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 ひと月の間。各森の様子、魔物達の様子を確認しながら、私たちは旅の準備をはじめた。アウスターの国中の森を回る、この浄化の旅は――来年、チェルの誕生日が来る前に終わらせたい。


(去年はフェンリルのぬいぐるみだったけど、今年の誕生日は何が欲しいのかな?)


 シシと2人でチェルの欲しい物探しをしている。いま夢中になっている絵本。パパと森の散歩券。それとも私のお手伝いしてくれるから、子供用の調理器具とエプロンかしら。


 庭でシシと戯れるチェルを、私は洗濯物を干しながら眺めた。そのチェルが森を見て、シシにしがみついた。しばらく2人で話てシシは「アーシャ、行ってくる」「チェル、ありがとう」と、フェンリルに戻り森に走っていった。


 チェルはカサロの森で何かあったのか、いち早く気付いたらい。シシを見送って、洗濯を干す私のところへ来て、足に飛び付いた。


「チェル、どうしたの?」

「ママ、どこからか「助けて」って、小さな鳴き声が聞こえた」


「え?」

 

「その事をパパに伝えたら。パパが、ここでママと待っていなさいだって」


 何が起きたのか分からず。瞳いっぱいに涙をためたチェル、私はそんなチェルを抱きしめた。



 

 数分後に戻ったシシは口に、小さな黒いモコモコを咥えていた。


「モコモコオオカミだ。カサロの森の入り口付近で、震えているところを見つけた……側に、この子の母親と父親はいなかったよ」


(ちょっと待って、モコモコオオカミって幻級の精霊じゃない。見た目は羊に似ていて、他のオオカミとは違い攻撃はせず。額にためた魔力を使い防御魔法を使う、珍しいオオカミだと精霊図鑑で読んだわ)


「キュ――」

「え? 君、1人なの?」


「キュ、キュ!」

「ここから西のルーレンズの森から来た? その森では何があったの?」


 モコモコオオカミは――チェルに自分の話す言葉がわかってもらえるとわかり、必死に話す。それをチェルはウンウンと聞き取り私たちに話そうとするが。チェルはまだ上手く話せなくて、気持ちばかり先にいってしまい……「あ、ううっ」と混乱して、いまにも泣きだしそう。


「チェル、ゆっくりでいい」


(シシはモコモコオオカミの言葉が、わっているみたいだけど。チェルの為に全て任せようとしているのね)


「そうよ、焦らなくていいの」


「う、うん。パパ、ママ……ル、ルーレンズの森が大変! この子達が住む精霊の地が……く、黒い霧に侵されたんだって! それに触れた仲間が、それを吸って、おかしくなった。カサロの森に住む、強きフェンリルに助けてもらいに来たって言った」


 チェルは話し終えると、ハァ、ハァと肩で息を吸った。でも私たちにしっかり伝えられて、ホッとしたみたい。


 シシは長い鼻先で、チェルの頬をスリスリした。


「えらいぞ、チェル! よく頑張った。モコモコオオカミ、君の話はわかったが。ボクが倒せるのは強い魔物らだ……君たちの土地をおかした暗い霧、瘴気は消せない」

 

「キュ、キュ!」

「そんなぁ……みんな苦しんでる! たすけたい! パパ、ママ!」


 ――私も、助けてあげたい。


 だけど、幻級の精霊が住む土地には、選ばれた者しか入れないと書物で読んだ。彼らの土地を浄化するには。私がそこに住む彼らに認められないと……その土地には入れない。

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