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白き龍の愛し子は猫に懐かれる  作者: もんどうぃま


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20/22

20 終わり

 

 ジャンはシロから離れた所に転移の魔法陣を発動した。人型の紅と碧、眷族三匹も転移してきた。


「ニーナ!」

あんなに余裕がないシロは見たことがなかった、と後々コウに何度も言われた程、シロは動揺していた。


「倒れている人は全員無事だ。人だった枯れ木は回収した」

見廻りを終えたクロが人型に変わりながら降りてきた。


「すまない。魔力が足りない。浮島を浮かせている魔力を止める」

「内側の結界を止めちゃえば?」

「内側と外側の間に魔獣がいる。外側を止めれば浮島が壊れる。順々にやっていくしかない。協力を頼む」


「シロ!魔獣は紅と私で減らしてきたわ。気の毒には思ったけど、大地には戻せないんでしょう?」

「助かる。碧たちが減らしてくれたなら、内側の結界を止めても何とかなるだろう」


 集まった四龍と五眷族に言った後、シロはニーナを抱き上げた。シロは浮島を浮かせている魔力と内側の結界を止めた。


「行くぞ!コウ!」

クロは龍の姿になって王宮から飛び出した。シロとジャンを残して、紅と碧、四眷族も後に続いた。


 浮遊感。


 地響き。


 人々は異変に悲鳴をあげた。


 揺れる。


 落ちる。

 

 クロは大地を上から土魔法で固定した。落ちていく浮島を止めることはできないが、せめて表層だけでも無事なら生存率が上がる。


 コウは広範囲の精神魔法を使って、魔力量が少ない人々を眠らせた。混乱して暴れる人が出ると危ない。魔獣と戦えない彼らが恐怖を味わわないで済むようにと願った。


 コウが浮島の下に行くと既に紅、碧、ルリ、シバが落下する衝撃を和らげようと苦戦していた。碧とルリが水魔法で地面の下を覆い、紅とシバは魔力を譲渡する事で碧とルリを支えていた。


 ロウも追いついて、水の内側にある土を崩れないように補強した。島とは言え、広大な大地を支えるため、魔力がどんどん減っていく。


 王宮に残されたシロはニーナが落ち着いたのを見てホッとした。魔力供給先を二つ減らした分、ニーナに魔力を返すことができた。と言うより、ニーナの中の龍玉が勝手に持っていた。


 ニーナはシロの手を借りて立ち上がった。心配そうに二人を見ていたジャンは安堵のため息を漏らした。


「シロ、ありがと。もう大丈夫」

「よかった、ニーナ」


「シロ、人々を守りに行きましょう!今落ちているんでしょう?大地で暮らしている人々の上に落ちたら大変だわ」


「分かった。ニーナ、僕と一緒に来て。ジャンも補助を頼む」

シロはニーナを抱き上げて島の上空に転移した。


「シロ!来たか」

「すまないクロ。また手を煩わせた」

「今更だ。どうする?もう浮かせないのか?」

「もう気持ちがない。それに浮かせる必要がない」

「そうか」


「例の山に落としたい」

「あの山か?」

「そうだ」

「なんとかなると思う」


 コウの念話が頭に響いた。

「シロ!クロ!下で支えている紅と碧の限界が近い!」

「うぅ」

「シロどうした?」

「急に浮島が重い……大地に吸い寄せられてるのかも知れない。大地の引く力に抵抗できない。コウ!紅たちに逃げるように、うわぁぁ!」


 苦しそうなシロ。落下が加速した。制御できない。必死に外側の結界を保つ。ジャンはシロが言っていた山辿り着けるように進路を調節した。シロはもう結界を保つのに必死だった。


 ニーナはシロにしがみついた。シロが自分を離したがらないので、せめて負担を減らそうとした。魔力を分けてあげたくても龍玉がそれを許さない。


 コウが紅と碧の所へ近付こうとした時、ロウが紅の尾で弾き飛ばされてコウの方へ飛んできた。コウはロウを受け止めた。


「大丈夫か?」

コウがロウの顔を覗き込む。

「紅さま!碧さま!」

コウに受け止められたままロウが叫んだ。


 コウとロウの目の前で浮島は目的の山に落ちた。衝撃を結界が相殺する。遥か上空から落ちたとは思えない静かさだった。山は崩れずに持ち堪え、周囲の大地に被害はなかった。


 呆然とするコウとロウ。シロとクロが来た。

「どうした?」

「紅さまたちが下敷きに……」

ロウがクロを見る。クロは目を閉じて気配を探った。紅と碧の元々の体を作り出したのはクロだ。


「気配はまだちゃんとある。力を使い過ぎたんだろう。今は残りの魔獣と猫族の事をなんとかしよう。シロ、外側の結界を消せ。ジャンとニーナはネオコルムに結界を張って見えないようにしろ。コウは猫族の動向を決めろ。実は今まで言わなかったが、大地の猫族が姿を消した。ロウ、魔獣を滅する。ワシについてこい。さあ、『皆、動け』」


 クロの魔力が籠った声を聞き、動揺が残る中、全員指示通りに動き始めた。クロとロウは魔獣を見つけたが、結界の崩壊に合わせて王太后のように消滅していった。シロの結界の外では生きられなかったようだ。


 シロの魔力は限界が近い。外側の結界を止めたので少し動けるようになった。それでもニーナの近くにいたくて顔には出さないように頑張っていた。


 コウがネオコルムの猫族に、大地にいた他の猫族がどこにいるか分からないと伝えると、猫族の面々は打ち合わせを始めた。話し合いはすぐに終わった。猫族は大地に残る者と亜空間に移る者に分かれた。


