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「……っ」


 寝室の扉前までくると、ルールリアと伯爵令嬢ロローナの愛し合う声が聞こえた。


「可愛い、ロローナ」

「ダメですわ、ルル様」

「フフ、ダメだと言っておきながら……本当はココが好きなくせに」

「もう、ルル様のエッチ」


 ――あら、ルル様ですか。


 結婚をしてから7年が経ちますが。毎朝、夜と、私に「愛している」と愛を伝えていた癖に。ヒロインの登場で彼は平気で嘘をつける、男性へと変わられたよう。


 前世の旦那もだけど……夫婦の寝室に妻ではない、浮気相手の女性を入れるなんて、ほんと男って信じられない。


「……ハァ(頭が痛い)」


 ふと。先日、王城の庭園で開催されたお茶会の席で、王妃に『貴女はもうすぐ次期王妃となるの。だから、ルールリアが側妃を迎えても微笑んでいなさい』と言われた言葉が頭の中をよぎった。


 そのお茶会の席で王妃のお言葉に納得したし、覚悟だってした。私が王妃になった後で、彼との子供が授からなかった場合、側室を迎えても文句は言わないつもりでいた。


 彼と何度も話し合い、前世の記憶を思い出した今となっては。ルールリアが取った行動はあきらかに浮気で彼の裏切り、許すなんてできない。


(私、決めたわ)


 寝室の扉を開けようとした私を、止めようとした騎士を振り切り、なるべく音が立つよう大袈裟に扉を開けた。その寝室の中には床に脱ぎ散らかした衣類と、私達のベッドの上で抱き合う、裸同然の2人がいまの音にコチラを向いた。

 

「きゃっ!」

「うわっ!」


 2人の驚く声を聞きながらも。

 私はどこかホッとしていた。


(よかった、まだ下着をつけている、2人の睦愛は始まったばかりのようね。……前世は最悪だったもの)


 あの時を思い出し、気持ちの悪さに胃がムカムカしてくる。でもこれは前とは別だと、気持ちを切り替えて微笑んだ。


「ごきげんよう、ルールリア王太子殿下、ロローナさん」


「ア、アーシャ⁉︎」

 

 ルールリアは私の登場に驚くも、相手の伯爵令嬢はさも私を下に見る様にほくそ笑んだ。一瞬だけ『この女』と脳裏をかすめたけど、表情を変えず2人を見つめた。


 この場で、一番に慌てたルールリア。

 彼はすぐロローナから離れて。


「ア、アーシャ――こ、これは違うんだ」


 と慌てたように叫ぶ。

 それに。


「あら、なにが違うと言うのですか? ……ルールリア王太子殿下……いくら舞踏会が終盤だからと抜け出して、こんなことを、夫婦の寝室ですることですか?」


 と冷たく返す。


「…………い、いや。すまない」


「不貞行為を見た後で謝られてもね」


 このとき、慌てるルールリアを見ながら私は「これは違うんだ!」ですって、前世の旦那も"あのとき"言っていたわと……。浮気をした者が、浮気がバレたときに言うテンプレなのかしら? と、別のことを考えていた。

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