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騎士団長と近衛騎士の話。王城のロローナが見つけたモノ。

 ここは王都の酒場。騎士団長キル・スローガは「話がある」と、ある人物をここへ呼び出した。その人物とは、ルールリア王太子殿下の近衛騎士ラル・ローズキスだ。


 彼らは歳は違うが騎士になった時期が同じ、2人は同期だった。


「キル、ルールリア王太子殿下と今後の話していた。遅れて悪いな」

 

「いや。俺も今来たばかりだ、気にするな」


 仕事上がり、ラフな格好の2人はカウンター席で、冷えたエールで喉を潤した。

 

「プファ~、うめぇ~! 仕事上がりの一杯は格別だな~。でもよ、急に酒を一緒に飲もおってどうした? 騎士団で何かあってのか?」


「いいや、お前に話があるんだ」


 キルはスラックスのポケットから丸く、小さな煙玉をひとつ取り出しカウンターに置いた。それは騎士団の中では暗黙の了解――魔物避けの煙玉だ。それを見たラルはそれが何かわからず「それは何だ」とキルに聞いた。


「これはな……いまは使われなくなったアーシャ様の研究室で見つけた……魔物を痺れさす煙玉だ」


「はぁ? アーシャ様の研究室で見つけたぁ? お、お前、アーシャ様の研究室を粗探ししたのか」


 コクっと頷いたキルに、ラルは怒ることができない。彼らは最前線で魔物と戦い、多くの仲間を亡くしているのだ。


「まあ、粗探ししたことは黙っていてやるが。その煙玉がどうしたんだ?」


「ラル、本日――王の間に来た商人がカサロの森で助けられたと言っていたよな。そのとき使用された煙玉が、もしかするとコレかもしれない」


「なぜ、そう思うんだぁ?」


 疑問に思うラルに、キルはこの煙玉の効果を話した。


「魔物を痺れさす? あの商人もそのように話していたな。だとすると、アーシャ様がカサロの森でその商人を助けたことになる。あの方は今、カサロの森にいらっしゃるのか?」


「それは、まだわからないが。2日後、魔吸い石を確かめるため、カサロの森付近に騎士団は遠征する事になっている。オレはこのときカサロの森に行き、アーシャ様を探してみようと思う」


「いいな、それ俺も手伝いたい。その遠征に同行できないか、ルールリア王太子殿下に聞くかな。魔吸い石の効果も確認したいし」


「おお、剣豪と呼ばれるラルが来てくれるのは、騎士団としてもありがたい」


 各々、考えは違う。騎士団長キルは便利な煙玉をアーシャに作らせるため。近衛騎士ラルはアーシャをみつけたら。アーシャを自分のモノにして。誰の目にも触れさせないよう監禁してしまおうと――考え口元を緩ます。


「ラル、2日後頼んだぞ! ――さぁ、今日はオレの奢りだ遠慮なく飲んでくれ!」


「キル、言ったなぁ! じゃ、遠慮なく飲ませてもらう」


 キルは頼りにしているラルに話し、心のつかえがとれて上機嫌。一方、ラルはアーシャの有力な手掛かりを見つけ。この上なく、この夜は上機嫌だった。




 +




 2人が酒場で陽気に酒を楽しむ頃。――王城、ルールリアの執務室で、ロローナはあるモノを見つけて驚いていた。


(これって魔吸い石のランタンじゃない? 何故? ここにあるの?)


 ロローナも転生者でこの小説を知っている。彼女はアーシャが買えなかった、小説の続編を読み内容を知っていた。今――ロローナが見たのは後半に出てくる、闇堕ちして醜くなったアーシャが手に入れる、魔導具魔吸い石のランタン。


 小説のアーシャはルールリアを奪った、ロローナを恨んでいた。国外追放となったアーシャは隣国に渡り、闇市でこれを見つけ。なにかに操られて多くの瘴気を集め、アレを自身の体を使い復活させてしまう。


(ラスボスになったアーシャを私が可憐に倒して、ルールリア、みんなに感謝されるいい話)


 そのキーアイテムが何故ここにあるのか。それはロローナが女神に頼み、転生を遅らせたことが原因だと彼女は気付かない。


 だから、ロローナは自信ありげに。――まあ、何が起ころうとも「聖女の私がいるんだか大丈夫!」だと。

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