 ネオコルムに住んでいたユーエラニア人は大地に残ることになった。亜空間は人が暮らすには魔素が高過ぎるので、大地に残る猫族に帯同することになった。何かの助けになれたら、と言っていた。


 亜空間に移る者は荷物をまとめ、大地に残る者との別れを惜しんだ。みんな笑顔で涙はない。ニーナとジャンはネオコルムと亜空間を繋いだ。


 疲れ果てたシロはニーナと離れることを渋ったが、ニーナが手を繋いで泉に連れて行くとそのまま泉に入って眠ってしまった。


 コウとクロは大地に残る猫族との話し合いをしていた。ネオコルムに張られた結界はまだ残っている。大地の魔素が減っていて、猫族が大地で暮らすのは難しいことが猫族の識者から伝えられた。


 識者によると、魔素は龍から放たれているのだそうだ。亜空間に龍が移った後減り始め、龍が大地に遊びに来るようになった頃また増えたらしい。


 諸々詮索されると面倒だと、ネオコルムの痕跡を消すことになった。ただその場合、大地に残る者が亜空間に移りたい時はどうするのかが問題になった。


「ワシはあの山にいい寝ぐらを見つけた。この大地で紅と碧が眠りから覚めるのを待つつもりだ。大地で暮らすのが辛くなったら、ワシに会いに来るがいい。ワシは転移させてはやれんが、シロやコウに連絡を取ることはできる」

クロの言葉で方針が決まった。


 コウがゾーイとドニを連れてきた。二人は大地に残る猫族との別れを惜しんで、猫族秘伝の諸々を渡していた。大地を行く猫族と帯同者はお礼を言ってネオコルムから出て行った。まずは世界中を廻るそうだ。


 コウとクロはネオコルムの建物を破壊した。ゾーイとドニは農園や果樹園をニーナとジャンの空間魔法を利用して亜空間に移す。


 ユーエラニアの人々が食べ物に困らないように半分残すことになった。それ以外ネオコルムだった事がわかるものは全てなくなった。


 猫族、例の事件で弔われた人々、ルドルフを含むネオコルムで暮らしていた人々の墓があった辺りには目印の木を植えた。


 ニーナは楽しく暮らした日々を思い出していた。充実した毎日。優しくて楽しい人々。大好きな街はもう跡形もない。


 ニーナを温かく育んでくれた猫族と街の景色が浮かんでは消えた。

「今までありがとう」

ニーナは亜空間で咲いていた花を街があった所にたくさん転移させた。花は大地の風を受けて揺れた。


「ニーナ」

眠りから覚めたシロがニーナを迎えに来た。

「随分短い睡眠で済んだんだな」

クロが驚いた顔でシロを見た。いつも冷静なクロには珍しい。


「やっぱり結界四つが負担だったみたいだ。それにあの龍玉を使っていたやつが居なくなったのが大きいのかも」


 ジャンは大きく頷いた。

「随分美しくなっていましたからね。王太后が歳を重ねるにつれ、シロさまの負担が大きくなっていたのかもしれません」

「ジャンの言う通りかも。久々に魔力が潤ってるよ。亜空間、もっと広げられそう」


「クロ、何かあったら呼んでくれ。俺もたまにこっちに来るから、必要なものがあったら念話で言えよ?」

コウは少し寂しそうだった。


「特に何もないだろうが、遠慮なくそうさせてもらう。ああ、それに、大地に残った猫族の事も任せろ」


「俺かシロが行くからな。猫族にゾーイとドニが何か渡していたし、大丈夫だとは思うがな。ああ、ロウも残るんだな」


「はい。ボクはクロさまと居たいので」

「ワシもロウが居てくれたらありがたいよ。何と言っても猫族は逞しいからな。心配はしていない。ではまた会おう」


 クロとロウが寝ぐらに決めた山へ飛んで行くのを見送って、シロは伸びをした。

「さあ、帰ろう」


 ニーナをシロが抱き上げた。

「シロ、最後にユーエラニアを空から見たいわ。パルニアの屋敷を見てみたいの。聖堂も」

「分かった。王都を一周しようか」


 シロは浮かび上がった。ニーナはパルニア家を探した。上から王城は見つけた。王城の人々はテキパキと動いていて、活き活きとしているようにも見えた。


 パルニアの屋敷を外から見たのは二回くらいしかなかったので、どれがそうなのかは分からなかった。

「シロ、ありがと。もう、帰りましょう」

「いいの?僕はまだ余裕だよ?」

「覚えていなかったから、もういいの」


「じゃあ、ドニの家でその魔力玉を直させて。前贈ったその首飾り、ヒビが入ってる。ニーナがあの人の攻撃から僕を守ってくれた時、この魔法玉がニーナを守ったんだ。このままだと、次は守れないから」


「え。それで私、無傷だったのね?」

ニーナは首飾りの魔力玉を手のひらに乗せた。

「守ってくれてありがとう」

シロとニーナは顔を合わせて微笑みあった。


 シロはどんどん大地から離れた。雲に近づいていく。雲を通り抜ける時のニーナが可愛かった。雲にぶつかってしまうと思ったようだ。ニーナに雲を見せたかったシロは満足気だった。


 コウが追いついてきた。凄い速さでシロたちを追い抜いていく。背中にはゾーイとドニがいて、何か叫んでいた。


 後から聞いたらゾーイとドニの間にジャンが挟まっていたらしい。

「もふもふに挟まれてすごく幸せだったから、ニーナもやってもらった方がいいよ。でも前は絶対にドニ」

と教えてくれた。


 コウが魔法を使った。空が虹色に染まった。ユーエラニアの人々はその美しさに歓声をあげた。

 



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