表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

最終話「もう一度」

 体育祭が終わるや否や、すぐ文化祭が始まった。

僕は、クラス企画で、イントロクイズの司会担当を務めた。

音楽はよく聞く方だが、最近の曲は歌で始まるものが多いから、実質サビクイズになっていた。

午後には有志企画でゆうきと一緒にバンド演奏をする予定だ。

出番までの昼休憩に、ゆうきと一緒にお化け屋敷へ行くことにした。

企画の教室の前に着くと、そこにはゆきの姿が。

またもやあの時と同じく、呼び込みに負けて、渋々並んでいるみたいだ。

ラグーナの時と全く同じじゃないか…

気づいたら、親友そっちのけで走って行って、声をかけていた。


しゅん「やあ、ゆき。またお化け屋敷行くのか?」


ゆき「しゅんくん…あっ、この前は…ごめん、ライブラリの時。なんか悪い態度とっちゃって、

   しゅんくん傷つけちゃったかなって思って、反省してる。あっ、この前の体育祭、

    すごく良かったよ!しゅんくんの走り姿、かっこよかった!」


しゅん「いやいや、元々は僕に原因があるから全然気にしなくて良いよ。あっ、もうすぐ入れるよ」


ゆき「しゅんくん、また遠足みたいに笑わせてくれる?」


しゅん「僕に任せろ!」


扉を開けて暗闇の中に入った。あの時と同じように、ゆきを笑わせてあげた。

この前よりも、ゆきの笑い声が多く聞こえた気がした。

出口の扉を開けて廊下に出たところ、2人で大爆笑していた。

何も知らない人から見れば、かなり異様な光景であったが…


ゆき「ああ面白かった。あの時と同じだね」


しゅん「そうだね。今日の方がいっぱい笑ってたよ」


ゆき「うそ〜っ、なんか恥ずかしい…でも、

   またしゅんくんと、お化け屋敷入るなんて思ってなかった。ありがとう」


しゅん「そう言ってくれて、僕も嬉しいよ。」


今度こそ告白するチャンスだ!と思ったが、

あれを聴かせてからにしようと思い、彼女を自分のステージに来るよう誘った。


しゅん「僕さ、1時間後ステージでバンド演奏するんだ。もしよかったら見てくれる?」


ゆき「しゅんくんがバンド!?絶対見に行きたい!」


しゅん「ありがとう。それじゃあ、時間まで、また2人で回ろっか」


その後、2人で射的をしたり、かき氷を食べさせ合った。


 そして自分のバンド演奏の時間、僕の担当は…ボーカルだ。

そう、僕はゆきに、歌で気持ちを伝えたかった。

2ヶ月間、放課後カラオケに行ってたくさん練習した。

何度も間違え、挫けそうのなったが、その度にゆきのことを思い浮かべては、

たくさん歌ってきた。


 ついに、イントロがかかり始め、ゆうきのドラムも演奏され始めた。

ゆきの姿はすぐ目の前にあった。

でも、顔を見るとニヤニヤしてしまうから、あえて遠くの二階席の方を見ていた。



 歌い終わったあと、なんとも言えない、幸福感が体に渡った。

ゆきの顔を見ると、屈託のない笑顔があった。

ゆき「しゅんくん、めっちゃかっこよかった!それに、しゅんくんの歌声、

   甘くて好きになっちゃった。また来年も聴きたいなあ」


しゅん「ありがとう。なんか照れるなあ。…ねえ、ゆき、ホームルーム終わったらさ、

    ゆきのクラスに行くから、待ってて欲しい」


ゆき「分かった。なんかあるの?」


しゅん「それは、あとで伝えるよ」


 文化祭も終了し、クラスの片付けも終わったあと、予定通りゆきのクラスに行った。

そこにはゆきの姿があった。気づくと、すぐさま全力で走って向かっていた。


ゆき「あっ、しゅんくん、お疲れ様。息上がってるけど大丈夫?」


しゅん「大丈夫。ちょっと走っただけだから…」


ゆき「そう。それで、伝えたいことって何?」


僕の鼓動の高まりは、もう止めることができなかった。そして…


「〇〇〇〇〇〇〇〇(告白したい、してほしい言葉をご自由に埋めてください!)」


やっと、自分の思いを伝えることができた。ゆきは数秒間おいて答えた。


「しゅんくん……」


ゆきはそう言いながら、僕の手を繋いできた。


「はいっ……て言って欲しい?」


ゆきは急に意味のわからないことを呟いた。


しゅん「…え?」


ゆき「だから、はい…って言って欲しいの?言われたくないの?」


しゅん「それは…ゆきが決めることでしょ」


ゆき「ふふっ、…はい、に決まってるじゃん、しゅんくん。ちょっと遊んでみちゃった」


しゅん「なんだよ、ゆきったら…」


僕とゆきは、また2人で大笑いをした。


2人で手を繋ぎながら見上げた空は、暖かな黄金色が広がっていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