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「「「いただきます」」」


 サンドイッチをお弁当箱から取り見つめる、どの世界でも、青空の下で食べる食事は美味しい。王太子妃のとき広場の提案をしてよかった。子供達が安全に遊べるよう、保護魔法がかかる木製のすべり台、ブランコ、シーソーで遊ぶ子供達の楽しげな声が聞こえる。


 シシカバの広場で散歩を楽しむ人、のんびりベンチで休む人、芝生の上で食事をする人……この幸せな光景が見られるとは思わなかった。数年前のシシカバは冒険者ギルドもない森に隣接した街。その森には魔物が住み、瘴気が立ち込め、人々が安全に働けず住みにくい街だった。


 いいえ、ここだけじゃない。

 そのような街や村が多くこの国には多い。


 私はどうにかして、人々の暮らしを安全にしたかった。


 人任せの陛下、王妃と王太子、自分たちのことしか考えていない貴族たちと何度も会議で話し合い、説得して街や村の改善と広場を作る案を通した。


 この案は通したけど。そのあと予算の割り当てに苦労をした……でも、ようやく人々が安心して住めるまでになった。


(あの頃は休まず、国中を浄化してまわっていたわ)

 


「ママ、このサンドイッチ大好き!」


 卵のサンドイッチを手に微笑むチェル。――ああ、可愛い。チェルの可愛い笑顔が見られる、この場所をほんとうに作ってよかった。あのとき貴族たちの圧力に負けず、この案を通してよかった。

 

「ママも好きよ」

 

「ボクも好きだ、美味い」

「うまい、うまい!」

「あらあら、シシもチェルも急いでサンドイッチを食べるから、ほっぺについている」


 広場で楽しい昼食を終えて、お茶の時間まで買い物をすることにした。まず向かったのは子供の服屋だ。店でシャツとスラックス、ベスト、チュニックを次々、手に取る。


「可愛い、どの服もチェルに似合う」

「そうだな、チェルは何を着ても似合うな」


 それに子供服は何着あってもいい。もし成長して着られなくなっても、シシカバの回収屋に持っていくと。街の中どこでも使用できる割引チケットと交換してくれる。


 そうして集められた服は綺麗に洗濯され、魔物、病気で親をなくした孤児院に寄付されている。ほかにも回収屋は古本、絵本、子供の玩具、日用品なども回収している。


(運営は国がしているから、潰れる心配もない)


 チェルが選んだ服を買って、次にシシの服、私の服、日用品を購入してマジックバックにしまい。私達は2人の目的のローレルのケーキ屋に向かった。そのケーキ屋までの道筋には"探し人"のイラストが何枚も貼られていた。


(最近になって数が増えてきたわ)


 その内容は。


《公爵令嬢アーシャ・シシリアを探しています。見かけましたら、ギルドまでお越しください》


 と書かれている。


 毎回、お父様に伝えて剥がしてもらっているのだけど。彼らはなかなか諦めず、どの街にも私を探す紙を貼っているみたい。チェルを肩車しながら歩く、シシはそれを見てため息をついた。


「アーシャに全然似ていないな」

「え?」


 シシがこう言うのもわかる。――今の私は離縁をして5年がたち30歳で、彼らが知っている水色の瞳と髪じゃない。チェルを産むときにシシの力が入り、白と薄水色のまだらな髪と薄水色の瞳へと変わっている。


 だから魔法を使わない限り、私がアーシャだと両親と家族以外は気が付かない。


 ――もし気付かれても、記憶消しの魔法を使うのだけどね。

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