新年
新年祭を終えた次の日、呼び出しを受けた僕達はバルドの屋敷に集まっていた。
「初詣行かないか?」
「何ですか?それ?」
「何でも東洋の国だと、神様に新年の挨拶や願掛けをしに神社って所に行くらしいぞ!」
「神社?」
「神様を祀ってる場所らしいぞ!」
「それだと、教会みたいな所何ですかね?」
「さぁ?俺も聞いただけだから詳しくは知らない」
「私達に話しを振る前に、少しは調べようとは思わなかったんですか…?」
「コンラット、俺が歴史書以外の本を読んだりするわけないだろ?」
「そんな不思議そう顔で、さも当然のように言わないで下さい…」
寒空の下、何時ものように誰かから聞きかじって来ただけの話しをするバルドに、コンラットはため息を付きそうな顔をしていた。だけど、その光景に既に慣れっこになって来た僕は、普通に話しを進める。
「それなら、今日は教会に行くの?」
「神なんていないのに、わざわざ挨拶も何もないと思うけどな」
無神論者なのか、僕の発した言葉にネアは全く神なんて信じていないようなぞんざいな態度で言う。
「ネアは、ユーレイア教を信じていないんですか?」
「神聖国家は精霊信仰で精霊王を神として崇めているようだが、この国の宗教は建国時のドタバタで出来た宗教だからな」
「そうなんですか?」
「あぁ、縋る物が欲しかった民が作ったような物だから、今の神の名前は後付だ」
「そんな話し、1度も聞いた事もないですけど?」
「神を崇める教会側が、神がいないなんて言うわけないだろう」
「それは…そうですけど…」
ネアの言葉に納得いかなそうな声を上げるコンラットに変わって、僕がその先の疑問を口にする。
「ネアは何でそんな事知をってるの?」
「人間、生きてれば色々とな」
「それ、何の答えにもなってなくないか?」
「他に言いようがあるか?それに、俺に何か言う前に、自分が質問に答えられるようになっておけよ」
疑問に疑問で答えるネアにバルドは反論するけれど、口で勝てるわけもなく、完全にネアに言い負かされていた。
「それで、その後教会には行ってみたは良いんだけど、特に何かあるわけじゃなかったから、直ぐに帰って来たんだ」
教会からの帰り道の途中で父様に会った僕は、一緒の馬車で帰りながら、父様から聞かれた今日の出来事を話していた。
「父様は神様がいないって知ってた?」
「知ってるよ。城には、当時の資料が改変せずに残っているし、昔からある家にも記録が残されているからね。それに、儀式で教会を使わなければいけない以上、あまり教会が力を持ってしまっても困るから、それを防ぐための弱点はちゃんと持っておかないといけないからね。だがら、公にはされていなくても、知っている者は一定以上は知っていると思うよ」
僕が問い掛ければ、父様はネアが答えてくれなかった質問に答えてくれた。
「だから、父様も教会とか行かないの?」
「そうだね。教会は献金やお布施などと、何かに付けて金を請求してくるだけで、行ったとしても意味がないからね」
「父様には、神様にお願いしても叶えたい願いとかないの?」
「ないね。神なんかに祈るよりも、自身で叶えた方が速いうえに確実からね」
僕が問い掛けると、何とも父様らしい答えが帰って来た。だけど、僕の顔を見ながら小さな笑みを浮かべると、何だか満ち足りたような声で言った。
「それに、どうしても叶えたい願いはなら、もう既に叶っているからね」
「それって何?」
「さぁ、何だろうね。だが、それが神のおかげだと言うのなら、その感謝を伝えに家族で教会に行くというのも悪くはないかもね」
僕の問い掛けにはっきりとは答えてくれない父様に、何処か面白くないような拗ねた気分になって、父様へと当てつけのような言葉を投げ掛ける。
「そういえば、父様はもう仕事終わったの?」
フラリと現れた父様へ今になった事を問い掛ければ、父様は天気の話しでもするような気軽さで言った。
「珍しい方からリュカが帰って来ているようだったから、何かあったのかと思って外に出てきたんだよ。だけど、一応、早退届けは部下を通じてレクスには出して来たから、このまま帰っても問題ないんじゃないかな?」
「えっ…?それって、大丈夫なの…?」
僕に疑問で返して来た父様へと声を掛けると、ちょうど馬車が屋敷へと到着した。、そしてまもなく、城からの早馬がやって来て、父様は今乗って来た馬車に乗って城へと戻って行った。
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