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「んん、いい朝」


 あの日から、5年の月日が経っていた。

 今も、私はカサロの森の奥の奥に住んでいる。ここは瘴気が溢れ、魔物化した動物が住むと恐れられているカサロの森。


 たまに、ランクの高い冒険者がクエストで訪れるだけだから。このカサロの森は荒らされていなくて、研究者が聞いたら喜ぶ珍しい薬草、希少な植物が生えている。私はポーションの他にダイエットの薬、痒み止め、腰痛に効くシップなどなど新しい薬を作っている。


(一般におろせない薬はお父様とお母様、屋敷の使用人が使っているのだけど)


 前世の私は主婦だった。今世は生活魔法という便利なスキルを持っているので家事は苦じゃない。まあ掃除を1日サボっても、クリーン魔法ですぐにキレイになるし。


 家に備え付けの魔法ポストに欲しいものを書いた紙を入れると、すぐお父様が食材、日用品、欲しいものを送ってくれる。

 


 一応、3年前にルールリア王太子殿下とは離縁できたみたい。次の婚約者は誰なのかは知らないけど、お父様の話では"いる"と話していたので、伯爵令嬢ロローナが選ばれたのだろう。


 元旦那、ルールリアと離れてからすぐ私は体調を崩した。常に眠く、熱っぽい……いつもより食欲も増え、お父様とお母様に手紙を送った。すぐに屋敷に来さなさいと返信があり、主治医に診てもらったところ妊娠していることがわかった。


 ――ルールリアとの子供だけど……私は産みたい。


 両親と何度も話し合いをして出産を決めた。森の家と邸を行き来して十月十日大切に守り、出産の日を迎える。出産の場所はカサロの森ではなく、屋敷に産婆を呼んで始まった。だが難産(出産に時間がかかっている)で母子ともに危険な状態。子供か、私か、どちらを取るかまで両親は産婆に言われた。


 出産の時に魔法を使い母子を守ることができない。今から生まれてくる子供は私の魔力と共に育ってきた、そこに別の魔力の力は危険すぎるのだ。


『お願い! お父様、お母様……私の子供を助けて!』

 

 そう願った私に。この日、人型となって森から一緒に来ていた、フェンリルで恋人のシシ。彼が「両方助ける」と元のフェンリルの姿に戻り、特別な力を使い私と子供を守ってくれた。


 ――ああ、彼の力……シシが私と子供を守ってくれている。


『おギャア――!!』


 数分後。子供は元気な産声をあげる。

 私は今世、子供を産み、抱きしめることができた。


『アーシャ、男の子が生まれたぞ』

『アーシャ、よく頑張ったわね』

『僕に似て、可愛い子だ』


『……シシに似ている? フフ、うれしい』


 ――シシ、あなたがいてくれてよかった。

 

 

 我が子はルールリア殿下――王家の血筋の為、王家の色といわれる金色の髪だと思ったのだけど。子供はシシと同じ真っ白な髪と私の瞳の色、水色をした可愛い男の子。産むときに守ってくれた彼の力を授かったみたい。


 生まれたばかりの子を見たシシは。


『おお! やった僕とアーシャの子だ!』

『……シシ? それは違うでしょ』

『違わない! 誰が何と言おうが、この子は僕の子だ!』


 みんなが止めてもシシは大喜び。このシシの力の中で生まれた子供の名前は両親とシシ、私で考え、チェルと付けた。



 チェルは風邪も引かず、すくすくと育ち5歳になった。今日も家の庭で洗濯物をする、私の足にしがみ付く。


「フフ、私の可愛いチェル。お手伝いに来てくれたの?」


「そうだよ。可愛いアーシャママ」


「そうだ、アーシャママは可愛い。それでチェル、僕は?」

 

「シシパパは、カッコいい!」


 洗濯を干す私の側で寝そべる、フェンリル姿のシシに飛びつく。家族共々、カサロの森で今日も元気に過ごしている。

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