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第5話「chance」

 気づくともう朝になっていた。学校の準備をしようとしたが、休日だと分かり、一安心した。

親友のゆうきに電話でも相談しようとしたが、今まで頼りすぎていたのを考えると、

なんだかかけづらくなった。朝食をとっていたところに、弟のけんが話しかけてきた。


けん「にいちゃん、なんで今日はこんなに元気ないの?いつも笑顔で元気いっぱいなのに」


しゅん「ちょっとね、兄ちゃん悩み事があるんだ」


けん「悩み事って?」


かおり「どうせ片想いの女の子のことでしょ?昨日からずっと地球が滅亡したみたいな顔してるから」


ゆうぞう「もう顔をいじるのはやめなさい」


いきなり、おじいが姉に向かって、威厳のある口調で怒った。


ゆうぞう「かおりは、しゅんのことがわかるって言うんだろ。だとしたら、

     もっと良い接し方ができると思うんだけどな」


おじいは普段温厚篤実な性格だから、こんなに厳しく言う姿は初めて見た。

家族みんな黙り込み、テレビニュースの音声だけが流れ続けた。

 

 僕は、朝食後おじいのいる部屋に向かった。


しゅん「おじい…さっきはありがとう。けど、ここまで言ってくれる必要はないよ。

    姉ちゃんにも悪いし…」


ゆうぞう「何を言っとる。しゅんちゃんはわしの可愛い孫じゃけ。

     しかし…助けてあげようとして、つい怒ってしまったことは、すまなかった」


しゅん「いや、おじいが謝ることないよ。んでさ、おじいは、学生時代恋愛はしたことある?」


ゆうぞう「おじいもあったな…同じクラスにとっても可愛い女の子がいてなあ、

    それで、おじい告白してしまったさ。けどその時は振られた。でも卒業式の時に、もう一度自分の想いを正直に伝えたら、今度は喜んでくれたさ。あの時の思い出は、一生わすれられんなあ。」

しゅん「へえ、おじいにも、青春あったんだねえ」


ゆうぞう「そうじゃ。わしらの時はスマホが無くてのう、一回一回の出会いがすごく大事やった」


しゅん「そうか〜、僕も大事にしなきゃな。ねえ、おじい、好きな人に、もう一度告白するには、今からどうしたら良いのかな」


ゆうぞう「それは、自分で見つけ出すんじゃ。受身で行動すると、

     自信が持てなくなってしまうって思うな、おじいは」


 その休日は、専らゆきのことを考え続け、もう一度振り向かせる方法を考えていた。

おじいの通り、今までは親友のゆうきに頼りすぎていた、

今は、自分から勇気を持って行動する時なのかな。

机に貼ってある行事予定表を見つめた。9月には体育祭、そして文化祭が続く。そうだ!

今度の学祭でかっこいい自分をアピールできたら、もう一度仲良くしてもらえるかも。


 休み明け、親友にその旨を伝えることにした。


しゅん「ゆうき、ちょっと言いたいことがあるんだけどさ」


ゆうき「なんだよ、この前は地球が滅亡しみたいな顔してたのに、

    今大谷翔平に会えたみたいな顔して」


しゅん「僕さ、9月の体育祭、リレーに出ようって思うんだ。 

    あと、文化祭で、ゆうきと一緒にバンドやりたいんだ。」


ゆうき「しゅんがリレーに!?走るの苦手って言ってなかったけ?バンドは喜んでやるけど…」


しゅん「この前、振られて悩んでいる時に、おじいと喋ってさ。おじいから、

    自分のことは自分で決めて行動しろって言われたんだよね。

    それで、気持ちを切り替えられて、もう一度ゆきに告白するためには、

    自分の勇気を見せることなのかなって。」


ゆうき「なるほど…だからリレーに出て頑張って走ってる姿を見せたいって訳か。

    しゅんにしては思い切った行動じゃねえか。俺はもちろん応援するから、頑張れよ!」


ゆうきに背中を強く叩かれた。嬉しかったが、少し痛かった。

体育祭のエントリー決めで、自分は勇気を振り絞ってブロック対抗のリレーに立候補した。

企画要項を見て分かったが、奇しくも彼女のクラスと同じブロックであった。


 体育祭当日、自分は会場のアナウンスを担当していた。

その間、ゆきの姿を見ることはできなかった。

リレーまでの間、緊張しながらも、放送に集中した。


 そしてついにブロック対抗リレーの本番が近づいてきた。

僕は走るのがあまり得意ではないので、2番目出走となった。

そしてバトンが渡された、この時にはもう彼女のことよりも、走ることで精一杯だった。

次の人にバトンを渡し終えたその時、あまりにも疲労が来たので、座り込み、顔を上げて息をした。

その視線には、観客席で応援しているゆきの姿があった。

屈託のないあの笑顔が戻っていた。

競技が終わって、観客席にいるゆきに思わず下から声をかけると、笑顔で小さく、

右手でgoodのポーズをしてくれた。

その時、僕の鼓動は久しぶりに鳴り響いていた。

その後自分の客席に戻ると、親友だけでなく、クラスのみんなが喜んでくれた。


ゆうき「やったな、しゅん。すごかったぞ。ゆきって子もきっと驚いているはず」


しゅん「さっき、ゆきを見つけたんだ。走り終わったすぐに」


ゆうき「ああ本当!?どんな感じだった?笑顔だった?」


僕は、さっきゆきが自分にしてくれたgoodのポーズをした。

すると、ゆうきは僕の肩を叩いて、


「よかったな!」


と、言ってくれた。

ちなみに、結果は自分のブロックが総合優勝をもぎ取った。


 帰り道、親友と喜びの乾杯をしに、帰り道のカラオケに寄っていたら、

帰宅が夜遅くになってしまった。


しゅん「ただいま〜母さん、風呂もう入れる?」


ひろこ「おかえり、しゅんちゃん。体育祭、すっごく楽しかったみたいね。満面の顔がそう言ってるわ」


しゅん「あっまた顔に出てた?」


ひろこ「ふふっ。そんで、お風呂沸かしといたわよ。あと、しゅんちゃんが好きなメロンもあるわよ」


しゅん「母さんありがとう!」


今日はなんて良い日なのかと、メロンを頬張りながらしみじみ感じたのであった。

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