに禁じられてしまった。今日は大人しく家で読書をしている。あれから蔵書はかなり増えた。


 シロは亜空間に新しくできた猫族の街を整備するのに忙しい。猫族は想像以上に逞しく、快適に暮らせるように街をどんどん広げた。


 放っておくと何処まででも開拓するので、シロは気が気ではなかった。どうもお気に入りの景色があるらしい。龍の範囲と猫族の範囲を決めて、なんとか安寧を守った。


 アンナは大地で暮らしている。時々亜空間に遊びに来てくれるが、長く過ごすのは難しかった。魔素が濃いとこんなに違うのか、と驚いていた。シロの魔力が満ちて、亜空間の魔素が濃くなったとドニが言っていた。


 シロが結界を張って、家の中だけ魔素濃度を下げてくれた。ネオコルムの街で暮らしていた頃の濃度だ。アンナだけが開けられる秘密の扉も作ってくれて、毎日でも会えるようになった。


 今のユーエラニアでは大人が忙しく働いている間放って置かれる子どもたちが増えたそうだ。急に環境が変わって、生きていくために皆必死だ。


 子どもたちが昔のニーナと重なって堪らなくなったと、アンナは子どもたちの生活向上のために奔走している。


 ユーエラニアは大地の一国として認められた。往来が増え、子どもたちの生活はますます不安定になった。良い人ばかりではなかったからだ。


 アンナは聖堂で食堂を開いた。ネオコルムで食堂を切り盛りしていた経験を活かして、子どもたちを世話する資金を得ているそうだ。


 やり手のドニに気に入られたアンナは、ニーナがシロと親しくなった後、食堂経営に勤しんでいたのだった。


 昼間は聖堂で子どもたちを預かり、大人たちは朝食や夕食を食堂で食べる。街全体が家族のようだ、と日に焼けた顔で笑ったアンナは眩しかった。


 先日その聖堂で知り合った人と婚約をしたが、アンナはまだ結婚する気にはなれないらしい。二人で子どもの世話をすることと食堂の経営に夢中なんだ、と言っていた。


「あとはお二人の事ですから、温かく見守りましょうね」

とドニに諭されてから、ニーナはアンナをせっつくのはやめた。結婚してほしいというのはニーナにとっての幸せのかたちだからねとコウにも言われた。


 時々ドニ、ゾーイ、コウの三人はネオコルムがあった辺りに行って、三龍の状態や大地に降りた猫族の動向を確認している。取り壊した墓があった辺りに花を供えたり、猫族秘伝の酒を撒いたりもしているそうだ。


 ドニの話では、今ユーエラニアはかなり活気付いているらしい。最初は空から突然降ってきた怪しげな国として扱われていたが、伝承にあった国だと分かると掌を返すように様々な国との国交が盛んになった。


 大地でずっと暮らしていた他の国からすると、謎が多かった時代の貴重な資料を持っていたり、昔のままの暮らしをしている人々が魅力的なんだそうだ。


 そして何より、大地では減り始めていた魔法使いが居たことも大きい。それまでの身分を捨て、魔法使いとして働く者が増えたと言っていた。


 ニーナが癒しの魔力玉を提供した時は、その質の高さに驚かれた。活動場所が聖堂に限られてはいたものの、多くの人の助けとなり、随分と感謝された。時間と体力が許す限り癒しの魔力玉をたくさん作った。


 そうして、役に立てた事が嬉しくて頑張りすぎたニーナは熱を出し、シロに療養を厳命されてしまった。シロのあまりの剣幕に、誰も助け舟を出せない程だった。


 ニーナが熱を出したのにはもう一つ理由があった。大地に残った猫族が、ドルムエラルの頃から大地で暮らしていた猫族の隠れ里に辿り着いたのだ。


 戦火を逃れて隠れ里で療養していた仲間を保護して、一人残らず亜空間に移動した。潤沢な魔素に満ちた亜空間に入った猫族は、体が軽い、怪我が治った、と大喜びだった。


 大地の魔素はすでにかなり減っていて、いずれ魔法が使える人は居なくなるだろうとのことだった。


 ドルムエラルの頃から大地で暮らしていた猫族は、ある日魔素がないと生きていけないことに気づいた。彼らは全てを受け入れて隠れ里で細々と暮らしていた。そこへ思わぬ救援を得て感極まった。その熱に浮かされたニーナも張り切りすぎた、というワケである。


「ニーナ!」

シロが部屋に駆け込んできた。

「朗報だよ!一緒に行こう!」

ニーナの服装を魔法で外出用に着替えさせたシロは、あっという間にニーナを抱き上げて転移した。


 シロとニーナはクロが寝ぐらにしている洞窟にいた。シロはいつになく興奮した様子で、早口で捲し立てた。


「クロ!どうなの?知らせを受けてすぐに来たんだけど、その後どう?あれ?コウは?」

「コウはジャンとさっき来て、その奥で魔力を探っている。ん?シロ、ちゃんと休んでいるか?顔色が良くないような気がするんだが」


「うん。例の龍玉がね、思い出すたびに自分の辛い体験や悔しかったことを僕に夢で見せるんだよ。知らなくていいことまで知っちゃって、もう疲れちゃった」

「あぁ。あの枯れ木になったあいつのせいか」


「その人の出てくる夢は碌な事がなくてね。もう考えたくないんだ。なんかもっと綺麗なものが見たい。そうそう、マリーは飾り箱を開けてもくれなかったみたいで、御守りするぞ、って張り切ってたのに放って置かれて辛かったんだって」


「大変だな」

「龍玉を放っておいたのは僕だから仕方がないけど、……疲れた」

「もういい、と龍玉が思うまで付き合うしかないな」

「……そうだね」

「それにしてもコウは遅いな。ワシはもう万全だから手伝うと言ったんだがな」


「コウ、楽しみにしてたからね。自分でやりたいんじゃない?」

「そうかもしれんなぁ」


「クロさま、お久しぶりです」

「おぉ!ニーナ、息災か?シロの事で困っていることはないか?」

「クロ、やめてよね。そうやってニーナに色々吹き込むの」

「はっはっはっは。お!コウに呼ばれたぞ」


「はいはいっと」

シロが指し示したところに紅龍、碧龍、シバ、そしてルリが転移してきた。少し遅れてコウとジャンも来た。


 シロは駆け寄ると、

「みんな、迷惑をかけたね。体はどう?違和感はない?特別に僕のニーナの癒しの魔法をかけてもらう権利を……」


 シロが話し終わる前にニーナはもう四者に癒しの魔法をかけ始めていた。シロがニーナを見たので笑顔で応じる。十分休養を取っていて暇だったくらいなので、かなり効果のある魔法になった。元気そうなニーナを見てシロは安心したようだ。


「みなさま、戻りましたわ。ニーナさま、癒しの魔力をありがとうございます」

碧はクロ、シロ、コウ、ニーナと順に顔を見ながら言った。嬉しそうだ。


「ただいまー!」

元気な紅の声を合図に、コウは紅と碧をギュッと抱きしめた。

「おかえり」

涙混じりのコウの声を聞いて、紅と碧の目にも涙が浮かんだ。何も言い出せず無言で何度も頷いた。


 シバは嬉しそうにジャンに戯れ付き、ルリは人型になって碧の涙を拭っている。クロとロウは満足げにお互いを見て、クロがロウの頭を撫でた。


「さあ、帰ろうか」

シロはそう言うと、全員を亜空間に一気に転移させた。

「シロさまのお力はこんなにもお強いのですね」

ロウが驚いたようにクロに話しかけた。

「ニーナが傍にいるからね」

ニヤニヤと笑いながら言ったコウを無視して、シロはニーナを抱き寄せた。


「そろそろニーナの家に引っ越そうと思っているんだ」

シロがそう言うと、全員驚きで目を見開いてシロを見た。

「ちゃんと意味が分かって言っているのか?」

「もちろん」


「ニーナさまのお気持ちは確かめられたのですか?」

「ん?」

碧の質問に首を傾げたシロは、ニーナから引き剥がされた。クロとコウに引っ張られてゾーイの家に連れて行かれた。


 ドニとゾーイも加えてたくさん説明をされたシロが、ニーナに婚姻の申込みをしたのはそれからしばらく経ってからのことだった。


 とても素敵な時間だった、とニーナは嬉しそうに話し、ドニは「そうでしょう、そうでしょう」と満足気に頷いた。





読んでいただきありがとうございました


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